第84話 私を守ってください
「んんんんんんん!!!」
「アービス、暴れないでくれ」
人を縄で吊るしておいて何を言ってるんだ!この女は!
「アービスがいけないんだろ?変な店に行くから」
「んんん!!」
行っただけですぐ帰ったのに!!どうしてこうなった!?
――――
俺とナチはクロエと別れ、俺はナチを家に送っていた。ついでに紐も取りたかったし。
「悪かったな、ナチ、遅くなって」
「い、いえ!楽しかったです!」
「そ、そうか?」
結局図書館でアモンさんの手伝いをして、勉強はほとんど出来なかったわけだが。
「アモンさんから貰ったアイスも美味しかったですし」
「ああ、あれな、味は美味かったけど、腹痛になったらアモンさんに文句言え?な?」
あのアイス、アモンさんの手作りらしいがあの人、好奇心が強いから何を入れてるからわからないからな。
「だ、大丈夫ですよ!ダメですよ!人の事疑っちゃ!」
「ごめんごめん」
「い、いえ!謝らないでください!」
頭を振ってやめてださい!と慌てるナチ。癒される。
「久々にナチと話すと癒されるな」
「私回復魔法使ってませんよ!?」
「ナチ自体が回復魔法みたいなもんだからな」
「私はいつから魔法具になったんですか!?」
パニックになったかのように騒ぐナチ。こういう所が癒されるのだ。
「ほーらほら、ナチ~大丈夫だよ~」
「肩を撫でないでください!」
「肩幅を減らそうかと」
「減らしてどうするんですか!」
「じゃあ胸?」
「んん!!?? アービスくんのえっち! バカ!」
「冗談だよ冗談」
「もおー!!」
ナチは頬を膨らまして、俺を上目遣いで睨むが相変わらず可愛いだけで全く怖くない。
「良いです!アービスくんがいじわるなのは知ってますから」
「そう怒るなよ」
「あ、あの! 脇の下はやめてと言ったじゃないですか!」
俺はナチの静止を振り切り、両手をナチの脇の下に入れ、ナチの頭の上に頭を乗せた。あ、これ身長差的に結構きっついな!
「ナチもう少し背高くなっても良いぞ」
「余計なお世話ですし! 重いです!」
「じゃあ、やめるか」
「や、やめなくても良いです!」
「え、でも重いんじゃ……」
「あ、え、えっと、アービス君がしたいなら我慢します」
いや、そんな覚悟を見せられてもな。逆に申し訳なくなる。俺は頭の上から顎を退かした。
「あ……」
「ほら、ナチ」
なぜか寂しそうな声を出したナチの前に立ち、腰を降ろす。
「あ、あの、アービス君?」
「ほら、お前もしていいぞ、頭の上に顎乗せるの」
「え!? な、なんでそうなるんですか……」
「羨ましいのかと思って、するのか? しないのか?」
そう言えばナチは少し悩むと、俺の首に手を回し、俺の頭の上に顎を乗せた。なんか刺さる感じかと思ったけどそうでもないな。
「アービス君の髪の匂いがします……」
「じゃあ、そのまま嗅いでていいぞ、このまま家まで連れてってやる」
「は、恥ずかしいです」
「じゃあ、やめるか?」
「それもやです……」
「どっちがいい?」
「こ、このままで……」
「良し」
俺は何の重さも感じない程軽いナチをおんぶし、ナチの家へと向かった。その間ナチは顎ではなく、俺の髪に鼻を埋めていたようだ。
「変な匂いじゃないか?」
「全然です! いい匂いです!」
「そ、そっか、なら良かった」
なんかそう言われると照れるな。だが、ナチは嬉しそうに俺の頭に鼻を埋めながら嬉しそうにしていたので良いのだろう。
「最近、大丈夫ですか?」
「ん? 何が?」
「怪我とかしてませんか?」
「ああ、大丈夫だよ、ナチ、心配いらないよ」
「なら良かったです、アービス君が死んだりしたら私も死んじゃいそうです」
確かに。ナチはショック死していまいそうだ。もしくはいっぱい泣いて一週間泣き続ける。それはそれで死んだ冥利に尽きるのかもしれないが、ナチの泣く姿は本当に可哀想に思えてならないからな。あまりお目に掛けたくないが。
「大丈夫、ナチ、俺は死なないよ、ていうかほとんど戦闘なんか参加してないんだから死ねないよ」
「戦闘していないんですか?」
「全部アニスに見せ場を取られてるんだよ」
「アニスちゃんは優しいですから」
「いや、あれは時間かけるのが面倒だからさっさと終わらせたくて自分でやってるんだろ」
あいつ、いつも帰りたがってるしな。
「アービス君は鈍感さんなので気づいてないんですよ、アニスちゃんはアービス君に傷ついてほしくないんですよ」
「それはそれで複雑だな、どちらかというと守るのは俺の方だろうに……」
「な、なら私を……」
途中で言い淀むナチ。どうかしたのだろうか。おぶっているせいで顔が見えないので表情が読めない。
「私を?」
「私を……」
オウム返しをオウム返しされた。この声色は照れているのか、恥ずかしがっているのか。どちらかだろうが気になるから早く言ってほしい。
「なんでもないです」
「なんだよ!?」
最後の最後にそれはずるいだろ! 気になって眠れなくなるだろ!
「なんでもないんです!」
「なぜ、そんな嬉しそうに……」
だが、まぁ、これ以上、聞くのは野暮か。そろそろ家に着くしな。俺はそのままナチを送ると、黒い紐で作られた納刀袋を貰い、勇者パーティーの借家に帰った。
帰った途端、縛り上げられるのだが、帰っている途中の俺の頭にはナチが俺の匂いを良い匂いと言ったことを思い出し、少しテンションが上がっていた。
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