構成について 「感情」から書く脚本術のまとめ

真田五季

第1話

             ≪構成について≫



 ・構成について知っておくべきこと

 →端的に言ってしまえば、それは物語の形。

 物語は様々な出来事で出来上がっており、その出来事を最も効果的に感情に訴えかけるように組み合わせて、ひとつの形にすること。物語が出来事の羅列なら、構成はその物語をどう語るかということ。

 基本的に、物語は三つの幕で構成されている。

「お膳立て・混乱・解決」であったり、「関心を惹く・緊張させる・満足を与える」と言い換えてもいい。前者はソリッドな分け方。後者は感情的な分け方。


 対立が起き、変化が生じるように出来事を並べ、それを最後の対立とその解決まで積み上げ続ける。三幕をテーマの視点で見れば、主題、積み上げ、成就ということになる。


 ・第一幕「関心を掴む」

  まず読者に、ジャンルとムードをわかってもらい、これから語られる物語に対する期待を持ってもらうことが、この部分では肝要になってくる。そして主人公を紹介し、絆を感じてもらう。次に主題な問題を導入して興味を惹く。さらに、主人公がその問題とジレンマを解決できるだろうかという期待をもってもらう。

 読者の関心は、一ページ目でいきなりつかまなければならない。

 導入は、行動中の主人公、あるいは、独創的な世界から始めるのが良い。


  ・主人公の紹介

   できるだけ早く主人公を登場させて、読者がどのキャラクターについて行けばいいのか知ってもらうのが得策。読者が気にかけるように、また、同情するように仕向けること。


  ・きっかけになる出来事

   主人公の日常を、放置できないほどにかき乱してしまう重大な出来事。きっかけになる出来事が起きたことで、物語のギアが変わり、読者の関心に火をつける。主人公はありきたりな日常からカオスへ放り込まれ、均衡を求めて行動を起こす羽目になる。

   その出来事が主人公に及ぼすインパクトは大きい方がいい。無視しては話にならないので、彼にとって放置できないような問題であることが重要。


  ・中心的な問い

   出来事が発生し、それが力強ければ、読者の心は自然に、「主人公はこの問題をどうやって解決するのだろう」という問いが浮かぶようになる。これが、物語を貫く中心的な問いになる。読者の好奇心や期待感、そして緊張感を維持しなければいけないので、どんなに早くても、その答えを第二幕の幕切れより前に提示してはいけない。


  ・第一幕のクライマックス(後戻りできない点)

   主人公は問題に首を突っ込んで解決するべきか、無視するべきかというジレンマに悩まされる。この決断をしたら、すべては永遠に変わってしまう。もうそれまでの人生に戻ることができない。そして、決断は必ず「首を突っ込む」だ。


 ・第二幕「緊迫感と期待感」

 主人公が目標を達成しようと障害物や混乱を乗り越えて行動するのが第二幕。最もボリュームが大きくなる幕であるため、物語が崩壊しやすい。一瞬でも読者の心を離してはならないので、緊迫感を利用して常に主人公が勝つか負けるかを心配させる。目標達成の切迫度が高いほど、対立する要素の障害が大きいほど、読者の関心も高くなる。主人公の苦闘と、高まり続ける緊迫感。


  ・中間点

   第二幕の中間点は、激しい転換点になることが多い。大きな捻りや逆転が仕組まれ、主人公の目標達成の旅に、活を入れる。ここで主人公は迷いを捨てて、わき目も降らずに目標を求めていくことを決断することが多い。または、そうせざるを得ないことを受け入れる。目標達成のためなら何でもやる、という必死さが生じる点。


  ・深まる混乱と逆転

   中間点を過ぎたら、障害物と混乱は第二幕のクライマックスに向かって、より激して行くのがいい。逆転や発見を仕掛け続けながら、読者の感情を刺激していく。そして混乱が極まっていく中、主人公はいくつかの決断を迫られる。この一連の決断が、主人公を「最も暗い瞬間」として知られる第二幕のクライマックスに導いていく。

   敵は手ごわく、主人公が敵に勝てる見込みはない。すべては失われ、もしかしてここで諦めてしまうかもしれない。主人公の決意が試される岐路。


 第三幕「満足」

 ここできちんと感情的な要求にこたえられるかどうかが、作品のクオリティを左右する。十分な対立と、緊迫感と、切迫感が仕込んであり、未解決の問題が一つ残らず解決され、腑に落ちる一方ではっとするような解決が用意されていれば、読者の心は満たされるはずだ。

 

 

  ・主人公の立ち直りと成長

   第二幕が暗い終わり方をすることが多いので、第三幕は主人公が立ち直るところから幕を開け、最後の戦いに備えさせる。このとき気を付けたいのは、主人公をちゃんと、物語の理に適った方法で立ち直らせること。そうしないとせっかく結ばれた主人公と読者の絆が、切れてしまう。

   主人公の立ち直りは、同時に主人公の変化の終点であることが多い。最も暗い瞬間で追い込まれたおかげで、主人公がいい方向に変わる(悲劇なら悪い方向に)。心身ともに主人公が立ち直れば、最後の戦いへの準備が完了する。


  ・最後の戦い

   最初の二幕が高まる緊張感なら、最後の戦いは、もっとも中心的な問題が解決される満足感。この問題とは、第一幕で示唆されたものに他ならない。大事なのは、読者を感情的に満足させられるのかという点。


  ・効果的な幕引き

   物語に対して理に適っており、驚きに満ちた終わり方。対立を解決する方法が、読者の驚きを誘うものであるのがいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

構成について 「感情」から書く脚本術のまとめ 真田五季 @sanadaituki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る