第3話  接触そして街へ

リーダーらしき男が近づいてくる。短く切った茶色い髪と40を少し過ぎたと顔が落ち着きを感じさせる。動きやすそうな革の鎧に手には槍、腰には飾り気のない実用的な剣が下げてある。こっちを不思議そうな目で見てくる。

「嬢ちゃん 何者だ?」

えーと 竜人とか言う設定だっけ

「リリーと言います。隠れ里に住んであたんですが外の世界を見てくるようにと言われまして  あっ あと強いのは竜人だからだそうです」

「へっ へー  」


「おいニック竜人ってあんなに強かったか?」

「分からないがそれ以外に説明出来ない ここは信じるしかないだろう」



何やらこそこそ話してるけどなんか変なこと言ったかな?


「それで嬢ちゃん ギルドには登録してるか?」

「ギルドですか?」

もしや冒険者ギルドってやつか おー異世界っぽ

「その感じだと知らないようだな。ギルドってのは魔物を狩る冒険者の元締めみたいなものだ。そこで魔物の情報や討伐の依頼を受けるんだが。」

「へえー」

まさにファンタジーのギルドだ。

「それでその依頼を受けてゴブリンを倒しにきたらこれと言うわけだ。」

「あれっ 獲物を横取りしちゃったってことですか?」

「あっ いやそれは問題ない どのみち俺達だけの力じゃ無理だっただろうしな  それで提案なんだがどうせ街に行くなら俺らのクラン竜の巣に入らないか?」

「クラン?」

「ああ 悪ぃ 説明が足りなかったな  冒険者はだいたいソロか数人のパーティーではじめて実力が認められるとクランから勧誘される。でクランの利点だがソロよりも大物を狩れるし役割分担をすることで効率的に稼げるってことだな あとはまあ信用があるから街の出入が楽だったりするぞ」

よく考えたらこのまま街に行っても入れるかどうかはあやしい っていうかもし私が門番なら重武装したあやしいやつなど通さないだろう。それに竜の巣って何だか運命を感じずにはいられない

「わかりました その提案受けます」

「おお 入ってくれるか 俺がリーダーのケインだ よろしく」

「リリーです よろしくお願いします リーダーって呼べば?」

「ああ それで頼むぜ  ようし みんな聞いたな 今日からリリーは俺達の仲間だ」

「おー よろしく頼むぜ 俺はニックという」

「リリーちゃん 私はミーナよ よろしくね」


次々とクランのメンバーと挨拶をかわして魔石の切り出し作業を行う。幸い冒険者同士互いの詮索はあまりしないというマナーがあるらしく隠れ里についてほとんど聞かれなかった。何人かは握手をすると顔を伏せてすぐに作業にもどってしまった。顔の血は落としたと思うんだけど何かついていたのか?

「リリーちゃん 何もついてないからその首をかしげるのは止めなさい」

「はーい」

何故かミーナさんに止められてしまった。




切り出しが終わって山を下る。ミーナさんが先導してくれるので非常に楽だった。



小一時間も歩くと麓の村に着く。

「お帰りなさいリーダー どうでしたってその子は?」

村に着くと軽装をした女の人が飛び出してきた。肩まである艶のある金髪をしていてかなりの美人だ。

「うわー かわいい」

といいながら抱きつかれる。っていうか立派なお胸が

「モゴモゴ」

「マリナ 止めてやれ嬢ちゃんの息が苦しそうだ  今日からクランに加わったリリーだ」

「ぷはー」 苦しがったが男だった部分が喜んでる気がする

「リリーちゃんって言うのね あっ もしかして山で迷ってるとこを拾って育てるってこと? じゃあ私と同じ治癒士にならない?あれっ でもその鎧と剣ってことは前衛?」

「リリー こいつがこのクランの治癒士をやっているマリナだ。ポーションや弱い光魔法じゃ効かないときの為にここで待機してもらっていた。」

「マリナさん よろしくお願いします」

「あっ それからマリナ 俺達が討伐しようと偵察したら情報の何倍もいてこりゃ無理だってとこに一人で飛び込んで群れをほぼぶっ潰したのがこの嬢ちゃんだぜ。実力は正直計り知れないぜ」

そこまで言われると照れるなあ

「えっ リリーちゃんが! それにもう群れの討伐は終わったの?」

「ああ 嬢ちゃんがゴブリンキングの首をスパッとはねて終わりだ」

「ホント!! リリーちゃん強いのね ますます好きになっちゃったわ  部屋は私の隣が空いてるからそこでいいわね」

「はっはい」

「ちょっと待った お姉ちゃん 抜け駆けは許さないわよ」

「ミーナ これはもう決まったことよ あきらめなさい」

「くっ じゃあ見張り番は私とでいい? リリーちゃん」

「わかりました」

なんかなしくずしに色々決まったようだがまあいいか。ってかマリナさんとミーナさん姉妹だったのか。確かに言われてみれば顔立ちがにている気がする。ミーナさんが茶色の髪を短くしているので大分印象が違って気づかなかった。


「よーし 積み込め」

ゴブリンのボス キングとか言う名前だったそうだ  や上位種何体かの首とゴブリンの持っていた錆びた剣や盾を馬車に積み込む。この馬車はクランで持っていて戦利品や物資の輸送に使うそうだ。

「首は分かるんですが剣とか盾って要りますか?」

「いやっ 俺達が使うんじゃなくて屑鉄として売るんだ。それに置いておくとまたゴブリンに使われるかもしれないしな」

「なるほど」

カサカサッ  んっこの音は

この体に馴れたことで聴力もだいぶ鋭くなっている

ガサッ

「アイスエッジ」

道の横の森から飛び出してきた猪に魔法を放つ  氷が猪の前足を切り飛ばしつんのめったところをニックさんがすかさず首もとに剣を突き立て止めをさす。

「嬢ちゃん 今のは やっぱり氷魔法 それも無詠唱か」

「はっ はい 氷は得意です」

「まだその年でこの早さか末恐ろしいな よーしちょうどいい 折角だから解体して焼くか」

「よしゃぁあ」

「干し肉のスープとは比べ物になんないぜ」

「フランツとレインは火を起こせ ニックは解体  ミーナ 鉄板を降ろしてくれ 二三人水汲みに行ってこい」

「了解」

「リーダー 何かすることは有りますか?」

「うーん そうだな 荷台が空いてるから薪を取ってきてくれ 街についたら売ろう」

「わかりました」


「これでいいかな」

道の横に生えている木ちょうどよさそうだ。

チャキッ 剣を抜いて

「ふんっ」

少し斜めに振り抜き力任せに切り裂く。斜めの切り口のお陰で道のむこう側に倒れる。

枝を飛ばして使えるところは剣で長さを揃えて紐で縛る。幹の部分も同じ長さになるように切ってから細く割る。

取り敢えずこれだけあれば十分だろう。

束を肩に背負って馬車に積み込む。とリーダーから声がかかった。

「なあ 嬢ちゃん 剣で切るのは感心するが俺が思ってたのは落ちてる枝なんかを拾う薪拾いってやつなんだが  いや いい 何だか俺の常識のほうが壊れそうだ」

「あっ」

確かに薪になりそうな枝が地面に沢山落ちている。思わずぶわっと顔が赤くなる。



猪の肉の鉄板焼きは美味しかった。何十キロもある猪も三十人の前ではあっという間になくなった。



「ようし 出発!!」

リーダーの掛け声で再び動き始める。

しばらく行くと遠くに街の城壁が見えてきた。


五メートルほどの城壁は近くで見ると想像以上の迫力だ。母さんの城は宮殿という感じで城壁はなかったから城壁を見るのははじめてだ。

「次っ」

「クラン竜の巣だ」

「通ってよし 次っ」

リーダーの言葉通りあっさりと門を通される。壁の内側に入ると

「うわぁー」

馬車が行き交う石畳の大通り、大声で客を呼び込む店主、手押し車で果物を運んで親の手伝いをする子供、レンガで出来た建物から酒の樽の絵が描いてある看板が出てそこが酒場であることを示している。


「リリーちゃん体が固まって目だけがキョロキョロしてますね」

「隠れ里って言ってたからこういうのが珍しいんだろ  おい嬢ちゃん そろそろいくぞ」

「あっスミマセン」

リーダーの声でようやく今の状況に気づく。

たぶんおのぼりさんだと思われちゃった

「はじめてならしょうがない  取り敢えずギルドにいくぞ」




冒険者ギルドは大通り沿いの門からすぐのところにあった。石造りのなかなか立派な建物だ。


「嬢ちゃんは着いてきてくれ  それからニックとフランツとレインはゴブリンの首を先に倉庫に運んでくれ  あとのやつは帰って嬢ちゃんの歓迎会の準備だ  ドーラにもそう伝えてくれ」

「「「了解です」」」


ギルドの中はいくつかの受付のカウンター 情報の張られたボードがあり冒険者の姿は昼下がりということもありまばらだった。

カウンターに向かうと茶髪のこれぞ街娘っていう感じの受付嬢がこちらに気づいた

「あれっ ケインさんどうしたんですか?確かゴブリンの群れの討伐で帰りは明日になるって」

「どうもこうもない ゴブリンの数だが1000を越えていた そのうえキングも確認している」

「そっ それは すぐに数クランの合同を」

「いや必要ない」

「えっ どういう」

「もう討伐済みだ」

「いやいや 1000匹もいたんですよね」

「いや 撤退して応援を呼ぼうとしたらこの嬢ちゃんがいきなり突っ込んできてあっさりキングを倒して群れが崩壊してな 残りをうちで討伐したって感じだ」

「この娘がゴブリンの群れを? ケインさんってそういう冗談は言わない人だと思ってました」

受付嬢は付き合ってられないといった顔でカウンターに戻ろうとする

「いや 待ってくれ 俺も信じられないが本当なんだ なあ 嬢ちゃん」

なんか私のせいでスミマセンね

「リーダー あの首を見せれば早いのでは?」

「そうだった おいイレーネそんなに疑うなら倉庫に来てくれ」

「わかった じゃあハンスさんもつれてくるから嘘ならすぐばれるよ」

「ああ倉庫で待ってる」



「嬢ちゃん こっちだ」

ギルドからいったんでてすぐ横の古い倉庫に入る。

「昔の倉庫を解体場として使ってるんだが皆が倉庫って言うもんだから解体場って言っても誰もわからない」

確かに倉庫の横にはアヴィーナ冒険者ギルド解体場と薄れた字でかかれた看板が立て掛けてある。


「お待たせしました」

そう言いながら入ってきたのは痩せぎみで商人のような格好をした青年だった。

「おお ハンス こっちだこっち」

リーダーはハンスさんを首の前に引っ張っていく

「これですか  これはっ 確かにゴブリンキングですね こっちの三つはゴブリンリーダーで間違いないです  これをその子が?」

「ああ ありゃ戦いというより虐殺って感じだったな」

「そっそうですか では取り敢えず依頼料と追加の報酬を」

「あっそうだ 嬢ちゃんは登録がまだだったな そういや紹介もしてなかったな うちの新メンバーのリリーだ」

「リリーといいます。よろしくお願いします」

「私はイレーネ ここの受付嬢をやってるわ よろしくね」

「私はここの副ギルド長のハンスです 何かあったら遠慮なく言って下さい」

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