第63話
「サラディアナ。荷物が届いているわよぉ」
「え。私にですか?」
一仕事を終えて帰ってきたサラディアナにクララが告げた。
クララの手には確かにサラディアナの名前が記入された小包があった。
だがしかし、サラディアナは首を傾げる。
今現在、荷物が届くような案件は無いからだ。
その様子を見ていたティトが声をかける。
「それ、キャラッソ店の包みだな」
「キャラ?」
「いま城下で流行ってるお店よぉ。女性の小物や装飾関係が揃った人気なのお」
2人の説明にさらに首を捻る。
そういった名前のお店自体知らないサラディアナだ。購入した記憶も勿論ない。
「.....間違いかな?」
「とりあえず開けてみれば?」
「中を開けたら思い出すかもしれないわ」
たしかにそうだ。
サラディアナは一つ頷いた後クララから小包を受け取り丁寧に包装された袋を開けていく。
キラリ。
箱を開けると中で何かが光った。
サラディアナだけでなく、クララもティトもその中身を覗きこむ。
「これは.....」
「ブレスレット?」
それはシンプルながらとても繊細な作りをした女物のブレスレットだ。
開けた瞬間に光ったのは、ブレスレットに付けられた赤銀色の宝石のようだ。
赤銀色といえばサラディアナの髪を連想させ、これがサラディアナに向けられた小包だと言う事は明らかだった。
ブレスレットが入った小箱にら小さなメッセージカードが添えられていた。
サラディアナはそれを拾い文字の羅列に目を見張った。
「え。キエル?」
そのカードにはたしかに、『キエル・ハワード』の名が刻まれていた。
「【ディアへ 君の初めての夜会のお祝いに】っですって」
「!!」
「やるなぁハワード殿」
慌ててカードを隠してみたがもう遅い。
後ろからカードを盗み見た2人がにやにやとしている。
サラディアナは恥ずかしさで口を開閉させた。
きっと、ザントが労い会に出席する事をキエルに報告したのだ。
それが伝わりキエルがサラディアナに向けてプレゼントをよこした。それしか考えられなかった。
サラディアナはもう一度小箱に入ったブレスレットを見る。
そっと持ち上げるとこのブレスレットがいかに丁寧に作り上げられた物なのかわかった。
「そのブレスレットは新作ねぇ。最近城下で流行ってる特徴を抑えてあるしけれど、まだ店先で見たことが無いわぁ」
「赤銀色の石がサラディアナの髪色にそっくりだな」
「サラディアナに似合いそうなデザインねぇ」
「うっ...!!」
次々と与えられる情報にサラディアナの頭はいっぱいだ。
そもそも、キエルが女性に装飾品を渡すなど、紳士的な事をするだろうか。
いや、するかもしれない。
サラディアナはついと記憶を探る。
故郷では小さい頃から色々な物をサラディアナにくれた。
それは殆どが飴や焼き菓子と言った幼さの残る物だ。
だが、それは全てサラディアナの好きな物だった。
そして、1番嬉しかったのは、2人で出かけた時に髪に挿してくれた秋桜だ。
魔法石の力を駆使し加工した秋桜はイヤリングとして宝物箱に保管している。
それが3年の月日で、こんなにも内容が変わるのか。
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