第2話 神詠学園

「凄い人だね、流石有名な神詠しんえい学園」

「そうですね。日本で一番強い勇者も輩出してますし、指導陣も

 全てレベル100越えの化け物ぞろいと聞いてます。皆、勇者を目指しているんでしょう」


希望を胸に歩いて行く学生達を見ながら、妹の潤香と坂道を歩く。

神詠学園は山の上にある。というより山三つほどの面積を

贅沢に使用した学園都市である。


特戦術科、魔道学問、技術魔工の三つからなり

特戦術科は戦闘に必要な技術、知識を実践で学ぶ冒険者志望が入る学科

魔道学問は魔術に特化したジョブが入れる専門学科

技術魔工は装備、魔導具の研究等サポート的な学科


この三つの学科が3年制〜5年制となり卒業試験を突破したものが

強い冒険者を抱えたい国や企業、クランから指名を受ける。

卒業試験は年に2回。

本来は3年制だが、5年の終わりまでに卒業試験をクリアするか研究成果などが認められない場合、退学となる。教員が指名し自分のクランに入れる事もある。


「でも、潤香も飛び級で入るなんてね。そんなに学校好きなの?」

俺なら絶対やらない。わざわざ頑張って勉強して早く高校に入るなんて。

実は冒険者希望なのだろうか?


「別に兄さんには関係ありません。神詠学園は、中等部卒業レベルの

 知識と技術があればいいらしいので早く実戦になれたかったんです」

俺を軽く睨みながら潤香が答えた。


中等部までは実戦は一応禁止されている。「ダンジョン」も「ディバイド」も16歳にならないと許されない。

だが、一応というのは例外があるからだ。


この世界では10才の選別の儀式が行われる。

そこで『魂具ガング』呼ばれる神器を与えられる。


魂具ガング』とは、世界の創造神カルヴァラが人間に

与えたギフトである。

人間だけでなくエルフや獣人など、人間以外の亜人と呼ばれる人種も

魂具ガング』を使っている。

亜人の場合は『纏具』(ソウグ)と呼ばれているらしい。

 

この『魂具ガング』は魂の器であり、一人につき一つだ。

また武器とは限らず、戦闘に向かない道具が与えられる場合も多い。

例えば、お皿やフライパン、コートやスーツ。スキー板、椅子など戦闘に使えないと言われる物だ。

頑張れば、戦闘でも使えそうではあるけど・・・。


その中で聖剣や聖槍、銃など戦闘向きの『魂具ガング』が与えられた者は

いち早く政府や企業などからスカウトされ、10才からダンジョンや魔物退治が可能となる。ただ彼らも「ディバイド」は16才からと、各国の協定で決まっている。


冒険者は様々な場所で活躍し、人気がある。

ダンジョンに入り伝説の武器を拾った者は、一躍時の人だ。

珍しくない『魂具ガング』を持つ子供は冒険者に憧れ、早く高校生になり戦いをしたがるのだ。

特に強い『魂具ガング』を持つ人間は…。



「おっはよー」

「おはよう」

後ろから二人の男女がの声。


「おはようございます」

「おはよう」


妹と俺が立ち止まり答える。


朝からハイテンションな女の子が、策士木さくしきまどか

オレンジに近いショートカットの髪の少女。

胸もそれなりに大きく性格も良い為、クラスで人気者だ。


隣の男は岩湖優吾いわこゆうご

身長が小さく太っている。元気すぎるまどかと比べると

大人しいがとても優しい性格。


中学時代からの友人だ。

この場にいない、もう一人の友人と一緒に遊んだり模擬戦をしている。

「ディバイド」やダンジョンに入れない俺たちだが、

学校内で模擬戦は可能であり、仮パーティーを組んでいた。


「二人ともクラスは?」


「俺はCクラス」

「私はBです」


まどかの質問に返す。


「私もC」

「俺もBだよ」

まどかがCクラス、優吾がBか。妥当だな。

各学年クラスはS・A・B・C・D・Eまであり

レベルや『魂具ガング』の能力でクラス分けされている。

===================================================

Sクラス レベル70以上……並の冒険者でも50が一つの壁である中で高校生で

ありながら50を既に超えている選ばれたものだけが入れるクラス。

Aクラス レベル50〜60……Sクラスに入れなかったが優秀な冒険者になること

             を約束されているエリート集団。

Bクラス レベル40〜50……一般的より少し上の冒険者を期待されるクラス。

Cクラス レベル30〜40……神詠高校としては普通レベルのクラス。

Dクラス レベル20〜30……一般的な冒険者の高校レベル。

Eクラス レベル20〜30……レベルはDと同じだが、成績で下の者のクラス

====================================================



「太郎はわかるけど、私までCとか萎える」


「入学初日から萎える女子高生とか夢がない」


「モテもしない男に言われてもなんともないしぃ!」


「まどか、太郎に言いすぎだよ」

優吾がまどかに注意していた。


「えー、だって本当の事だし。私はレベル36だけど

 太郎はねぇ〜?」

前を歩く俺に向かって意地悪を言う。


「はいはい、俺は確かにレベル10ですよ」


そう、なら俺は神詠学園には入れない。レベルが足りないからだ。神詠学園は最低20はないと試験すら受けられない。

普通の高校生は高くても、レベル15なのだ。

一般的な大人の初級冒険者はレベル30。それだけここに入る学生は

レベルが高い。


だが俺には『魂具ガング』がある。

この『魂具』のおかげで特例として入学する事が出来た。


「ん?」

ゴー!!

大きな音がし、後ろから高級車が生徒の列に割り込む。


「うわっ!!なんなのあれ、普通もっとゆっくり走るでしょ」


俺たちは慌てて横によけた。まぁ道路歩いてたからな。

「違いますよ兄さん。この時間はスクールゾーンで車は禁止なんです」

潤香が標識を指さした。


「お前はエスパーか?」

口に出してなかったのに。


「なんとなくです」


「そうですか」

俺たちは車が学校内へ走り去るを見ながら、歩き始めた。


「絶対偉い奴が乗ってるよ、あれ。ムカつく」


「まぁ危ないけど他の人達も避けてたから許してあげなよ」


「絶対ヤダ」


後ろにいる優吾とまどかの話を聞きながら校門をくぐる


7階建ての巨大な建築物が見える。

さて入学式に行こうか。



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