第202話 情報過多にもほどがある


 チェーンさんは会場を歩きつつ、料理を持った皿の底を持って、俺たちに差し出す。それを受け取ると、チェーンさんは嬉しそうに笑いながら俺たちの質問に答えていく。


 「外に居る奴らは? 吸魂士って名乗っていたが」


 料理に乗った唐揚げを頬張りながらアニスが質問していく。俺たちはその質問を黙って聞いている。


 「吸魂士っていう遺伝子を食べるやつらだ。どうしてあいつらが居るのか。それは私がとちってしまったせいだ」


 「それは知ってる。鉱石の実験が関係しているんだろ?」


 「そうなんだよ~! でも私が作ったわけじゃないからな?」


 「そうか。てっきり人体実験でもしたのかと思ったよ」


 「そんな面白くないこと、私はしませーん! 見損なわないでくださーい!」


 「で? ならあいつらはなんだ?」


 「異人種だね。人じゃないよ。少数だったけど昔から居るし。まぁ、ロスト・シティに押し込めてたんだけどね。でも最近はこの国のどこにでも居るよ」


 「その割にはうちの情報管理でも知らなかったようだな」


 「そりゃね。夜にしか出ないし? それにこの国は結構鎖国気味だしね」


 「鎖国? あんな貿易街があってか?」


 「あそこはリップサービスてやつ。さすがに締め出したら帝国さんとかうるさそうだし。でも彼らはあそこしか行けないよ。彼らもこの中央都の間にあるロスト・シティの存在は知っているから来たがらないしね」


 なるほど。中央都を盾にしているのか。ロスト・シティは聞く限り、浮浪者の集まりが住んでいるらしい。そういう問題のある場所に行きたがる人はいないということか。外交的な面はどうしているかは分からないが。


 「ああ、で?」


 「でね? 今、ほら、私、この国で一番の大商人なんだよ? 父も隠居しているようなもんだしさ。そしたら、商業の新規客を捕まえたりもするわけだよ? そしたら、ちょうど、あの鉱石を半分権を手に入れて国の許可も得て研究していたら、帝国のお偉いさんが来てさー」


 「かなりの額を積まれたから売ったのか」


 「そう! なんだっけ。ほら、君たちの国に投獄された……ジョンソン? いつの間にかジルド商会を掌握していたんだ」


 その名前には聞き覚えがあった。確か、牢獄で暴れていた脱走犯だ。そういえば途中からやつの姿を見なかったが、脱走してしまったのだろうか。

 するとセイラさんが嫌そうな表情を浮かべた。ジョンソンと知り合いなのだろうか。


 「その人なら多分、脱走したんじゃ? 確かクライシスさんが捕まえたんですよね?」


 「彼は脱走したのか」


 クライシスさんは傍に居たセイラさんの頭を撫でる。どうやら捕まえた際にセイラさんも関わっているようだ。


 「そうなの? さすが元英雄さん。グッジョブだね。なんか喋り方が鬱陶しかったし。それでさ? そのジョンソンがさ、用意したのが魔法を使える鉱石の指輪ってやつでさ、便利なんだか便利じゃないんだかよくわからないものだったよ」


 「ああ、そういえば彼はそんなものを使っていたな。しかも私の風にも劣らない威力だった」


 「へえ! それは知らなかったよ。そんなに強かったんだ」


 「その鉱石の話は今はいい。あの吸魂士は?」


 「そのジョンソンが捕まったせいでもぬけの殻になったジルド商会を襲撃。吸魂士のリーダーみたいなやつがジルド商会から帝国行きになっていた鉱石を盗み出したんだ。そしたら色々な場所から吸魂士が集まって今じゃ一大勢力で夜の帝王だよ! 私がなりたかった!」


 悔しそうなチェーンさんはともかく俺はそんな魑魅魍魎が跋扈ばっこしているとは思わず、少しこの国に来た事を後悔した。


 「この国の兵士は職務怠慢か? 軍備拡大しているんだろ?」


 「してるよー。でも間に合わないし、強いんだよねー彼ら」


 「そうか? すごい弱かったぞ。すごい弱かったぞ」


 「そりゃ貿易街のはあぶれ者だしね。彼ら、多すぎてロスト・シティ以外の街に居るのは追い出されたあぶれ者なんだよ。まぁ、中央都の兵士以外の監視兵では手に余るようだから厄介だけどね。それで中央都から兵を出すとロスト・シティのやつらが出てくる可能性があって八方塞がりだよね。もうかなり大変って感じらしいよ」


 どうやらこの国にも余裕はないらしい。だが、今はガリレスさんだ。そろそろ本題に入ろう。


 「そういえば、ガリレスさんとアモンさんが入国したのは知っていますか?」


 「え? 知らないよ。君のとこの王様が特別待遇で入国したのは知ってるよー」


 「その愚王は今、あの中央にある塔に居るのか?」


 「ああ、そうなんじゃない?」


 「なら案内しろ。その愚王には正式に僕に。いや、王弟殿下とかいうのに代わってもらう」


 「なんだ、本当に王弟殿下に返すのか」


 「ああ、僕らはこれから忙しいからな。それにあの愚王がガリレスを知っている可能性もある」


 「今頃、吸魂士に殺されてるかもねー」


 「それもあり得るがやつは使えるからな。生きているなら救ってやる」


 合理的な判断をするアニスだったが、本心かそれとも照れ隠しか。やはり分からない。


 「良いけどー。うーん、分かった。明日で良いなら取り次いであげるよ」


 チェーンさんは一瞬、嫌そうだったがすんなり了承し、俺たちはパーティーを少し楽しんだ後、朝まで寝る事にした。

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