第4話  街そして交流

登録は案外簡単に終わり後日カードが渡されるそうだ。特にランクというシステムはないらしくどちらかというとクランに所属しているかどうかのほうが大事なようだ。


魔石を換金してからリーダーに案内されて街を歩く。

「あっちにまっすぐ行くと広場に出てそこから奥には貴族街がある。この通りをずっと行くと市場に出る」

そうこうしているうちにリーダーがある建物の前で足を止める。

「ここがうちのホームだ」

そこにはレンガで出来た三階建ての建物がボンとたっていた。

「一階が食堂兼集会所 飯食ったり連絡したりするのはここだな。二階は男三階が女の個室がある。おい マリナ 部屋に案内してやれ」

「はーい リリーちゃんこっちよ」

マリナさんに案内されて三階にあがる。

「ここよ ここ でそのとなりのこの部屋が私の部屋」

部屋に入ると八畳ほどの広さにベッドと小さい机がおいてあるだけで広々している。

「取り敢えず鎧を脱ごう」


マリナさんに手伝ってもらい鎧を脱ぎ動きやすいワンピースに着替えて下に降りる。


一階に行くとすでにメンバーは揃っているようだ。


「よし主役も来たようだし料理を持ってこい」

そういうと奥の厨房から次々に焼いた肉に大量の豆のスープ 豪快ないも料理に樽で酒が運び込まれた。

「おっそうだな ドーラちょっと来てくれ」

「はいはい いまいくよ」

厨房から出てきたのは小太りの中年のおばさんで宿屋のおかみさんのような雰囲気をもっている。

「リリー こっちがうちの食事や事務全般をまとめているドーラだ」

「リリーといいます お世話になります」

「まぁまぁ 話は聞いたわよ 強い上にこんなにかわいいなんて」


「よーしじゃあみんなエールは持ったか?」

あれっそういやこの体アルコール効かないって言ってた気がするぞ まあいいか

近くのコップを持って掲げる

「じゃあ 竜の巣の新しい仲間リリーに乾杯!」

「「「乾杯!!!」」」

エールをグビッと飲み干す。

「おう いい飲みっぷりだな」

こい顎ヒゲのベテランといった感じの弓を使っていた「ヴォルフさんですよね」

「おう よく覚えてたな 早速だが新人歓迎会飲み比べ大会をやるんだが勿論参加するよな」

なんだろう別に酔ったところを見て笑おうとか言う悪意は感じられない、純粋に酒を好むものの目だ。 

「わかりました 私も参加します」

「オーイ リリーも参加するってよ」

「よーし 酒持ってこい」

「リリーちゃん無理しないほうがいいよ」

「大丈夫です」

新歓コンパみたいなのりでいくか

ワインの樽を持ち上げると

「リリーいきます」

ゴクリッ ゴクリッ ゴクリッ

美味しい コクのあるブドウジュースって感じだな

ゴクリッ 

「ふーっ 次っ」

「おいおい大丈夫かよ」

ゴクリッ ゴクリッ ゴクリッ

どうやら胃袋もドラゴン級のようで底無しだ。

「わかった もう俺の負けだから」

何か言っているようだが気にせず

「ふーっ 次っ ってあれ」

気がついたらリーダー以外の男性陣がみんな倒れていた。ちなみに女性陣は机で作った仕切りのむこうでおしゃべりに夢中だ。

「おう 嬢ちゃんさすがだな」

飲み比べに参加してなかった唯一の男のリーダーが言う

「ヤバそうだったら止めようと思ったんだが必要なかったようだな」

「はい」

そうだ この機会にいろいろ聞いとくか

「リーダー 明日からってどういう感じですか?」

「ああ 説明してなかったな  うちでは週一くらいのペースで全員で狩にいくがそれ以外の日は自由だ。ただし街のそとに出るときはあそこの掲示板に書いといてくれ」

「あれですね」

「ああ  税金とか食費とかは週一の狩で賄ってるって感じだな  普通の日は数人で小規模な討伐をしたり買い物したり鍛えたり 武器や鎧の整備をしたりってのが多いな」

「なるほど」

「まあ お前は多分明日は女性陣に買い物に付き合わされるぞ。さっきからあいつらお前にどんな格好をさせるかに熱中してるからな」 

「まあ 頑張ります」

「はははっ あっそうだ 嬢ちゃんに言うのもなんだが街の東側の門のあたりは近づかないほうがいい」

「わかりました」

「おっ もうこんな時間だ 今日は疲れただろう 早めに寝た方がいい」

「そうですね じゃあ お休みなさい」

階段をあがって三階の自室にこもる。正直この体はほとんど睡眠を必要としないので本でも読もう。


通貨について

現在では銀貨が基本となっており銀貨の五倍の大きさの大銀貨とともに報酬や契約のときに使われやすい。またなにも言わずに一枚と言ったときは基本的に銀貨を指す。銅貨は銀貨の十分の一の価値で銀貨の補助として使われている。金貨は銀貨の50~80倍ほどの価値で金貨は貴族や大商会同士でやり取りされる。

「ふーん」

そういや出発のときにもらった袋に入ってたっけ。

圧縮袋から硬貨の袋を取り出す。

ズシンッ

開けてみると

「うわぁ」

袋の中は半分が金貨もう半分が大銀貨だった。こんなの持ってたら怪しまれるだろう。

なにも言わずに再び袋の中に仕舞った。

服のほうを見るとやたら手触りのいいワンピースやドレスが出てきた。こっちもか 

この様子だと他のも同じようなものだろう。

さすがに今日は疲れた。睡眠は娯楽のようなもので取れない訳ではない。

「おやすみ💤」









プニ プニ

「リリーちゃん 朝ですよー」

「あれっ マリナさん?」

「おっ 起きた? もうご飯出来てるよ」

「ふぁっ すみません すぐ起きます」

どうやらあのあとぐっすり寝込んでしまったらしい。

慌てて起きて階段を一段飛ばしで降りて一階に着くと

「あれ?」

「おう 嬢ちゃん起きたか」

「おはようございます リーダー これは?」

部屋のすみに男たちが転がされている。

「ああ 昨日の酒が抜けてないやつらだ」

あー 二日酔いか  


「リリーちゃん お酒強いんだってね いっつも酒豪だなんだ言っていたやつらがあのざまよ スッキリしたわ」

「おはようございます  ミーナさん」

「鎧もよかったけどワンピース姿はもっとかわいいわね  今日は私たち買い物に行くんだけど一緒に行ってくれるわよね」

うっ 顔が近い ってか怖い

「もっ もちろんです」

そういうことで街の案内がてら買い物に行くことになった。




「リリーちゃん こっちも試してみて」

「はい こうですか」

「きゃー  かわいいわね」

「ほんと さすがリリーちゃん」

「次これはどう?」

「いいわね」

「それにはこの髪型が」

「いや やっぱりこっちよ」

お姉さま方に髪をいじられ続けてはや二時間さすがに疲れてきた。それに髪型がマリー・アントワネットみたいにならないかも心配だ。

「あのー 髪はもうこのままで」

「なに言ってるのリリーちゃん こんなキレイな髪このままじゃもったいないわ」

「そうよ 女の子が髪を飾るのは義務よ義務」

そんな感じで午前中いっぱいかかって今の私は全体を少し短くしてツインテールに結び根本にピンクのリボンといった幼さの強調された格好になっている。

「昼は広場の屋台にしましょ」

「屋台ですか?」

「そうよ あっちの広場には串焼きとかスープとかのが昼になるとでるのよ」

「へー 楽しみです」





「熱いけど美味しい」

ミーナさんに言われて串焼きを五本買おうとしたら何故かサービスでもう五本もくれた。いい人だったなまた来よう。

「うん さすがはリリーちゃん」

「ツインテールも破壊力抜群ね」



串焼きを無事食べ終わり広場から南へと足を向ける。

「リリーちゃん ここがうちが懇意にしてる武器屋のクロンキストさんよ」

「おう 竜んとこの嬢ちゃんたちか おっそこの別嬪さんは新入りか?俺はクロンキストっつうもんだ。ここで武器を売ってんじゃなくて手入れだな。研ぎや修理がメインでやってるよろしくな」

別嬪だなんて照れるなあ

「リリーです よろしくお願いします」

「おうっ それで今日は手入れか?」

「はいっ これとこれと リリーちゃんは?」

「あっ そういえば」

もらってから一度も手入れしてないな

せいぜいが血を拭う程度だ

腰から剣をはずして抜いてみる。特に欠けたりとかいうことは無さそうだ。

「うわぁー リリーちゃんの剣 やっぱりキレイね  ほらよく見るとうっすら虹がかかってるみたいに見えるわ」

「ホント すごい」


「そそそっその剣 嬢ちゃん  ちょっと見せてくれ」

「いいですよ」

クロンキストさんに剣を渡す

「嬢ちゃん  これどこで手に入れたか教えてくれ」

「はい 母さんから貰いました」

「そっそうか  嬢ちゃん絶対無くすなよ この剣はおそらくだが伝説の鉱石、白虹鉱で作られてる  俺も聞いただけで見たことはないが間違いねえ」

「白虹鉱?」

「なんだ知らんのか白虹鉱っていうのは桃銀鉱と並んで最高の鉱石でな あらゆるものより固く魔法もうけつけないから剣や鎧にしたら最強だがその加工は同じ白虹鉱や桃銀鉱でしか出来ないからこの二鉱石は全ての鍛冶の憧れってやつだな 三百年前に山の頂上なんかに二鉱石同時にあるのが見つかったってのが一番最近の記録だからまさに伝説だな」

「へー 大事にします」

「おう 手入れはほぼ要らんと思うが一応どきどき見せてくれ」

「はい」

「よし そろそろ始めるかな」

そう言うとクロンキストさんは剣を検査しては研ぎということを繰り返す。



剣の手入れが終わったときには日もだいぶ傾いていた。

「じゃあ また」

「おう いつでもこい」





「あれ? そういえばお金払ってませんよね」

ホームに帰る途中に気が付く

「ああ 言ってなかったわね  クロンキストさんとことは一年いくらでクランが契約してるのよ  毎回払うのも面倒くさいしケチって装備不良を起こしてもしょうがないしね」 

「なるほど」

「そうだ リリーちゃん 明日は一緒に討伐に行かない?」

「行きたいです」

「あっ ミーナ抜け駆けね私も行きたいのに」

「おねえちゃんはどうせギルドで治癒係受けてるんでしょ」

「そうだった ミーナ 謀ったわね」

今までは偶然あったのを倒しただけだからある意味初討伐のようなものか


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