😌🌸💓『自決する瞬間に限りなく近づく矢は決してそこには到達しない』 🌠🌠🌠

やましん(テンパー)

 『自決する瞬間に限りなく近づく矢は決してそこには到達しない』



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 昔、たしか『ゼノンのパラドックス』というのがありました。


 それは、高校の『倫理社会科』あたりの教科書に出ていたような気がします。


 『放たれた矢は、永遠に『的』には到達しない。』


 というのも、矢は常に、中間地点を通過しなければならず、どこまで行ってもその限りはないから、とか・・・


 やましんには、これを論破する頭脳は到底、持ち合わせがございませんが、まあ、的の真ん中に穴をあけて、『的』を中間地点にしてしまったらいいだろうに・・・とも、思いました。


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 で、実際のところは、もし、そこが、宇宙空間ならば、その空間はどんどん膨張しているらしいので、宇宙の意味がある限りは、余計な力が働かなければ、矢は永遠に飛び続けるでしょうから、結局ゼノンのパラドックスは、きっと正しいのでありましょう。


 で、思うに人生だって、同じことで、なにをするにつけ、次々に、その中間地点を通過する訳なので、永遠に、どこにも到着はしないのでは、ないのか?


 『死』に至るまでに、かならずたくさんの中間点を通るのだから、『死』は、決して来ないのだ。


 つまり、なにごとにも終わりは来ない、のでありまして、もしそれが正しいのならば、『自決』するにも、その意味をそこに見出すことは、もはや出来ないのではあるまいか、と言うわけなのであります。


 自決の瞬間までに、永遠の中間点を経過しなければ、ならないからです。


 結局『自決』には、まったく意味がないのだ、ということです。


 ただし、すべてのことに、結論はやってきませんけれど。


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 しかし、そうは言っても、過去、最後死ななかった人は(復活したかどうかは別として)おそらく、誰も確認されていません。


 やましんも、自分の祖父、両親、奥様の祖父、祖母、そうしてご両親を、見送りました。 


 そこで、ぼくは、これを確かめるべく、旅に出たのであります。



 **********   **********


        😌🌸💓   ✡️🌃✨   


 宮澤賢治先生の『銀河鉄道の夜』は、明らかに時間旅行をする汽車の旅です。


 それは、『一方向にしか走らず、実際どこまでも行く』わけですから、賢治様は明らかに相対性理論をも念頭に置いていたと考えるべきでしょう。


 ジョバンニさんは、おそらくは、科学と宗教と現実の一致を見るために、その事実を探索する実験の旅に、行ったのであります。


🚂🚂🚂         🌠


 ならば、この列車に実際に乗ってみるのが一番良い、と言う結論になりました。


 そこで、ぼくは、ある日、街はずれの高い丘の上に寝っ転がって、それからずっと、汽車が来るのを、ただ待ち続けました。


 それが、どのくらいの時間だったのかは、計測しては、いませんでした。


 夜が過ぎ、昼が過ぎ、また夜が過ぎ・・・・・夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎ、春が過ぎ、また夏が過ぎ・・・その繰り返しです。

           🌠


 ぼくは、少量の保存食と、お茶のペットボトルを二本と、お薬だけ、持っていました。


 *****  *****


 しかし、なかなか、汽車は来ませんでした。


 まあ、そう簡単に来るとは思っていなかったので、気にはしてませんでしたけれども。


 長い長い時間、ぼくは、ずっとそこで待ちました。


 

  **********   **********


 そうして、とある夕方、大きな夕日の中から、ついに、その列車は現れたのです。


「やと、来たかあ~~~やれやれ。」


 そう言いながら、ぼくは汽車に乗りました。


              🚂


 予想通り、そこには、ジョバンニ君や、カンパネルラ君たちがいました。


 かおるというらしい女の子も、その弟さんも、青年さんもいました。


 鳥取りさんもいます。


 ぼくは、『ここに、座っていいですか?』と、皆さんに聞きました。


『どうぞどうぞ。』


 そこでぼくは、四人掛け席の空いている場所をひとりで占領しました。

               🌠


『あなた、どのくらい待ちましたか?』


 その青年が、立って後ろ向きで、聞いてきました。


『いやあ、測ってないんです。時計は持っていたけども、持っていただけですからねぇ。いったい、実際は何年待ったやら。』


 すると、青年がこう、言いました。


『まあ、時間は測っても、年を経れば、確かに最終的には意味を持たないものですからね。』


『でも、出発時間が分からないと、普通は汽車には乗れません。』


 女の子が言いました。


『まあ、この汽車は、普通じゃないですから。ただ、待てばよいのです。それだけのことです。』


 青年が答えました。


 こんどは、鳥取りのおじさんが、言いました。


『そうですなあ、我々の仕事は、実際のところ、時間という制約はないが、このごろ地上は、そうも簡単には、ゆかないようですなあ。』


『ああ、確かに、ぼくもそう聞きましたが。でも、非常に長い間、ここに乗っていると、時間の制約からは、とっくに、解放されましたからね。』


『ぼく、もっとここに乗ってると、良いなあと思う。』


 男の子が、あのりんごをほうばりながら言いました。

          🍏🍎


『ええ、きっと、もう、降りることは、ないでしょう。』


『え? あなたがたは、天上で降りたのでは?』


 ぼくが、目をまん丸くしながら尋ねました。


『はい。これが二回目です。あの天上から、ぼくらは再び汽車に乗ったのです。最後の真実を見るためです。だから、この先は、最後の最後まで、もう降りるべき場所などは、ないのです。あなたは、この汽車は初めてですか?』


『ぼくは、試しに乗ったので、まだ、天上とかにも行っていません。』


『ああ、一回目の旅ですな。そりゃあいい。ならば、降りることが出来る。その気になればだが。』


 鳥取りのおじさんが、愉快そうに言いました。


『ぼくも、だから、これが二回目なんです。ついに、時が来て、決断したからです。』


 ジョバンニくんが、静かに、そう言いました。


『ぼくたちは、皆、実際二回目です。その辿ったコースは、異なったが、またここで、一緒になりました。もう、皆が、離れることは、決してありません。』


『では、やはり、ぼくは、ちゃんと実験しているんですね。』


             😌🌸💓


『そうです。そうです。しかし、実験は、失敗することもあるのですよ。中にはそのまま、宙ぶらりになって、それで永遠に終了する方もいます。ちゃんとうまく途中下車して、もう一度その人の現世に戻って、で、次に進む人もいる。けれども、二回目は、誰でも必ず永遠に続きます。そこには天上であれ、その先であれ、もう、終わりは、たいがい、ないのです。』


『宙ぶらりになったら、天上にも行けないのですか?』


『それは、考え方の問題です。天上を終了地点とするのか。それとも、さらに、その先の永遠を目指すのか。これはでも、善悪の問題ではありませんよ。ただ、あなたがもう、まずは、天上を、目指すのならば、このまま、乗っていて、降りるべき場所で降りるのです。でも、我々には、もうその場所はない。天上は、必ずしも、常に最後の目標ではないのです。そこは、目標にもなり、また、通過点にもなるのです。われわれにとっては、すでに過ぎ去ったのです。』


『また、同じ汽車に乗れるんですか?』


『はい、そうなのです。あなたの中間点、それは、いつも、あなたにしか降りられない場所なのです。また、その声は、あなたにしか聞こえないのです。しかし、あなたがもし、再び現実において、この実験を役立たせたいなら、そこではっきりと、降りるべきです。そのチャンスは、必ず一回来るのですから。きっと、すぐにね。』


『降りるかどうかは、それは、誰が決めるのですか?』


『もちろん、貴方だけです。この一回だけは、あなたが決めることが出来るのです。』


『ぼくは、一回目は、生きようと思ったんです。カンパネルラは、天上に行く道を一旦は選んだ。でも、またこうして一緒に旅をしている。こんどは、もう、限りがないんだ。こんどは、いつまでも一緒に行くんです。』


 ジョバンニ君が言いました。   🌠


『でもね、実は、ここでさえ、限りがあることが、最近になって、どうやら、わかってきたのですわ。たまたま乗り合わせた、学者さんがそうおっしゃいましたのよ。この汽車も、すべての宇宙も、ものすごく先には、おそらく、崩壊して消えるだろうって。でも、そこのことは、まだあと少し、謎です。その方も、すべてはまだご存じなかったのです。』


『いいかい、君が降りるには、正しいタイミング、というものがあるんだよ。外すと、うまく、降りられなくなったり、ちょうどいい時間が、違ったりするんだ。そこは、もう、こうなったら、運でしかない。きっと君の名前とかを誰かに呼ばれるから、そこで降りるんだよ。ぼくはブルカニロ博士に呼ばれた。でもね、降りてからの、ほんの少しの足取りが、ものすごく、大事なんだ。ぼくは、奇跡的にうまくいったらしいけど。』


 ジョバンニ君が、そう教えてくれましたが、どうもその意味は、あまりにも、はっきりはしませんでした。


『ううん。なんだか、むつかしいなあ。どういう意味なんだろうか。』


 ぼくは、つぶやきました。


 でも、あまり深くは、考えなかったのですが・・・・。


 ジョバンニ君は、なぜ、ひとりで丘の上に上ったのか。


 実のところ、ぼくは、その理由に、ぶつかっていたのです。


             🌠🌠


  **********   **********


『あなたはね、ジョバンニさんもね、それでもまだ、運が良かったのよ。すぐにみつけてくださる方が、ありえたのだから。わたくしたちには、選択の余地がほとんどなかったの。お船の上でしたから。』


 かおるさんが言いました。


『あれは、本当に我々一般乗客には、なかなか、選択の余地がなかったんですよ。事故と言うものは、大変に多くは、そうなのです。』


『・・・あなたは、実は、この世で知りたいことが、やりたいことが、まだ残っているのでしょう?』


 かおるさんが聞いてきました。


『まあ、そうです。実は。確かに・・・でも・・・・』


『なら、急ぐ必要はないわ。でも、帰るべきですわね。』


『もう、でもね、とっても、疲れたことは、事実なんです。もう、くたくたなんです。』


『ならば、思いっきり休んだらいいのですわ。焦ることはないです。あなたは、自分でも知らないうちに、たくさんの『的』を、こてまで破ってきたのです。最後には、必ず破れない『的』が来るけれど、それは、みなそうです。そのときには、あなたはそこから、ただ、落ちる。でも、たとえそうであっても、一応の努力のしがいは、常にあるものですわ。いずれは、再びここに来るのですもの。』


『そんなものかいな。』


『そうですわ。』


『あ、あそこ、誰かが集まってる。お墓かなあ。』


 男の子が言いました。


『ああ、なんと、あそこは、ぼくんとこのお墓です。あらら、母さんと父さんと、奥さんがお祈りしてる。あ、ぼくもいる。なんでだろう。』


『あなたが、亡くなったからです。』


 青年が言いました。

              🌸🌹


              

『両親は、とっくに亡くなっているのにな。それに、ぼくは、ここに、いるんだけどな。』


『これは、『時間の集合現象』です。この汽車からは、時に、過去と未来が集合して見えることがあるのです。それが結局は正しい事でもあり、そうでもないこともあります。』


 それは、確かに我が家の、あの小さな墓地だったのです。


『じゃあ、ぼくは、自決した訳なんでしょうか?』


『どこまでが過去で、どこからが未来なのかは、はっきりとは決まっていない状態で見えていますね。わりと珍しい現象ですな。つまり・・・』


 鳥取りのおじさんが、どこかが、非常に感銘深い、と言う感じで言いました。


『つまり、過去は変わらないが、未来はまだ変わるのです。だから、この集合の中から、あなたが、ふっと消えることもありうるのです。』


 汽車は、夕暮れの墓地の上を、大きくカーブしながら上昇しました。


 景色はすぐに真っ暗になり、やがてもとの、宇宙空間に戻ったのです。


            🕊️

  **********   **********


          🚃  🚃  🚃   


 『なんだか、あれは、すごく賑やかなお星さまだなあ。』


 ぼくが、感心して言いました。


 実際それは、お星さま全体が、クリスマスツリーのように、きれいに飾られていました。


 遠くに、この星の太陽が見えています。


 地球の太陽より、かなり赤くて、ものすごく大きいようです。


 こぶのような固まりが、その頭から、もわもわと、湧き出しています。


『なんか、文字らしきが、浮き上がってるなあ、なんて書いてるんだろうか?』


『ああ、ここは、最近、絶滅した惑星ですな。「ありがとう」と、書かれているのです。』


 鳥取りのおじさんが、解説しました。


『絶滅、ですか?』


『はい。そうです。この星の人たちは、あなたがたとは全く違うタイプの知的生物でしたが、まあ、昔は戦争ばかりしてたんですがね。でも、ここ2万年くらいは、とても仲良く暮らしていましたが、ほら、太陽も終わりが近いし、その生物としての寿命そのものが、すでに来ていたのです。それで、絶滅の少し前に、こうしてお祝いの飾りを作りました。戦争じゃなくて、平和の裡に終わるのだ!と、宣言したかったらしいですなあ。いやあ、実際、きれいだねぇ。』


『ええ、とっても、美しいですわ。』


『これは、太陽エネルギーでしょうか?』


 カンパネルラ君が聞きました。


『ああ、そうですな。きっとそうです。まあ、それでも、あの太陽も燃え尽きようとしているし、もうすぐに、一緒に消えますがね。それは、明日かもしれないし、まだ、千年くらい先かもしれないですがねぇ。そうは違いません。』


 鳥取りのおじさんが答えました。


『なんだか、嬉しいような、哀しいような気分だね。』


 ジョバンニ君が、少しだけ、しんみりと、言いました。


 

             👫


 **********   **********



 汽車は、おそらくは、相当な速度で、やがて銀河系をも、とっくに走り抜けていたのだと思います。


『ここの太陽系も、みな美しかったね。』


 青年が言いました。


『わたくしたちは、たくさんの太陽系を見てきたのですわ。』


『あなたがたの太陽系宇宙って、こことは違う、宇宙なんですか?』      ✨


 ぼくが尋ねました。


『宇宙はたぶん同じ宇宙ですがね・・・。でも、まあ、ここに居たら、どこの銀河何だかも、そこんところは、もうよくはわからない。それは、地上に生きていないと、その解釈も、できないのです。』


 青年が答えました。


 ぼくは、もう一度、尋ねました。


 実験の核心です。 


『あなた方とこうしてお話ができると言う事は、もしも自決とかしていても、まだ、その先があると言う事なんですね。』


『それも、実は、わかりません。ここは、さっきも見たように、さまざまな宇宙の時空が混ざり合っています。とてつもなく長い時間のようですが、実はほんの一瞬の、あなたの夢だったのかもしれないのです。あなたは、放たれた一本の矢なのです。ここでは、永遠に、その矢は飛ぶように見えています。しかし、地上でなら、必ず瞬間に落ちるのです。これは、でも、スケールの違いであって、実際に、矢は、必ずいつかどこかで消えます。この汽車もね。あなたが、存在していると言うことが、どれほど奇跡的で素晴らしい事かを、よく感じるべきなんですよ。ほかのすべての人たちについても、同じなんです。ここでは、あなたがまだ、現世で生きているのかどうかの判断は付かないのですから。いやあ、まあ、ぼくは、お説教する立場じゃないですが。ははは。』


 青年がそう言いました。


 その時でした。      🌠🌠


『ほら、やましんさん・・・起きなさい!』


 どこからか、声がしました。


『あれ、誰かが、ぼくを呼んだみたいな・・・いつも聞いていた声だな。』


『ああ、それこそ、あなたを呼ぶ声でしょう。』


 かおる子さんがいいました。


『やましんさん、ここで降りなさい。でないと、二度と降りられませんよ。』


 もう一度、聞こえました。


『誰の声だろうか?』


『あなたにしか、聞こえない声ですわ。』


『どうしますか?』


 青年に聞かれました。


 すると、汽車は、やがて小さな駅の、さみしいホームに、滑り込んだのです。


 なにかの看板がありました。


 駅名は『ここ』。


 『現世方面乗り換え駅』


 と、書いてあります。


『さあ、お行きなさいな。それしかないですわ。また、きっと会えますもの。』


 彼女が言いました。


 なんだか、不思議な事に、もう、とっても大人びて見えたのです。


 そこで、ぼくは決心し、それから、立ち上がりました。


 そうして、そこの、みんなに、『さようなら』を言いました。


            🌊

  **********   **********



 誰もいない、寂しい駅でした。   🚉


 汽車は、ぼくが降りると、すぐに走り始めたのです。


 汽車の中からは、ほんの少しの間だけですが、一緒に乗った人たちみんなが、明るく手を振ってくれていました。


『がんばって!』


 と、かおるさんのお口が、言いました。


 汽車が走り去ると、そこは真実の静寂に、覆われてしまいました。



 **********   **********

😌🌸💓


『乗り換え・・・現世方面 ⇒』


 と、書かれた、古びた青い看板が、階段の入口に、もう斜めになって、やっとこさ、張り付いていました。


 ぼくは、その階段を、踏み外さないように、ゆっくりと登りました。


 もう、ぼろぼろ、だったのですから。 


 実際、この、こ線橋は、古い木造で、普通ならありそうな看板類は、まったく張り付いてはいませんでした。あちこち、床が抜け落ちたところさえありました。


 見ているうちにも、どんどんと、古くなってゆくようでもあったのです。


 どすん!!


 床が足元で抜けたのです。


 ぼくは、転落しそうになりました。


 下を見れば、そこは、恐ろしいほどの、真っ暗な闇の中でした。


 もう、必死で、ぼくは、這い上がったのです。


 きっと、これが、結局のところ、良くなかったのです。


 

 *****     *****     *****



 ようやく橋の上には戻りましたが・・・・


 行き当たりの壁には、再び『乗り換え 現世方面 ⇒』という、さっきのよりも、一層古びた看板が、張りつけられていましたが、もう、じきに剥がれ落ちそうです。


 先ほど見た時は、そうではなかったように思ったのですが。


 この橋自体、ますます、どんどんと、急激に、古くなってゆくみたいなのです。

 

              🌉


 ぼくは、もう、踏み抜いたりしないように、注意深く歩き、階段を降りました。


 それから、ついに地上に帰ったのです。


 すると、そこは、なんと、あの丘の上だったのです。


              🌿


  **********   **********



 でも、実は、ぼくはまだ、お家には帰っていません。


 最初にここに来た日の夜に、ちゃんと、お家に帰ればよかったのですが・・・


 その丘は、いつの間にか、大きな大きな海に、まるまる、囲まれてしまっていました。


 そこから見えていたはずのぼくの街は、すっかり、消滅していました。


 さらに、振り返って見れば、駅のホームも、もう、すでに崩れ落ちて、消えて無くなっています。 


 飛ぶ鳥の姿も声もなく、ただ、不気味な波の音が、静かに、周囲から聞こえてきます。 


 ここは、いったい、現世なのでしょうか?


 あの声は、びーちゃん(ぼくの、奥様ですよ。)の声のようでもありましたが・・・。


 解説してくれるはずの、あの博士も、どうやら、ここには、いません。


 ぼくは、あきらめて、そこで座り込みました。


 それから、持っていたカバンの中の、ほんの少しだけ残っていた保存食を全部かじり、お茶をすべて飲みました。


 そうして、また、丘の上で横になりました。


 きっと、ここにずっといたら、あの汽車は、また来るに違いない、と、そう思ったのです。


 二度めの汽車ですから。


 ぼくは、後悔していました。


 あの時間の先を、実験で、放棄してしまったのですから。

 

 そのまま、ぼくは、再び、永遠の時間の中を、ただただ、あの汽車を待ったのです。



 ********   ********



 それから、何百年、何千年、何万年、経ったのか。


 ぼくには、わかりません。


 体はもう、とっくに、ばらばらになっていました。

 

    😌🌸💓


 でも、大きな夕焼けの中で、ぼくは、ついにあの汽笛の音を、確かに聞きました。


 本当の事を言えば、実は、ぼくの矢は、最初に汽車に乗る前に、ここで落ちていたのです。

 



                        😌🌸   おしまい 😌🌸💓





  ************   ************



【後書き】


 『おぎょわー。お風呂、溢れてる。うあー、ラーメンのびちゃった。うあ~、しまた、録画予約するの忘れた。うあー、もう、終わるじゃんか。ああもう、だめだあ!! 人生陥落だあ、没落だあ、惨敗だあ、産廃状態だあ。あ、買い物もしてない。冷蔵庫、まったく、からだ。うぎゃ! お寺さんに、電話してない。奥様、来ない。・・・・・やぱ、現世は、なんだか、辛いなあ。でも、あとの後悔、先にたたず。こぼれたミルクは返らない。こんな、ただのどたばた生活でも、やりがいはあるんだなあ。でも、も、明日にしよう。きっと、まだ、いいことが、あるかもしれませんよ。過激な実験はやめて、適量のお薬のんで、なんとか寝ようね。ちょと、怖くて、さみしいけれども。』


 

    ☆彡☆彡     🚃。。。。。。。。。。。。。。。。





 

 



 


 


 

 

 






















 





















 

































 
















 






 


 










  





 

 





 


 



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