自分クエスト
白ウサギ
第1話 僕が生まれた日
「太郎、朝ご飯よ〜」
一階から僕を呼ぶ声がする。
「目が覚めたら異世界でした」
母さんの声が響く前に僕は起きていた。
「うん、誰だよ、この子供」
僕は部屋にある姿見を見ていた。
「確か僕は会社から帰って、そのまま寝て……そうだ確か急に胸が」
そう、夜中に胸が苦しくなってその後の記憶がない。
「でもこの子供の名前は知っている。僕は
新東京、神狩町出身。現在
姉
自分の手を見ながら記憶を確認する。
「じゃぁこの記憶は?」
思わず天井を仰ぎみて唸っていると
「あなたに新しい人生を……」
そう優しい声が聞こえた。
「!?」
僕はとっさに周りを見渡すが誰もいない。
5分ほど鏡の前で考える。
そして…。
「まっ、そのうち思い出すか!」
考えるのをやめて、ご飯を食べに戻った。
それから6年後……
俺は16歳にになった。
「おはよう、父さんは?」
起きてくると母さんと妹がいた。
「夢久なら急に仕事が入ったからもう出たわよ」
「遅いです。兄さんの分まで食べてしまいますよ?」
席に着くと隣で先に食べていた潤香が言う。
「ごめん、ちょっと寝坊、いただきます」
俺がご飯を食べ始めると潤香がテレビのチャンネルを変える。
「あなたの挑戦をいつでも待つ。それが私の運命」
騎士の格好をした銀髪の女性が剣を振りかざす姿が映る。
「また、『ディバイド』の宣伝ですよ、そんなに人を殺したいんでしょうか?」
「自分が強い事を世間にアピールすれば有名になれるし、強いパーティーや
クランのスカウトも来るから」
妹が軽蔑の眼差しを向けるのをCMを俺も冷めた目で見ていた。
『ディバイド』
それは強者達が己の力を試し、富と名声を得る総合闘技。
世界中の人々に参加の権利があり、登録することで
ブレスレットを与えられる。このブレスレットが
『ディバイド』であり、特殊な亜空間を作り出し
プレイヤー同士、戦うことが許されている。
冒険者(一般的にそう呼ばれる)は人同士の争いは
禁止されてる。だがレベルの高い冒険者を生み出す為に
各国政府が亜空間の魔道具を量産し、争わせる場所とシステムを
作り上げた。500年ほど前らしい。
各国政府は自国の冒険者を勇者レベル(推定300Lv)に到達させる事を
目標に、名のある冒険者には賞金、名誉、様々な権利を与えている。
本来、世界中に生息する魔獣やダンジョンを攻略し、
魔物の
それがいつしかレベルを上げ自らの強さを見せつけ、富と名声
権力を求める物になってしまった。
また、『ディバイド』には、自分の所有するあらゆる物を賭ける事が
出来る。そう、人としての権利もだ。
政府公認で、奴隷を得る事が出来る。
勿論脅迫や、非合法の場合もある。それを防止する為に
ランダムに選ばれた第三者のプレイヤーが、立会人として亜空間に召喚される。
もし脅迫や、スキルによる洗脳等あればブレスレットが反応する。
その場合は試合は開始されない。もし、開始されてしまっても勝敗がついた
のち無効となり、加害者は最悪死刑になる。大抵は違反者と
して奴隷になるが。まぁ、ブレスレットは金級クラスのアイテム
である。その効果には精神異常を探知するだけでなく、
レベル補正、健康状態、時計などの機能もある。
一つ30万でこれはアイテムランクの上位「金級」としては破格の
値段だ。そうまでして政府は強い冒険者を求めるのは、自国の
権利や、交渉を有利に進めるためだろう。勿論自衛力もあるが。
「兄さんは『ディバイド』をやらないんですか?」
CMがニュースに変わった所で、潤香が僕に聞いてきた。
「一応学校限定で『ディバイド』が貸し与えられるらしいから
今買わなくても良い。それに、いくら亜空間内の戦闘は元の
世界に戻ると治るって聞いても痛いものは痛いし……」
「そうですね。腕を切られたり魔法で焼かれた事がトラウマになり、
冒険者を辞める人も少なくないようですし」
「うん。それに『ディバイド』で連勝した冒険者が
実際のダンジョンでは、調子に乗って簡単なトラップや魔物に
殺された例も多いし。」
俺と潤香はニュースでダンジョンに軽装備で入り
6人パーティーのうち、二人しか帰って来なかったと言う
ニュースを見っていた。どうやら彼らは『ディバイド』では
それなりに優秀な人達だったらしい。
(いくら死ぬのは自己責任だと言っても周りは止めなかったのかね?)
ルールありきの遊びではない。ダンジョンは殺し合いの戦場である。
彼らはそれを軽く考えすぎていたようだ。
残った二人も片腕がなかったり、足が折れていたり朝から見るには
少し嫌な映像だ。
二人の顔はまるで死んだように青白かった。
「辛気臭い話はやめて、早く準備なさい。今日は入学式でしょ!」
オレ達のやり取りを黙って聞いていた母さん急かした。
「そうだった。早く食べよう」
「私は間に合います。兄さん早く食べてください。ちゃんと噛むように」
なかなか無茶を言う妹だった。
俺と妹は支度をし、玄関を出る。
「私も後で行くから、ちゃんとするのよ!」
母さんが玄関まで出てきて見送ってくれた。
「「行ってきます」」
こうして新たな日常へと踏み出した。
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