第18話
サラディアナの視線に気づいたアシシは片手を挙げて応える。
空色の瞳が細くなり、前回の鋭さは見られなかった。
「やぁ!サラディアナ。セドに弟子ができたって噂が耳に入ってね。君の事じゃないかと思ったんだ」
「違います」
全力で否定をするサラディアナだが、セドリックの部屋に2人でいる時点で少なくとも「噂の張本人」であると物語ってはいるのだ。
そんな2人に、珍しくセドリックが目を見開いて驚きの表情を浮かべている。
「なに、お前ら知り合いなの?」
「うん。彼女が王都に来た日に街であったんだ」
「....ほう」
意味深な呟きで反応したあとセドリックはアシシの方に腕を出す。
「ん?」と首を傾げるアシシ。
眉をひそめイラついた表情を浮かべたセドリックはもう一度腕を出すように上下に振った。
「街に出たと言うことは魔法道具の不備だろ。早く出せ」
「ご名答ー」
空色の瞳を細めてアシシはセドリックの方へ歩き出す。
アシシは左耳につけていた赤い色のイヤリングを外すとセドリックの手の中に落とした。
「目くらましがちょっと弱い気がしてね」
「.....うん。発色がおかしい。どこかの動線逝ってるな」
「それはなんですか?」
イヤリングを光にかざし視診と触診を行うセドリックの手元をサラディアナが覗く。
見た目はただのイヤリングだ。
だが、会話から察するになにかの魔法道具なのは理解できた。
セドリックの代わりに応えてくれたのはアシシだった。
「魔法道具の一種だよ。これをつけると、相手に幻覚を見せる事ができる。」
「幻覚?」
「たとえば、自分の声が相手には少し違った声色に聞こえる。会話した相手でも俺の顔を記憶から変化させる。他にも色々できるけど要は印象を残させないんだ」
「凄い!」
パッと目を瞬かせるサラディアナ。
師匠から色々な魔法道具の話を聞いてきたが実際に見るのは初めての代物だ。
自分が想像し得ない魔法道具があることにサラディアナは興奮を隠せなかった。
「サラディアナは魔法道具が好き?」
「ええ。好きよ、大好き!」
アシシに向かって笑顔で答える。
それを見たアシシは一瞬空色の瞳を見開いた後いつものように笑って見せた。
「そう。...それは羨ましい」
「羨ましい?」
「君に好きと言われる物や人が羨ましいという意味だよ」
「?」
アシシの言う「羨ましい」理由が分からず首を傾げる。
そんなサラディアナを見て、アシシは丁寧な仕草で赤銀色の髪を撫でた。
その仕草が優しくて何故か切なくて、サラディアナは一瞬息をのんだ。
「....どうでもいいけど君らそういうのは他所でやってくんない?」
「うん?羨ましいのかな?」
「あほか」
アシシがクスクスと笑うと呆れたようにセドリックが両手を挙げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます