第8話

 アシシと別れて暫くして、ようやく城にたどり着く。

 城門で名前と試験合格通知を見せたサラディアナは、その後迎えにきた教育係の先輩と入城を果たした。



「私、ニコル。いつもは宮廷内の侍女をしてるわ。さっきも言ったけど今期女性入職者の教育係をします。」

「サラディアナです」


 名前を伝えて頭を下げるとバシバシと肩を叩かれた。

 これが思った以上に痛い。出会って間も無いが、ニコルはかなり豪快な人のようだとサラディアナは格付けた。



「といっても私が担当するのは生活の事で、仕事の教育係は科や班によって変わるから。サラディアナは確か魔導研究科ね」

「魔導研究科....」



 ニコルは目的の場所に向かうまで様々な事を教えてくれた。

 城内には様々な組織で構成されている。

 まつりごとを担う中枢官僚部門。

 城内外の警備や戦闘に当たる防衛部門。

 あらゆる生活に対してサポートをする給仕部門、などだ。

 そして宮廷魔導具技師の多くは、研究部門の魔導研究科に入る。

 ニコルは給仕部門の女官科になる。

 勿論全てがきっちり分かれているわけではない。

 衛生科が防衛部門の人のように戦場いくさばに駆り出される事もある。防衛部の騎士団が城内にいる中枢部の人間に就くこともあるからだ。


「科から別の科に派遣されたりするから厳密には言えないけど、大まかなものはそんな感じ」

「なるほど」

「明日、魔導具技師長に会えると思うから、専門的な事はその時に色々聞いてね。」

「わかりました」



 サラディアナは小さく頷いた。

 その他色々説明受けながら向かったのは城内で住み込みで働く人の棟だった。


「ここは春棟。他にも夏秋冬の四施設で生活棟が設けられてるわ。基本的に三〜六名ずつ一部屋割り振られてて、ルームメイトは部署関係なく構成されてる。階級が上がれば個室や城内にあるに生活棟に入る事もできるけどそれは何十年先になるかしらね」

「広いですね」



「春棟はこれでも小さい棟よ。食堂はさっき教えた城内地下の階段を下ればあるからそこを使うの。料金は給与から引き落としね。棟内にキッチンがあるからそこを使っても構わないわ。仕事場が食堂から遠い人とかお弁当作っている人もいる。あとは部屋で女子会をする時とか使われるわね。」

「洗濯は大浴場にあるカゴに入れておけば、洗濯科が持って行ってくれて洗ってくれるけど、返却まで二〜五日かかるから気をつけて。寮名、部屋番号、名前は必須よ。洗濯機も春棟に設置してあります。大浴場と洗濯室はあっちね」


 ニコルの丁寧な説明にサラディアナは頷きながら応えていく。

 村学校の規則は厳しかったが、ここはある程度自由を尊重してくれているようだった。

 と言っても城と言うのはは国の模範となり憧れな場所。

 規律を重んじているのは確かで、何か悪い事をすれば罰はあると言う。

 サラディアナは改めて気を引き締めるのだった。


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