神様のオルゴール

八月三十日。


午後八時、二十七分。


僕は、決意を固めて。



八月三十一日。


午後八時、三十二分。


私は、どうすればいいか、わからなくて。



そして、決着の日を迎える。


***


「……」


最悪のコンディションだった。


マトモに昨日は眠れず、ご飯は喉を通らなかった。


わたしは、それでも、覚悟を決めた。


わたしが幸せになるために。




午後九時。1-3の教室は開いていた。


多分、誰かが開けたのだろう。


中に入る。彼の席には、一枚の白い便箋が置かれていた。


それはあのラブレターと同じで。


──────そう、彼との出会いもこのラブレターだった。


そんなことを思いながら、便箋を開く。


力を使うためのスイッチは入れなかった。


「ふぅ……」


一呼吸して、手紙を開き、読み進める。



***


初めてあなたを見たとき、僕はとても驚いたのを覚えています。


告白に失敗して、惨めに、哀れに、玉砕した僕は、あの日、自殺してやろうと思っていました。


そんな時、目の前にあなたが現れました。


髪の毛はボサボサで、後ろは腰まで長くて、前髪は目元を覆い隠している。


そんなおかしな髪型をした、あなたです。


そして、手紙を読み取った時のあなたの反応は、流石にここでは書けないものがありました。


なので、ここでは割愛します。


そこから昼休みに会い、屋上で共に食事をしたり、会話をしたりするのは、僕にとってとても心地よい時間でした。


勉強会、遊園地、そして一緒に行けなかった夏祭り。


この夏の中で体験したその全てに、あなたがいました。



そしてあなたから、あの告白を聞いたとき、僕は純粋に幸せになって欲しいと心から願いました。


しかし同時に、自分の力不足を痛感させられたのです。


僕のような一介の高校生には、あなたを幸せにしてやる、なんて大仰なことは言えませんし、出来ません。


だから僕は、全て諦めました。


僕は、あなたとの日々を──────


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


絶叫した。腹の底から。床を転げ回って、机の脚に何度も激突して、服が汚れるのも構わずに。



いやだよ、助けて、誰か、助けて……


机に体をぶつけた拍子に、白い便箋が、落下した。


そこから出てきたのは、もう一枚の紙。


そこに書かれていたのは、








『屋上で待つ。全て終わらせよう』

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