第25話
「魔法石の残量は経験と感覚に基づくものです。例えばクララさんが24時間365日その包丁を使用するとなると、また期限は変わりますので買い替えなどはお早めにしておいてくださいね」
「わかったわ」
つらつらと注意事項を述べるサラディアナに、クララはうんうんと頷いた。
「やっぱりいいわぁ。同室に魔導具技師さん。しかもあのセドリック・ドラフウッドの弟子」
「弟子じゃありませんってば」
そこは全力で否定をしたいサラディアナである。
その様子を見ていたニコルは眉を潜めた。
「ちょっとクララ。同室だからってあまりサラディアナの手を煩わせちゃダメよ。」
「大丈夫ですよ。空いた時間で点検したので」
「そうよー。私だって無理は言わないわ。それにちゃんとかかった費用分の金銭とそれに見合ったお礼を渡しているわよぉ」
クララは空間魔法の施されたカバンからなにかを取り出すとサラディアナに手渡す。
サラディアナの手には大皿に乗ったワンホール分のフルーツケーキが載っていた。
フルーツはカラフルに彩られ、器用にも動物や花と言った乙女心をくすぐる作りになっている。
サラディアナはほうっとため息をつくとクララにお礼を言った。
「こんなに沢山いいんですか?」
「いいのよぉ。魔導具技師さんに修理要請すると2週間かかるものが3日でできたんだものぉ。それに、これは試作だから意見を聞かせてくれるかしら?」
うふふ。と笑うクララは妖艶である。
「みんなで食べましょう紅茶を用意してきます」
「私が行くわ。美味しい紅茶の入れ方をパティシエに聞いたの」
「わーい!」
「おっ!楽しそうな事やってるなー」
ちょうどいいタイミングでティトが帰ってきた。
最近では珍しい時間の帰宅なので同室全員浮き足立つ。
「お帰り。珍しく早く帰ってきたね!」
「連日働き詰めだから休めって殿下から通達が来てねぇ」
騎士団のマントを脱ぎ捨てどかりと三人のいるソファに座る。
「ティトご飯は?紅茶淹れるついでに軽く作ってきてあげましょうかぁ?」
「助かる。クララの飯は美味い」
「あらやだ、うふふ」
ご機嫌に出て行くクララ。
ティトは「これ食べていいか?」と一言断りをいれてからケーキにフォークを刺した。
「ねーティト。やっぱり戦争が近いの?」
「そうだな。まぁ、今回は威嚇戦線って話だから短期決戦になるだろうな」
威嚇戦線とは、お互い刃を交える戦いとは違い、お互いの技量を見せつけるだけの戦い方法だ。
こちらにはこのような威力があると知らしめる事で戦争を諦めさせる事もある。
根本的に相手には指一本触れさせないことが決められている。
それを聞いてサラディアナはホッと胸を撫で下ろした。
やはり血を流すような戦いをキエルやティトにして欲しくないのだ。
「それに伴い、宮廷魔導師の精鋭が前線に出るらしい」
「魔法威嚇の方が多様性もあるし効果が高いって事?」
「そうだ。私達騎士はその統率力と総員要員の役割だ。あともしものためってところか。」
「もしものため?」
ティトの丁寧な説明に聞き入っていたサラディアナはふと疑問を口にした。
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