第62話


 セドリックはフードを被り直してながら、口角を上げる。



「バカいえ。お前になんかに頼まなくてもサラと出かけるなんてたやすい」

「だ、そうだけど?サラちゃん」

「えっと。.....そうですね」

「.....サラお前すげー嫌そうだな、おい」

「基本的に引きこもりなので」



 特にセドリックと会うのが嫌という訳ではない。

 ただ、出来るなら仕事が終わったらそのまま部屋に戻りたいだけだ。

 いやしかし、サラディアナも言いたいことがある。




「逆に聞きますけど、セドリックは外出したいんですか?人が沢山いるような場所に」

「...............」

「ほら」

「ちっ!」




 長い沈黙は「無理だ」の意だ。

 セドリックはそのままフードを深く被ってそっぽを向いてしまった。

 その姿を見てザントは豪快に笑った。



「やっぱり想い人がいる相手を落とすのは大変そうだなぁセド!」

「うるせぇ」

「落とす?」

「いやいやこっちの話。所でサラちゃんは勿論労い会に参加するんだろ?」

「ええ。滅多に無い機会なら経験したいなと思いまして」



 サラディアナは頷く。

 部屋の3人も参加条件を満たしているようで、参加すると言っていた。

 キエルも参加するなら尚更だ。



「そっか。キエルに伝えておくな。どんな反応するか楽しみだ」




 頭を撫でるザントはそのままドアの方へ向かう。

 ドアノブを持つとくるりとこちらを振り向いた。




「セド!俺は諦めてないからな。こうなったらアシルバート殿下に話を通してやる。」

「やめろ」

「じゃあねサラディアナちゃん!」

「あ、はい。」



「さようなら」と声をかける前にドアは既に閉まっていて、ザントが出て行った後だった。

 ザントに対してブツブツと小言を言うセドリックに苦笑いが禁じ得ない。




 後日、アシルバート殿下から直々に労い会への招待状がセドリック宛に届き、否応なし参加が決定となったのだ。

 その時、セドリックの怒号が部屋中に響いたのは言うまでもない。



 そして後日になるが、サラディアナに対してもとある小さな事件が発生するのだった。

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