第28話
「昔、私が作ったアイテムです。体力回復と走る速度が向上します。」
「ほー?」
「え!?なにそれ凄い!」
3人が感嘆の声をあげる。
「新人ちゃん、発明もできんのか?」
「魔導具の配線とか中を調べたり覚えるのには解体が一番早いんです。その過程で師匠が"解体と創作は紙一重だ"とおっしゃられて、まぁ色々作ったりもしたんですよ。でもちょっと前のやつなので少し調整しますね」
勿論、魔導具を公式に作ったり売ったりできるのは発明家だ。
それでも魔導具技師の中には趣味や研究の一環、発明家の協力等で魔導具を作る人もいる。
「....話せば話すほどサラディアナは優秀な魔導具技師ね」
「"技師の鴉の弟子"あながち間違いじゃないわねぇ」
ボソボソと話をするニコルとクララの声は調整を再開したサラディアナには届かなかった。
その様子をみていたティトが真面目な顔をしてサラディアナに口を開く。
「いいのか?....それ男物だろ?」
一瞬サラディアナの手が止まる。
このアンクレットは女性物の華奢なデザインではない。
男物で色も黒銀色。
魔法石も色々探してキエルの髪の色に似た石をわざわざ探して付けた。
魔法石の周りにはこの世界の守護神といわれ一角獣を模した装飾もついている。
そう。全てはキエルのために作ったものだ。
宮廷魔導師になった彼に危険が及ばないように。そう願って。
「良いんです。本当に試作として作ったものですし。.....渡すつもり無かったので」
「....そうか」
サラディアナの答えにティトは優しく頷いた。
軽く点検をしたが作られて日が浅いアンクレットに不備は無いようだった。
少しだけ足回りに巻く黒銀部分を短くし、魔法石に自分の魔力を注ぐ。
出来るだけ長く彼女を守ってくれるように魔法石の魔力を最大に回復させたのだ。
全ての点検を終え、サラディアナは再びアンクレットをティトに手渡した。
「では、ありがたく受け取るよ。人を思いやれる君に幸多からんことを」
「えっなにこのイケメン」
「惚れるわぁ」
周りから野次が飛ぶ。
サラディアナはそのやりとりに心から笑った。
自分の力がキエルに届かなくても。
せめて宮廷であった初めての友人が怪我なく帰って来てくれる事を心から願ったのだ。
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