第3話 オートモードには気をつけろ!

「みなさん、初めまして。生徒会長の破条真冬はじょうまふゆです。神詠学園へようこそ!

 学校を代表し、みなさんの入学を歓迎します」

ステージの壇上で青に近い銀髪の長い髪がお辞儀と共に揺れる。


「おい、あれが氷姫(こおりひめ)だ。まじ美人だよな〜!」

 隣に並んでいた男子生徒が俺に小声で言う。


「まぁ、普通じゃない?」

俺の口がで答える。


「は、お前マジで言ってんの?あぁ、あれか。何でもないふりして

あの氷姫こおりひめを狙ってる口だろ!」


「いや違う」


「まぁそう強がるなよ。俺があの子ゲットしてやっからよ」

隣の男子生徒がいやらしく笑う。


=危険度D 注意人物として登録=

データに隣の男子が登録しました


「『ディバイド』で勝ったらマジで奴隷にできるんだぜ。最高かよ!」

俺は隣で気持ち悪い笑い方をしている男の会話を記録する。

いざという時の為だ。


くだらない会話をしている間に生徒会長の話が終わったらしい。


「それでは皆さんのご活躍を願ってます。あ、あと私はレベル120程です!

 私を手に入れたい方もおられるかと思いますので、いつでも

 挑戦を受け付けています!」

笑顔で本人がとんでもないことを言った。


その瞬間。

「ウォォォォォォォーーーーーー」

「キャアァァァーーーーお姉様〜」


講堂が地割れでも起こしたように大気と共に揺れた。


=外部音声をシャットアウト=

音声が自動的に遮断され俺には何も聞こえない。



「静かにしろお前らぁ!」

ドゴォォォォォォン!


生徒の声をかき消す大声と、巨大な赤い柱が講堂の壁に叩きつけられた。

壁側にいた教師陣は一瞬で移動していた。


=レベル100以上多数検知=

危険度S17名 危険度A28名 危険度B5名 未確認1名

登録しました


「・・・・・・」

静寂が訪れる。


「お前らクズがレベル100以上のに勝とうなんざ200年早いわっ!」

巨大な赤い柱が収縮し2メートルほどの細い棍棒になった。

大声を出した教師を、新入生が驚いて見る。


「俺は特戦科体育担当、猿渡伴次さるわたりはんじ。てめーらが一番に考えることはただ一つ。

 俺に殺されないよう、血反吐いてでも生き残ることだ。

 お前らに人権なんざあると思うな。どうしても「ディバイド」

 したいなら俺が殺してやるよ」

壇上に上がりながら大声で言う。その体は2メートルもありゴリラのような

体格をした男だった。


生徒会長が苦笑しながら、横にずれる。


ゾワッ!

猿渡先生から発せられる殺気に新入生だけでなく2、3年生にも緊張が走る。

これが日本最高峰の学校の教師か。

殺気に耐えられる上級生や教師陣を除き、みんな硬直している中、


=危険度Sが殺気を発しています。相殺します=

俺のオートモードが発動し、猿渡先生に殺気を返してしまった。


「ツッ!誰だ!」

先生が赤い棒を構え、破条さんを守るように前に出た。

生徒会長である破条さんも驚いて小さい青い剣を構える。


二人が俺と目があった!

=危険度SとBに感知されました=


1分くらいだろうか。先ほどとは違った緊張感が講堂を包む中、

「先生、それぐらいでよろしいのでは?」


壇上の教職員席に座っていた身なりのいい白髪交じりの老人が

立ち上がり、いつの間にか猿渡先生と生徒会長の立っていた場所にいた。


=危険度レベルSS=

「は?」

オートモードが急に終了し俺は目が覚めた。


「生徒会長である破条さんがおっしゃる通り、我が校はみなさんを歓迎します。この学園で切磋琢磨し、精一杯学校生活を楽しんでください」


それだけ言うと俺に向かって微笑みまたステージの教員席に戻って行った。

俺は訳がわからないまま、その校長席に座った爺さんを見ていた。


レベルSS=災害級レベルだと?




「うぁあああああ!何してくれてんだよ。俺〜!!!」

俺は、入学式がめんどくさいからと自分をオートモードにした事を

家に帰り記録ログを見た時に死ぬほど後悔した。


なんで入学そうそうやばい人達に目をつけられてんの?

なんで殺気返してんの?

バカなの、俺?


ベットの中で奇声をあげ悶えている俺を、

様子を見に来た妹の潤香が、ゴミでも見るような目で見ていた。


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