読み取る。友達と勉強会。
鹿島と友達になり、一ヶ月が経過した。
別段会う回数が増えたということもなく、ただ昼食を共に取り、屋上で食べるときには何気ない会話をする。
お互いに、浅く、深くない関係。
期末テストを終えて、夏休みが近づいてきたある日。
事態は、少しずつ動き始めた。
***
「べ、勉強会?」
「おう。補習の後にちょっと残ってさ、勉強を教え合うって感じだ」
玉木がニヒヒと笑って提案する。
「それは、いいけど、さ……」
一つ気になることが……。
「あ? 雨宮ならいるぞ」
「もうちょい気を使えよ、バカか」
「ハハッ、安心しろよ。つーか、お前とアイツにはもう何もないだろ? フラれちまったんだから」
「そういうのに、気を使えと言ってるんだ」
溜め息を吐く。悪い奴じゃないんだが、いかんせん、デリカシーが無い。彼女がいない原因なのかもな。
そう思わずにはいられない。
「あ、そうだ。お前、あの鹿島と付き合ってんの?」
「……」
言った側からすぐこれだ。
「だーかーらー! 気を使えって言ってるだろ!」
ガクガクと肩を揺さぶりながら叫ぶ。
「あ、ヤバイ、意識、飛ぶ……」
数分後、そこには真っ白になってぐったりした玉木がいたとかなんとか。
***
「……そっか。大変だね」
「それほど仲良く見えるのかね、僕達って」
鹿島と昼休みの屋上で会話する。何気に二日ぶりだった。
「まぁ、気にしたら負けだよな。というわけで、鹿島」
「……?」
「キミも参加するんだ」
「え?」
鹿島の箸を持った手が止まる。エビフライがポトッと落ちた。そのまま、石像のように固まってしまった。
「あ、あれ? おーい、戻ってこい」
前髪を上げて、すかさずデコピン。
「なぁっ!?」
額を抑えながら、うずくまる。弁当は落とさないように僕が回収した。
「ひどい。こんなことするなんて…」
若干涙目になりながら僕を責める。あと弁当も奪って返して行った。
「大体、わたし、他のクラスの人間だし……」
「うん。でも他のクラスの友達を誘って良いって」
「なんでわたしなの? ……って、あっ」
鹿島は何か察したらしく、途中で言葉を切った。
「そういうこと。だから鹿島を誘ってる」
こちらの事情を完全に察したのか、少し考えて、
「あ、うん。……良いよ」
ニッコリ笑って、オーケーサインを出してくれた。
そして、夏休みが始まる。 僕と彼女の、初めて共に過ごす、夏休みが。
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