第14話 地竜そして魔法

「リリーちゃん すぐ戻るわよ」

「はいっ」

対地竜向けに装備を変更するために小走りで村に帰る。


「リーダー!」

「おう嬢ちゃん」

「どうなってますか?」

ミーナさんが対地竜装備に着替えている間にリーダーに状況を尋ねる。

「ああ 合図が上がった場所は昨日の尾の跡の近くだ  二回目の合図から考えるとこの村の方に移動してる感じだ」

「そうですか 方向はほぼ真北ですね」

「北側は畑がかなり広がっているからこれに入られたくないところだ」

話していると三回目の合図のファイアーボールが上がる。かなり森と畑の境目に近い。

「っまずいな 思ったより速い」

「リーダー 先に行って食い止めて来ます」

「あちょっ  わかった 頼むぞ」

「はいっ」

リーダーと別れると北の門を越えて全力で走る。足で蹴った地面が抉れるのも構わずに突っ走る。世界陸上に出ていれば記録が間違いなく更新されるほどの走りで三分もしないうちに森に踏み入るとすぐに何かが近づいて来るのが見える。

「あれが地竜か……」

高さは大人のそれの二倍ほどはあるだろう。胴体から真横に突き出てその後真下に折れる四肢はそこだけみればワニのそれと似ている。背中はゴツゴツとした骨で覆われまるで岩を背に乗せているようだ。頭は横に大きく上に向かってあまり長くはない角が生えている。前に突き出ている大きな口から見える歯は地竜が植物食であろうことを窺わせる。

その象五頭分はあるだろう巨体が百メートルほど先からのっしのっしと歩いてくる。ゆっくりに見えるがなにしろ一歩が大きいのでかなりの速さだ。

「アイスエッジ!」

小手調べの魔法を放つ。いつもより少し大きめの氷は首を下げた地竜の角に弾かれる。

「ウィンドカッター!」

今度は高速の風の刃を飛ばす。見えにくくおまけに速度も速いこれなら角では受けれないだろう。

しかしその期待通り地竜の首に当たるも弾かれる。

「やっぱり硬いけどこれならどう?    ファイアーボール改!」

赤い炎の球が地竜目指して一直線に飛ぶ。

よしっ 当たる!

そう思った瞬間 地竜のすぐ手前の地面が壁のように盛り上がりファイアーボールはそれにぶつかる。 

ズガァァーーン

当たった瞬間爆発し壁は木っ端微塵に吹きとはされたが地竜自体は破片を浴びた程度でほとんどダメージを受けた気配はないが警戒したのか足は止まった。それにしても

「今のは……魔法? 魔物が?」

「地竜は土魔法を使う。幸い遠距離攻撃はしてこないが守りに威力を発揮するから厄介だ

な」

後ろから声をかけてきたのは

「ヨーゼフさん! 地竜を見つけたのはヨーゼフさんだったんてすね」

魔物に詳しいヨーゼフさんなら地竜のこともよく知っているかもしれない。

「ああ 地竜は一度歩き出すとなかなか歩みを止めない。だが逆に一度止まるとあまり動かなくなる。少なくともリーダーたちが来るまでは待つだろう。リリーはお手柄だな」

「ありがとうございます」

「よし レイン ファイアーボールを上げろ」

「了解」

レインさんがファイアーボールを上げている間に地竜を見張りつつヨーゼフさんに尋ねる。

「魔物も魔法って使えるんですか?」

「いや普通の魔物は使えない使えるのはゴブリンやオークといった人型魔物の上位種と竜だけだ  というか魔法が使える人型で無いものをまとめて竜ってよんでるな」

「なるほど じゃあギルドの飛竜も…」

「飛竜は飛ぶために風魔法を使っているから竜と分類されている 竜だからといって強いとは限らないがギルドの飛竜はいい例だ」

「なるほど…っと  

 ファイアーボール改!」 

再び動きだそうとした地竜に牽制のファイアーボールを放つ。やはり土魔法で防がれる。

「アイスランス!」

ファイアーボールが爆発したその時にさらに氷の槍を打ち込む。土魔法で防ぎにくい背中を狙う。

ガキィィイ

「よしっ  てあれ?」

地竜の背中に突き刺さるも痛がる様子もない。

「地竜の背中は土魔法で作られた殻だ。傷つけてもダメージはない」

「土魔法をそこにも使うんですか なかなか手強い相手ですね」

そうヨーゼフさんと話していると

「おーい 待たせたな よく足止めしてくれた  状況はどうだ?」

リーダーたちが来た。足止めは間に合ったようだ。

「リリーのファイアーボールを警戒して動きが止まっているところだ 一通り見たが特に怪我をしているところは見当たらない  

左右から投げ槍で迫るしかないだろう」

「よしっ  ニック 右に回り込め! 

「了解  行くぞ」

ニックさんとリックを含む十人ほどが槍を数本抱えて右に動き出す。

「ヨーゼフは正面からの魔法を指揮!地竜の気を散らせ」

「了解した  リリーも頼むぞ」

「はいっ」

事前の作戦通り私とヨーゼフさんを含め五人が魔法担当だ。正面からの魔法で投げ槍隊から注意を反らすのが目的だ。

「ミーナ ヴォルフ 目を狙え」

「はいっ」「了解」

この二人は正面から接近して弓や投げナイフで目を狙いやはり投げ槍隊から気を反らし可能なら視覚を奪う役割だ。いつも酔っているイメージしかないヴォルフさんもどことなく緊張感が漂っている。

「残りは俺と左だ!」

リーダーたちは左から地竜に回り込む。


「こっちは魔法での妨害が任務だ   

リリーさっきのはまだ射てるか?」

「はいっ  まだまだいけます」

「よしっ  ならリリーのファイアーボールの直後に水系統の魔法を背中に当てるぞ  リリーは可能なら氷魔法を射て」

「「「了解」」」


「ファイアーボール改!」

三度目ともなると地竜も慣れたもので放った直後に土魔法を発動させ壁を作る。

「ウォーターボール!」

「ウォーターアロー!」

「ウォーターボール!」

「ウォーターボール!」

ドゴォォオン

ヨーゼフさんたちが水魔法を発動させると同時にファイアーボールが壁を吹き飛ばす。

「アイスボール!」

私も蛇と戦った時に使った冷気の塊を打ち出す。

バチャァァッ ビチャァァアッ

「よしっ」

水魔法は見事に背中に命中するが続く冷気の球は角で受け止められ

バキバキバキッ

その角を急速に凍らせる。

ヒュン バキッ

そこに飛んできたミーナさんの投げナイフとヴォルフさんの矢が当たり

ボキッ バキッ 

地竜の角は耐えきれず粉々になった。

グオォォォォオーー

痛みで地竜が吠える。


「今だ!放てっ」

「こっちもぶちこんでやれっ」

左右から同時に槍が飛んでくる。地竜は長い尾で左から飛んできた槍を叩き落とし右からのものは壁を作って止めようとするも完全には止められず軟らかい腹に突き刺さる。

「ウォーターボール!」

「ウォーターアロー!」

「ウォーターボール!」

「ウォーターボール!」

「アイスランス!」

槍に気を取られている地竜を今度は魔法で攻撃する。ヨーゼフさんたちの水魔法はまたも背中に命中する。私のアイスランスは地竜の作った壁に当たるも壁は薄く少し勢いが落ちるも地竜の肩に浅く刺さった。

ギャアオォォォオー

地竜は危険を感じたのか逃げようと方向転換する。

「逃がすな! 射てっ」

「構えっ 放てっ!」

方向転換中の無防備な背中に槍が降り注ぐ。

弾かれるっと思ったが

トスっ ドスッドスッ

固いはずの背中になぜか深々と突き刺さる。

私が不思議そうな顔をしているのに気づいたのかヨーゼフさんが解説してくれる。

「地竜の背中は土魔法で作られているがこれは水魔法に弱い だから先に水魔法を当てておけば投げ槍で重症を負わせることができるわけだ  よしっ  こっちも追撃だ!」

「はいっ」

よーし 思いっきりいくぞー!

「ファイアーボール改ィィ!」

全力で力を込めたファイアーボールは槍を振り払おうとした地竜の右の前足に当たって大爆発した。

ドゴォォーーーオン

力を込めただけあっていつものより数倍大きい爆発が起こり舞い上がった土の破片で視界が塞がれる。

「ウォーターボール!」

「ウォーターアロー!」

ヨーゼフさんの魔法で土ぼこりが収まると現れたのは足とその周りが抉れるように無くなった地竜だった。

そのまま地竜の体から力が抜け崩れ落ち

ズズーン 

そのままピクリとも動かなくなった。

「おらよっ」

リーダーが投げた槍が地竜に突き刺さるもやはりなんの反応もない。

死んでいる。その事が分かった途端歓声が響き渡った。

「最後のあれなんだ?すげぇ魔法だな嬢ちゃん」

リーダーが話しかけてくるが何だか体が重い。

「あふぇ にゃんだか」

「おいっ どうした?  大丈夫か?」

慌てて私の体を支えるリーダーが見えたのを最後に私の意識は途絶えた。




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人外転生 転生したらドラゴンになってしまったようです スース・S・ドメスティクス @Nemurerubuta

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