第53話真実は彼女しか知らない。
「で、誰が来てたの?」
上は制服、下はパンツ、そして靴下だけというちょっとマニアックな格好を俺へ披露した山野さん。
そんな彼女は平静を取り戻し、俺が玄関で誰と話していたのかを聞いて来た。
「みっちゃんとけい先輩ですね」
「で、なんで?」
真っすぐな視線が突き刺さる。
……なんか、怖さを感じるんだが?
「けい先輩にアイロンがけを教えて貰っている時に、手作りのお菓子の話をしたんです。で、今日、たまたま手作りでお菓子を作ったとの事でみっちゃんが届けに来たんです」
「うんうん。それは分かった。みっちゃんが届けに来て……。ん? けい先輩も来たんだよね? 二人で来たって事?」
みっちゃんが届けに来て、わざとけい先輩が俺にアプローチを掛けているかのような勘違いを引き起こすような言い方で俺に手作りお菓子を渡してきた。
で、けい先輩が俺に気があるような言い方をして勘違いさせようとするみっちゃんを止めに来た。
こんな感じの経緯だが、分かっていない相手に説明するにはややこしい。
「そうですね」
面倒なので説明をするのを省くのであった。
「そっか。お菓子かあ……」
「どうかしました?」
「んー、ちょっとね。さてと、リーフレタスは元気かな~っと。どこにあるの?」
話題を切り替えてリーフレタスの様子を見るべく立ち上がった山野さん。
「ベランダにあります。見に行きましょうか」
ベランダに繋がる部屋へ山野さんと移動し、ベランダに出る。
「枯れずにちゃんと育ってますよ」
「うんうん、そう見たいで何よりだよ。間宮君のお姉さんって大人だね」
「……そうみたいですね」
ベランダにはリーフレタスのプランターと干されていた洗濯物。
どうやら、今日は出勤が遅かった姉さんが洗濯をしてくれていたらしい。
俺が家事を引き受けると言っても、時間があれば俺の代わりに衣類を洗濯。
本当に優しくて良い姉さんである。
「うん。これは凄く大人だよ」
「ん?」
俺が家事をすると言っているのに、姉さんがなんだかんだで家事をしてくれる当たり大人だと感じていたのだが、山野さんの言葉のニュアンスが少し違う気が……。
山野さんの方を見るとタオルで外からは見えないように囲い干されていた下着に釘付けであった。
「……確かに大人ですね」
「私のとは大違いだね。で、間宮君はこの大人っぽい下着を何食わぬ顔で毎日、これから洗濯をすると思うけど、大丈夫?」
「大丈夫ですよ。一応、身内ですし」
「いやー、私だったら無理だね。もし、私に弟が居て、その弟が際どい下着を穿いていてそれを洗濯する。うん、ちょっと無理。と言うか、私は何食わぬ顔で下着を洗濯してその後の反応で下着類はどうするか決めたら? って言ったけど、やっぱり、下着だけは洗って貰ったら? そもそも良く思えば女の子には色々とあるし」
「……ですね」
女の子には色々とあるのをすっかりと忘れていた。
そりゃ、色々とある女の子という年でもない年齢の姉さんの下着を……って生々しいからこの話は終わりにしよう。
「間宮君的には女の子はああいう下着の方が好き?」
「っつぶ! げほ、げほっ。急に変なことを聞かないでくださいよ」
「だって、ほら、気になるじゃん?」
「答えませんからね?」
「ごめんごめん。そう言う風に困った間宮君見たさにこういう風に色々と意地悪な質問をしちゃうんだよね」
意地悪にからかう山野さん。
そんな彼女にやり返したい俺はと言うととんでもない事を聞いてしまう。
「山野さんはああいうのを持ってるんですか?」
「うっ。そ、そう言う風にやり返すのは無しなんじゃないかな?」
「からかってくる山野さんにカウンターを返すとあたふたとして可愛いので、つい、聞いちゃいました」
「ぐぬぬ。間宮君ってほんと私に容赦ないよね。と言うかさあ~、間宮君。私の事を本当に女の子としてみてる? なんか、こういう風に話しているとほんとただ単になんでも言い合える男友達みたいなんだけど。私、こう見えても女の子なのに」
「いえいえ、しっかりと女の子扱いしてますって」
「むー、そう言われてもなあ。じゃ、女の子扱いしてくれてるならアパートに帰る時、送ってくれるよね?」
「はい、もちろん。たかが、5,6分だろうが送って行くに決まってるじゃ無いですか」
「うん、じゃ、そろそろ良い時間だし送るのよろしくね?」
割と良い時間になったので俺は山野さんをアパートまで送って行くのであった。
で、山野さんをアパートに送ってから、30分後ぐらいだろうか携帯にメッセージが届く。
『どうだったのかしら?』
けい先輩からのメッセージだ。
最近はみっちゃんがやたらと俺とくっ付けようと動き回っているせいでストレスを溜め込んでいるお方である。
不干渉のつもりであったらしいが、あまりのみっちゃんのうざさにそのスタンスを大きく崩して肩入れをしてくれると宣言。
好きかどうかを確かめるために過激なボディータッチ、尻や胸を触って嫌がられるかどうかを確かめろと言われた。
その事に対しての『どうだったのかしら?』だろう。
『触ってません』
『そう』
『いや、まあ、すみません』
『別に謝らなくて良いのよ? 私が言ったくらいであなたのチキンが治るのならもうすでに付き合っているもの』
嫌なプレッシャーを感じる文章。
……いや、ほんとみっちゃんのせいで苦労させてごめんなさい。
『ほんとすみません』
『いい加減にくっ付きなさいよ……。あなた達がくっ付くまでみっちゃんは私とあなたをくっつけようと諦めが悪いもの』
そんなお小言を受けている時である。
けい先輩から貰ったお菓子の存在を思い出す。
そう言えば、貰ったお菓子を食べていないなと思い出し、タッパーから取り出して食す。
「うまいな」
タッパーに入っていたのはアップルパイ。
リンゴの甘みとパイのサクサク感がとても合っており美味しい。
こんな良いものをくれたけい先輩にお礼を言わないとな。
『話は変わるんですけど、アップルパイ。美味しかったです。後でタッパーを返しに行きますね』
『なら、タッパーを今すぐに返しに来なさい。あなたのチキンさにちょっとお説教をしたいの』
めっちゃ怒ってる。
けい先輩がめっちゃ怒ってた。
メッセージから伝わるヒシヒシとしたプレッシャーはどうやら気のせいでは無かったらしい。
行きたくない。とはいえ、無視したら後が怖いのでビクビクとしながら、お隣のけい先輩へタッパーを返しに行く。
「こんばんわ。取り敢えず、タッパーは受け取るわ。で、なんで胸やお尻とか他の人に触らせないような場所を触って反応を見る事で、好かれているかどうかを確認するのを実行しなかったのかしら?」
鋭い目つきで俺を問い詰めるけい先輩。
そんな彼女に言い訳をする。
「いや、触ろうとはしたんです! 俺が帰って来るのが遅いからお布団にくるまって隠れる山野さんの体を鷲掴みはしたんですよ? ただ見えなかったから肩を掴んじゃっただけで……」
「私は胸やお尻をと言ったのよ? 肩なんて言ってないわよ?」
「……はい、すみません。でも、お布団にくるまっていた山野さんが出てきた時にスカートが脱げていたんですけど、その時の恥じらい方的に俺にパンツを見られても何とも思わないような本当になんでもしあえる仲の良い友達じゃ無いのは実感したわけで……」
あまりのけい先輩の怖さに変な言い訳を繰り出す。
そんな言い訳にけい先輩は顔を引きつらせる。
「え、ええ。そ、そう。制服のスカートがぬ、脱げていたのね」
「それがどうかしました?」
「いえ、まあ。その……。言っても良いのかしら? いや、でも哲郎君がノーマルでやまのんに引く可能性も……。いえ、さすがにこの程度で引く仲じゃないだろうし言うわ。そのね。制服のスカートは簡単に脱げるものじゃ無いの」
制服のスカートは簡単に脱げるものじゃない。
……いや、あんまりどいう構造になっているのかは知らないが、けい先輩の言う通り簡単に脱げるものじゃ無いのだろう。
「つ、つまり……」
「え、ええ。あの子、あなたのお布団の中で何かしてたんじゃ……。いえ、まあ、はっきりと言わないけれども……」
「いやいや、さすがにそれは……」
色々と思いを巡らせている時である。
山野さんからメッセージが届く。
『間宮君。ちなみに、制服のスカートは簡単に脱げるものじゃないからね。私が色々とドジでホックとか外れちゃってたり、スカートを短くするためのベルトを緩めてたりしてただけだからね?』
「これ、どう思います?」
届いたメッセージをけい先輩に見せる。
「してたわ。絶対にあの子は何かしてたわ」
「個人的にはおっちょこちょいで何度かパンツを拝んでるので今回もそれなんじゃ……って思うんですけど」
「何度も拝んでいるとか頭が痛くなってきたわ……。もう、あなた達、おかしすぎて意味わからないのだけれども……。さてと、こんな状況を見られたらみっちゃんにまた煩くされるわ。このくらいにしておきましょうか」
みっちゃんに見られたら煩くされるので、俺はけい先輩と別れた。
で、部屋に戻って来て頭を働かせる。
「スカートが脱げたのか、はたまた脱いだのか……。一体、どっちなんだ?」
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