第9話

「結ちゃんにもしものときが起きた場合にすぐに対応が出来るように、

 お母さんの学校か私の通っている学校に居たほうがいいと思うのよ」

 お姉さんの一言で始まった家族会議が在らぬ方向へと向かいだした。


 家族会議が始まった最初のうちは、

『女性になったのは夜の出来事に間違いが無いんだから、

 夜に身体の異変に気が付かなかったのか?』というものであった。

 しかし僕は寝ていた。熟睡をしていたわけである。

 苦しい。痛い。という感覚があれば夜中に起きるはずだ。

 男性器が消え、女性器に変わったと言うだけでも、

 身体の変化というものは相当な負担になるはずだ。

 その変化に痛みが伴わなくてずっと寝ていたと言うのはありえない。

 ありえないことだが実際にそのようなことが現実に起こっている。


 そこでお母さんやお姉さんが僕の近くに居て、

 何か起きた場合にすぐに対応できるようにしようと言うことになった。

 お母さんが教職をしている私立城北女子第三高校か、

 お姉さんの通っている私立城北第一高校

 そのどちらかに編入学させるのが一番良いということになった。


 僕の通っている高校は県立城北第二高校だ。

 そして私立名門進学校のどちらかに編入学させようという。


 そこで話し合いの結果、

 男性に戻ったとき女子高に男子が居るのは、

 後々に大問題になる可能性があるから共学の高校が良いと言うことで

 お姉さんの通う私立城北第一高校が最も望ましいと言うことになった。


 僕は一つ疑問を呈したい。

 県立高校の学力で有名進学校の城北第一高校に行くと言う

 とても無茶振りとしか思えないほどの学力の差があると言うことは

 ここではひとまず横に置いておくとして、

 女子高校生として通う学校で、

 いきなり男子に戻ったことへの対応と言うが、

 実際に学校内で僕が男子の姿に戻ったと仮定しよう。

 女子の制服を着た男子高校生の姿がそこにあるのではないか?


 女子高に通おうが、共学の高校に通おうが、

 そのような姿になったときには、

 すでに僕は終わっているのではないか?

 僕はそう思うのである。


 男子の姿になったとき、女子高のほうが幾分問題の度合いが大きい。

 そうならないことが前提の話になるのは確実であるのだが。

 そうならないことが前提の話と言うのなら、

 僕は男に戻ってはいけないということだ。


「そこは女性の身体になっちゃったんだから仕方が無いんじゃない?」

 お姉さんの一言で解決されたように感じるのは気のせいだろうか。


「制服はとりあえず私のを着ていくことでいいとしようか」

 そこでサイズが合うのは間違いが無いのだけれど

 とりあえず着てみようということになった。


 お姉さんは部屋に第一高の制服を取りに行き、

 僕はまた下着姿にさせられてしまう。

 お母さんもなぜか嬉しそうだ。


 母よ。昨日の僕の食事に何かそういうものを入れたわけではないよな?

 性別が女の子になるような薬のようなものを……。

 実際にそのようなものはないのだが、なぜか疑いたくなってしまう。


 お姉さんが第一高の制服を持ってきて僕は着ることとなる。

 第一高校の制服は白シャツの上に紺のブレザーを着る。

 学年により黄色、赤色、青色のネクタイかリボンをする。

 入学のときにそのときの学年色が決まる。 

 スカートは全学年が同色チェック柄のスカートに統一されている。

 お姉さんは赤色の学年色で、僕は一つ下なので青色が学年色だ。

 スカートを履いてみたが問題が無く履けた。

 しかし上が……。白シャツを着ると胸のところがパツパツになる。


「おっかしいな。ゆうちゃんのバストって本当に78で合ってる?」

 お母さんが自分の白シャツを持ってきた。

 お母さんの白シャツなら綺麗に着ることが出来た。

 ブレザーも着たところでお母さんチェックが入る。


「由依、結ちゃんの横に立ってみてくれる?」

 同じように第一高の制服に着替えたお姉さんが僕の横に立った。

 背はお姉さんのほうがちょっとだけ高い。

 ウエストは同じくらい。ヒップは僕のほうがちょっと大きい。

 バストは……。

「これは全部購入するしかなさそうかな……。」


 編入学のときは制服が出来上がるまで、

 お姉さんのものを使うと言うことに決まった。

 そしてまた下着姿になり採寸が始まった。

 第一高校に編入学することは決定なのか?


 その日を境にお姉さんが部屋で運動を始めだした。

 なぜだ。お姉さんや、なにを思い始めたというのだ?



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