アフターストーリー
顔に出ちゃう間宮君
(まえがき)
一応、前回で一区切りで終わらせる予定でした。
ここからは蛇足だな~と思われるような感じで、イチャイチャな二人を描いていく予定です。
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告白を終えた後も、そわそわとした気持ちが止まらない。
山野さんと恋人になった事の喜びがそうさせているのだろう。
「間宮君。もうちょっとだけ一緒にお話しない?」
夕暮れ時。
外は真っ赤に輝き燦燦としている中、山野さんにそう言われた。
断る理由もないので、公園にあるベンチに座った時だ。
むぎゅっと握られた俺の右手。
握って来た相手の顔を見ると太陽に負けないくらい明るい顔だ。
「だめ?」
「だ、ダメじゃないです」
公園のベンチで手を握りながら座る。
ただそれだけだというのに、込み上げて来る感情がゾクゾクと体を巡っていく。
思いっきり鳥肌になってしまっている俺は横に居る山野さんを見やる。
すると、優しい顔で話しかけてくれた。
「ん~、今日は楽しかったね。遊びに誘ってくれて、ありがと!」
「こちらこそ、一緒に遊んで貰えて嬉しかったです」
「あと、何だかんだでなし崩し的に告白されるんじゃなくて、こういう風にちゃんとデートした後に告白してくれたのが凄く嬉しかった」
「好きな人にはちゃんと告白したかったんです。今日は本当に色々と付き合って貰えてありがとうございました」
「お礼を言うのはこっちだよ? だって、告白の件とは別にさ。指定校推薦がダメかもって落ち込む私を励まそうといっぱい楽しませてくれたじゃん」
「……バレました?」
「うん。あ~、だめ。また指定校推薦の件でイライラして来た」
「愚痴、聞きますよ?」
「え~、良いの? じゃあ……」
指定校推薦の件で愚痴を一杯漏らす山野さん。
一しきり、感情が落ち着き始めすっきりした顔で唐突に聞かれてしまう。
「ふ~、すっきりした。あ、間宮君ってさ。私の事、いつから好きだったの?」
「ストレートですね」
「だって、気になるし」
「結構前からです。夏休みに入る前? くらいからもう好きでした」
「うわ~、私もそのくらいの時から普通に好きだったよ。なんで、通じ合えなかったんだろ……」
明かされる衝撃的な事実。
超早い段階から互いに好きであったと知り今までの苦悩の日々は何だったんだ? と二人して笑う。
「と言うか、なんで私に興味がないフリしてたの?」
「山野さんは俺の事をただの友達としか思って無い。そうであった場合、俺がその……興味津々だったらどうですか?」
「ん~、接しにくくなる。私は相手の事を別に好きじゃないのに、相手は……私の事を好き。うんうん、めちゃめちゃ接しにくいね」
「そう言う事です。山野さんだって、そうだったんじゃないですか?」
「うん。だから、告白を成功させるために、間宮君を惚れさせてバッチリ心を掴もうって頑張ってた」
「……あの、悪い子って本当なんですか?」
ゲームセンター。
俺とプリクラを撮りたかった山野さんは嘘を吐いて撮る機会を作った。
その時に言われた悪い子宣言。
要するに、目的のためなら嘘をついちゃうような悪い子だという感じである。
で、まあ、口ぶりからして度々、行っていたに違いない。
「間宮君。今日、ご飯を作り過ぎちゃったから一緒に食べよ?」
「……」
思い当たる節がありすぎて困る。
何度も今のような言葉を言われては食卓を共にしてきた。
「思っていた以上に悪い子でしょ?」
「ほんと悪すぎません? 今、そんなこと言われたら凄くドキドキしちゃうじゃないですか」
「あははは。ごめんごめん。って、待った。間宮君もさ、ご飯を作りすぎたとか言って、何度か分けてくれた事があるけどさ……それって」
「あ~、俺も悪い子です」
「ふ~。だめ。ちょっと、あっち向いてて?」
「ん?」
あっちを向くどころか、山野さんの方をより一層と見てしまう。
するとどうしたものか。
顔は真っ赤。頬をだらしなく歪ませて、必死ににやけるのを我慢している山野さんが居た。
「今、もの凄いにやけちゃってるから、見ないでって言ったのに」
「すみません。でも、大丈夫です。俺の顔を見て下さい」
「どれどれ? っぷ。ほんとだ~。私とおんなじくらいだらしない顔してる!」
「という訳で、山野さんのにやけ顔を見ても良いですか?」
「でも、だめだよ? ほら、あっち向く!」
仕方がないので顔を逸らした。
そして、話を続ける俺と山野さん。
「ふ~」
「は~」
二人して大きく息を吐いた。
告白までの間、ガチガチに緊張していたのは二人とも同じだ。
ため息の一つや二つ出てしまうのはしょうがない。
「あはは。だめ~。もう幸せ過ぎて、死んじゃいそう」
「俺もですよ?」
「ていっ!」
山野さんは可愛く叫ぶと、唐突に手の握る力を強めて来た。
多分何の意味もないこの行為。
だけど、それなのに楽しくてしょうがない。
さて、俺もやり返すか。
「勝てるとでも?」
「ぐぬぬぬ。負けないよ?」
本当に意味もなく手を握る強さを競い合う。
もう訳が分からないくらいに心地が良くて笑みが零れ続ける。
「こんな感じで手を強く握って離さないで欲しいな~えへへ」
浮かれた山野さんは傍から見ればちょっぴり恥ずかしい事を何の躊躇いもなく言ってくれる。
そして、俺もそれに対し周りの人からしてみれば、見てられないぐらいに恥ずかしい答えを出してしまう。
「安心してください。一生、離しませんから」
「愛が重いね」
「山野さんがそうさせたんですよ?」
「それならしょうがないから、許す!」
ただ単に思った事を口に出し続ける無益でありながらも、有益である時間。
それは日が暮れるまで続くのであった。
日が暮れた夜。外は真っ暗だ。
さすがにそろそろお開きにしようという事で、公園を後にする俺と山野さん。
もちろん、山野さんをアパートまで送って行き……気が付けばもうアパートの前に辿り着いていた。
名残惜しくも繋いでいた手を離し、お別れの挨拶を済ませる。
「明日も学校で」
「うん。文化祭の後片付けを頑張ろうね。じゃあ、また明日!」
別れを済ませた。
しかし、恋人になった俺は山野さんにとある事がしたくて仕方がない。
だけども、告白するのさえ中々出来なかった臆病者にはハードルが高すぎる。
そう、キスだ。
お別れの挨拶にキスしたくてしょうがない思春期な俺は山野さんがアパートの階段を上がって行くのを見守り続けるだけ。
さすがにもう今日は実現しそうにないと残念に思っていると……
「ま~みやくん!」
階段を登り切った山野さんが俺の名を呼ぶ。
「どうしました?」
「今度、バイバイする時はキスしても良いからね? じゃあ、また明日!」
かあっと顔が熱くなった。
ああ、うん。
俺、山野さんと恋人になれたんだ。
そう強く実感する一瞬だった。
そして、山野さんが住むアパートを去り俺は姉さんと住んで居る家へ。
「ただいま~」
リビングへ入りながら、姉さんに帰って来た事を知らせる。
すると、姉さんは俺が居る方を見た途端に笑って来た。
「まったく顔に出過ぎですよ?」
仕方がないだろ?
顔に出ちゃうくらい嬉しいんだから。
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