第5話 個性豊かな先生と説明と

結局、俺以外の生徒からクルミ先生本体への挑戦はなく、あれ程

息巻いていた縄部もすぐに分身の方に逃げた。


後で殺そう。俺は騒動に巻き込まれ恨みを縄部に返そうと誓った。


殆どの生徒が、10分の1の実力のクルミ先生(分身体)を選ぶ。

10分の1だと28か?でも技術や経験が桁違いだからまず勝てないだろう。


全員参加ではなく、何人かの女子生徒は不参加だ。男子は全員参加である。

ぞろぞろとトレーニングルームへ向かう。

トレーニングルームはドーム型の訓練施設だ。

秘匿性を保つ為学科ごとに分かれ、計3つのドームがある。


俺たちは学校からトレーニングルームへの通路を歩く。

基本的に他の学科とは会わない。無駄な争いを避ける為だ。


「さて、『ディバイド』の説明を始める」

先生がトレーニングルームの前で俺たちを止めた。



「これから入るトレーニングルームには、様々な地形を再現した

 ディバイドのフィールドが設定されている。

 本来、ディバイドを行うと今までいた場所と同じ異空間が再現される。

 ただ、お前たちが持つディバイドはここ神詠学園の

 敷地内しか使用できない。理由は教師など監視下で安全に行う為だな。

 あと、お前らが暴走して一般人などに危害を加えないようにする為だ」


16才になると「ディバウト」が可能になる。200年くらい前は

その事でハシャギ過ぎた馬鹿が一般人まで狙い、無理やり奴隷に

してかなりのバッシングを受けたらしい。

(まぁ、他の学校の事らしいけど)


「今この中で他のクラスも、それぞれの担任を相手に戦闘をしている。

 気になる奴がいれば今の内に偵察しても オーケーだ」


その言葉に緊張するものや喜ぶものもいる。


「じゃ、入るか」

先生がカードキーを差し込み中に入る。


「ウォォーーーーー」

「キャァァァーーー」

開けた瞬間、ライブ会場のような熱気に包まれる。


「何してんだ、早く行くぞ」

あっけにとられる俺たちを先生が急かす。


「凄い、これが『ディバウド』」

外からは透明に見える異空間内で沢山の生徒が戦っている。




「もうお終いか?この程度でよく我がクラスに入れたものだ」

魔法騎士だろうか?白銀に輝くランスを生徒に向けている金髪ロン毛髭男爵。


「あの〜、まだ5分も経ってませんが?」

銀色の箒を扱う胸が大きい、そう大きい黒髪のメイドさん。

倒れた生徒に無関心そうなのが俺的にタイプだ。


「あぁ、退屈だ。せめて君達に私ほど頭脳があれば」

白衣を着て小さなハサミを無数に飛ばしている危ない教師。



「弱い・・・・。すぐ死ぬ。もっと頑張れ」

青い髪をツインテールにし、両腕に巨大な黒い手をつけた

レオタードの女の子が無表情で言っていた。



「うん。今の攻撃はなかなか良かったよ。」

黒い手袋をした金髪で若い男。顔もイケメンだ。

主に女子と戦っている。女子の目が怖い。

欲望はこんなにも人を変えるのだろうか?

倒れた女子生徒はその先生に、伝説のお姫様抱っこをされていた。

人気があるわけだ。男子生徒は冷めた目で見ていた。


「うちらのクラスが最後らしいな。今日は一年と生徒会が許可したやつしか

 対戦できないから結構空いてるな」


クルミ先生が周りを見渡して言う。

「俺たちは真ん中だな?予約しといてよかった」


「予約?」

後ろの生徒が呟く。


「ああ、普段、お昼休みや放課後は予約しないと場所とれないんだよ。

 まぁ敷地内なら戦えるんだけど、設備が違うから人気なんだよ。

 データも記録してくれるし。飲み物とか軽食なら食べ放題だし」


「食べ放題なんですか?」

クラスのみんなが沸き立つ。


「戦闘登録したやつだけだぞ。だから人気があるんだよ」

クルミ先生は苦笑する。


「じゃ、移動するぞ」

丸い円の所に先生が俺たちを誘導する。


「この3って書かれた転移陣に入れ、みんな入ったか?」

慌ててみんな入る。50人くらいは入れそうだ。


「じゃ、転移」

ウィン!!!


体の中を何かが通る感覚がした。


「今のが転移だ。旅行とか行く奴は知ってるだろ?」

大きなドーム状の前に俺たちは来ていた。


この世界では、観光で空の旅ならあるが旅行はダンジョンから発見された

転移陣をつかう。だから日帰りは当たり前だ。

本来は海外から商業や冒険者たちを指名したクエスト、ダンジョン氾濫の時の応援で使用される。マナと呼ばれる魔力で動く。魔法職でない者のマナは少ないと言われている。


魂具ガング』は魂力と呼ばれる力を使う為

別物だそうだ。魂力は生まれ持った量と人生経験などで増える。

壮絶な体験をした者は魂力が爆発的に増えるらしい。

まぁ精神的に危なくなるようだが。


「よし、じゃあまずは、デモンストレーションとして私と山田が戦う」

クラスメイトが俺を見る。縄部も悔しそうに見ていた。

だったら代われよ?と俺も睨むと目をそらした。

(モブかお前は!)


俺は嫌々前に出る。

「じゃあリングを私のとくっつけろ」

先生が右手を出す。


「これでいいですか?」

俺も左手を出すと先生が俺のリングに当てた。

リーン!


「おお!」

鈴のような音がした後、パソコンのウインドウのような画面が現れる。


『ディバイド』 

−誓約書−

1、本契約に基づき自身の死後、リングはセンターに返還される。

  法人の場合は法人返却とする。

2、ディバイド内での戦闘による死亡はないが、心神喪失など

  精神的苦痛や、心臓など刺された痛みが続く場合もあり、

  それにより死亡した場合の責任は本人にある。

3、強制的に戦闘を持ちかけたり、脅迫、洗脳、催眠、等の行為

  を行いその者の人権を含む財産を賭けた場合、試合が強制的に

  終了する場合がある。

  事前にリングが普段の状態を記録しており、スキルや『魂具ガング』の

  能力をレジストする。

  ただし、絶対的なものではない。

4、3の行為を行った場合、もしくはデータがセンターに送られ、

  違反行為が発見された場合は、当人に重い罰則が与えられる。

  人身を賭けていた場合、当人が死刑、または犯罪奴隷となり

  その家族も該当する場合もある。

5、『ディバイド』で人権を含む賭けを行う場合は戦闘前に「宣言」が必要で

  あり、両者またはチームの代表が宣言し、相手も「了承」の類の言葉を

  発しなければならない。

6、「宣言」時、両者にスキャンが行われ、脅迫、スキル、『魂具ガング

  の影響を受けてないか確認される。

7、「宣言」で了承された賭け事はいかなる理由があろうとも破れない。

  ただし、罰則事項に触れる場合、法人管理の場合は、管理者であれば

  解除できるものとする。

8、法人の管理の場合、政府、ギルド、管理事務局であるセンター

  に届けること。審査を通過した場合に限り権限により賭けを

  無効にする事ができる。ただし、法人が管理する敷地内のみに適応され

  管理外のリングはその対象外とする。

  基本的に敷地内では管理されたリングのみ使用可能だが

  管理者に許可を得れば使用可能。審査は行われる。

9、学校法人などの場合、管理者は最高責任者とし、引き継ぐことは

  不可能である。新たに選出された場合、申請し直さなければならない。

10、戦闘に持ち込めるのは装備、『魂具ガング』、他に持っている物 

  のみで、戦闘で消費されたものは現実空間に戻ると元に戻る。


「誓約書読んだら、同意しますにタッチしろ。それで使える。」

ポチ。


「ディバイドへようこそ」

ツインテールのピンクの髪の女の子が画面に出てきた。


「戦闘について説明が必要ですか?」


「いや、必要ない。フィールド選択」


「むぅ!わかりました。フィールドを選択してください」

笑顔だった女の子がクルミ先生の言葉で不機嫌になる。


「コンクリートで」

先生が怒る女の子を無視して進める。


「わかりました〜」

怒りながら仮想システムの女の子がパネルを操作する。


「はい、ではフィールドへ送ります。他の方は観戦でよろしいですか?」


「そうしてくれ」


「ではどうぞ」

答えたクルミ先生と俺が、フィールドに転移された。


こうしてバトルが始まる。


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