第17話、桜の過去(前編)
これはあなたたちに災いの子として捨てられた直後のこと、そう言って桜は語り始めたのである。
私、ここで死んじゃうのかな、その時の私はまさしく心の底からそう感じていた。生まれた時から誰も助けてくれず、馬鹿にされたこともあったけどなんとか生きてきたけどもう終わるのかな。
でも、こんなつらいなら死んでもいいかな。誰もこんな雪が積もっている中、助けてくれるはずもない。本当は誰でもいいから心から愛してほしかった。
私はとうとう雪の中で寝てしまったのである。これで終わるはずであった。だが、私は目を覚ましたのである。そこはどこかの小屋であったが先ほどとは違う場所で戸惑った。どうしてここにいるのであろうか誰が私を助けたのであろうかと考えていたら
「よかった、目が覚めたのね。もう、雪の中に埋もれそうになっていて驚いたわよ。かなり弱っていたし、ここは食事でもして元気づけて。」
そう言われて美しい女性は私に向かって食事を差し出してきたのである。それもかなりおいしそうな料理であったが毒が入っているのではないかと私は疑っていたらそれを気にしてくれたのか女性が
「大丈夫、特に変な物も入っていないわ。私も食べているし、それにこれは熱い方がおいしいわよ、シチューと言うものだけど食べてみて。すべて自家製だけど味には自信があるだ。」
私は恐る恐る、食べてみた、それは彼女の言う通りに大変おいしいものであった。もうすでにお腹が空いていたのでどんどん食べたのである。
そして私は知らないうちに泣き出しそうになっていた。こんなにやさしくしてもらったことがなく初めて心から信用できそうな人が出てきたので今までため込んでいた感情が溢れだしそうになっていた。
この人に甘えたいという気持ちが出てきたのである。そんな時にであった、まるで私の思っていることが分かっているかのように抱きしめてきた。
「ごめんね、私がもっとあなたのことを早く助けてあげればこんなにつらく苦しむことはなかったのに・・・ごめんね。」
私を助けてくれた彼女は私のために泣いてくれたのであった。それがきっかけで私も泣きだした。大声であったがそんなことも気にしないで泣いた。私はただうれしかった初めて自分のことを思ってくれる人がいてくれてそしてその人の優しさに。
私はそのまま、泣き続けて気がついてみれば寝てしまったのか朝日が昇っていた。私にはここまできれいな朝日は初めてかもしれないというほどきれいであった。
その場を後にして外に出てみると私を助けてくれた彼女がどこかに出かけていたのか戻ってきていたのである。私は彼女に声をかけたのであった。
「昨日は本当にありがとうございます。お礼はしたいのですが・・見ての通りに何もお返しすることが出来ません・・・どうか、許してください。」
「可愛い女の子がそんな風に悲しそうにしないで・・・子供はやっぱりそんな顔よりも笑顔の方が良いわ。それにお礼ならもうもらったし。」
私はそのようなことは死はずがないと思いながら彼女に訊ねてみたのである。そしたら彼女は笑顔にしながら
「お礼は・・・ありがとう、その言葉で十分だわ。それにこんなに可愛い子が笑顔にしているものですもの。それよりも自己紹介が遅れたわね、私は明智雅。変な名前でしょう、種族はこう見えて吸血鬼なの。」
吸血鬼、どこかで聞いたことがある種族だが自分は分からなかった。でもそんなことはどうでもいいこの吸血鬼、明智雅さんは私を優しくしてくれた。種族なんて関係ない。
明智雅さんはこれから朝ごはんの支度をするから少し待っていてねと言って朝食の準備を始めたのである。そしてその腕はかなりの物でどんどんいろいろと出来てあっという間に完成したのであった。
私は彼女に再びお礼を言いながら朝食を摂るのである。彼女が作った料理は本当においしくてどんどん食べていき気がついたらほとんどを食べてしまったのであった。食べすぎたことに謝罪をしようとしたら
「いいのよ、育ち盛りの子供なのだからこれぐらい食べないと、私はそんなに要らないから。その気になれば光合成とかもできるし、吸血鬼なのにね。(笑)」
彼女は楽しそうにそう言い返したのである。普通の吸血鬼は光合成と言うものはしないのかなと少しばかり疑問に思いながら聞いた。
「それよりもお風呂でも入りましょうか。近くに温泉でも見つけたの、ゆっくりしながらそこで話しましょう。」
私はこの彼女の言葉に従い付き従うことにしたが災いの子と言われる原因の紋章が見られてしまって嫌われてしまうのではないかと言う恐怖もありながら温泉と言うものの場所に到着した。
彼女は先に脱いで私も早く脱いで入りましょうと言われたので覚悟を決めて脱いだのであった。正直に怖かった、これを見られたらどんな風に言われるかそしてほかの者と同じように化け物扱いにされてしまうのではないかと思った。
しかし、彼女はこれを見て何とも言わなかったのである。私は勇気を持って聞いてみた。
「わ、私の体の紋章が気になりませんか。これはみんなから災いの紋章と・・。」
「私はそんなことは気にしないよ。第一、君が皆に災いとすることした。私は君をそんな風に見えないね。もし、災いや化け物と呼ばれるとしたら私と人の時期に付き合っていた古い親友ぐらいな物よ。」
彼女は本当に私のことを化け物扱いしていないでうれしかった。心の中で本当に安心した瞬間であった。そして私には女神に見える彼女はどうみても化け物に見えるはずもなかった。
しいて言えば彼女の古い親友は分からないがそれでも私には彼女が化け物には見えなかった。私はこのまま、一緒についてきてもいいですかと彼女に訊ねてみたのである。
彼女は笑顔で喜びながら了解をしてくれたのである。孤独であった私が初めて人生で心から許せる人ができた瞬間であった。
そうして私と吸血鬼、明智雅さんとの生活が始まったのである。
災いの少女
過去
災いの子と呼ばれている
吸血鬼に拾われた
拾ってくれた吸血鬼、明智雅と旅する。
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