第9話


「ここがサラディアナの部屋よ」



 案内されたのは、二階の角部屋。2001号室。



「メイン階段からは1番遠いけど、部屋向かいの扉を開けて非常階段を使えば庭先に出れるからそこ使っていいわよ。失礼しまーす」


 コンコンコンとノックをしたニコルは部屋に入室する。

 中は思ったより広く、窓が大きくて開放的だ。

 窓際には勉強机が四つ設置されている。手前は団欒場所になるのかソファとソファ用テーブルがあった。


「寝室はそこの扉の奥よ!二段ベットがあるわ。荷物はここの棚にいれてね。空間魔法が付与されてるからすぐ使わない物は棚の引き出し」



 空間魔法。

 クローゼットなキッチン棚、最近では鞄などに付与される。要は中にいれられる容量を大きくする魔法だ。

 サラディアナも村から持ってきた鞄には空間魔法が付いている。長距離遠征などにはうってつけなのだ。

 しかし、従業員全員のために空間魔法を使った部屋が用意されているのには驚きだ。



「部屋の人はいないんですか?」

「この部屋は3人いるんだけど、1人は私よ!あと2人は仕事中だから帰ってきたらまだ紹介するわね」

「わかりました」


 どうやら部屋割りは、部署だけではなく入城年月もバラバラらしい。

 ニコルが同部屋という事で、なんとなく明るい部屋になるのかなとサラディアナは思った。



「荷物を片付けたら自由にしてていいわよ。私はまた新人が来たら呼ばれるけど、何かあったらそこらへんの人に聞けばいいから!」

「ありがとうございます」



 改めて礼を取るとニコルはニコニコ笑って頷いた。





 その後、サラディアナは部屋の片付けと整理をして入浴をしてから早々に寝台に潜った。



 目を瞑るとキエルの顔が浮かんだ。

 サラディアナの知るキエルは三年前の姿のままだ。

 金髪の癖っ毛が風に靡くと眩しくてサラディアナはそれを思い出して、寝台の上なのについ目を細めてしまった。

 あれから三年。

 彼はどうなっているだろうか。

 相変わらず優しく穏やかな笑顔を浮かべているのか。

 世話焼きの人だったから相変わらず色々な人に手を貸して人気者かもしれない。

 魔導師として立派に役目を務めているだろう。

 会いたい。でも会いたく無い。

 そんな気持ちがグルグルとしている。

 サラディアナは布団を頭までかけて潜り込んだ。考え出したら止まらない。


 この仕事を選んだきっかけは、キエルを追うためだ。追って彼の役に立てたい。それが間接的でも。

 でも今は、魔道具技師としても頑張りたいとも思っている。



「....頑張ろう」


 キエルに会えた時胸が張れるように。

 サラディアナは目を瞑ると、ようやく眠気によって夢の中は誘われる事ができた。

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