第65話 私はケルベロスをペットにしたい~!
ケルベロスに風急突破、突風撃滅を繰り出しながら私はアモンさんを抱え、安全な場所まで宙を飛んだ。
「それでは一気に決めさせ――――」
「ダメ~! 一匹は確保しないと~!」
「う、だがケルベロスは分裂をする、捕まえた瞬間、分裂されては捕まえようがない」
「え? ケルベロスって分裂するの~?」
「知らなかったのかい?」
「文献にはそんな事書いてなかったよ~?」
「ふむ、なぜかは分からないが、強化などをされているのかもしれないな」
「ありえますね~! もしくはケルベロスでも上位種なのかもしれません~! これはペットにするしかありません~!」
さて、どうしたものか、希少種のモンスターの調査や研究にも役立つなら、アモンさんの意見も聞いてあげたいが、分裂が厄介だ。一度三匹が分裂した状態で一体ずつ捕まえれば良いのだろうが……どうすれば。
「気絶はさせられないんですか~?」
「難しいな、彼らを気絶させるほどのちょうど良い魔法が思いつかない、せいぜい足止めか、倒してしまうかだ」
「なら、こうしましょう~! すいません、クライシスさん、ちょっと全体重かけちゃいます」
アモンさんは私に捕まりながらそう言った。私は快く頷く。
「大丈夫、任せたまえ」
「ありがとうございます~! では、光壁!! 光壁!! 光壁!!」
アモンさんは何度何度も詠唱した。するとケルベロスを中心に何重にも重ねられた光の壁が四方に現れた。
魔法の連続詠唱。それは身体にかなりの負担をかけてしまう。だが、それでもアモンさんは詠唱した。そこまでケルベロスをペットにしたいのか……! 覚悟が違う! 私もそれに応えるべきだ!
――――ガァア!!
光の壁になんどもぶつかるケルベロスだがアモンさんの連続詠唱で出来ているおかげでとても分厚い壁を壊せるはずがない。私も見せなければ! だが、倒すためじゃない。気絶をさせなければ。
「アモンさん! 私はあの四方の壁の上から入る! そこへ蓋をしてくれ!」
「わ、わかりました~!」
私はアモンさんをゆっくり降ろすと急上昇し、四方にある光壁の上から侵入した。そして、アモンさんが詠唱を唱えたのだろう。入った場所に蓋のような光壁が展開される。
この至近距離なら!!
「風急突破!」
――――ガァアアアアアアアアア!!!!
ケルベロスは決して壊れない光壁に風圧を受け叩きつけられる。私は風圧を弱めない。
「風急突破!! 風急突破!!! 風急突破!!」
連続詠唱。上を塞いだため、跳んでも逃げられない。風圧は全てケルベロスに向かい、ケルベロスは動きを止めた。そして、私も……。意識が遠のく中、光壁が消え、私はその場に倒れた。ケルベロスも背中から地面に倒れていった。
「クライシスさん~!」
アモンさんの声が聞こえるが、私は詠唱をしすぎたようで動けない。アモンさんもそうだろう。私は少し顔を上げ、ケルベロスを見ると、ケルベロスは生きているようだが気絶をしていた。
「良か……た」
「おーい! お前ら!」
すると、どこからかシャーロットさんの声が聞こえた。私の背後からの声。何かを引きずるような音も聞こえた。シャーロットさんの方も無事に片付いたようだ。
「おいおい! お前ら、大丈夫かよ! それにケルベロス、気絶してんじゃねえか、捕まえようとして無理すんなよ」
「シャロちゃん~」
「おうおう、アモン、エア・バ……クライシスもお疲れ、悪いな、クライシス、こいつの変な願い聞いてもらって、今、助け呼んでくるわ、これ、お土産な」
シャーロットさんはそう言うと引きずっていた物を置いた。それはケルベロスの分裂後の姿だった。シャーロットさんもアモンさんのために持ってきてくれたのか。
「それじゃ、後でな!」
彼女はそう力強く言うと王都に向かって走り出した。いつもは荒々しいが本当は優しい人だ。やはり勇者パーティーは素晴らしい人物だらけだな。私は自分の所属しているパーティーを褒めながら目を瞑る。少し疲れてしまった。休もう。
――――
俺、アニス、チェーンさん、エルちゃんは、ジルドを縄で結び、馬車の荷台に押し込み、王都に向かっていた。ジルド商会の作業員たちは騎士団が来るまで待機してもらう事にした。さすがに代表が居ないのに持ち出しはしないだろう。
「やっと王都に帰れるな」
「ふん、ケルベロスが王都など燃やしておるわ」
「どうだが、僕の予想ではもうケルベロスは全滅しているぞ」
「はっはは! そんなわけがないだろ!」
ジルドは高笑いし、そう言うとアニスの怒りを買ったらしく、アニスはジルドの頭をわし掴みにし、力を入れた。
「今すぐお前を燃やしてやろうか?」
「す、すいません」
「おいおい、色々聞かなきゃいけないんだから勘弁してやれ、アニス」
「良いじゃないか、どうせ処刑だろ?」
「ひぃい!?」
それは極論だが確かに魔王軍と繋がりがあるのは確定だし、どうなるんだろうか。情けない悲鳴を上げたジルドを見て自業自得だと思ったがあの悲鳴はアニスがわし掴みにした頭に力を入れたせいだろうか。
「まぁ、どうなるかはお楽しみだ、おっさん」
「ふん、小娘が……!」
「勇者、頭」
「僕に命令するな、商人、だが、良いだろう」
「いだだだだだあだ!!」
俺たちはジルドの悲鳴を聞きながら王都に向かっていった。
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