那
「三人目の従者の名前は……、“那由多”」
「……なゆ?」
「那由多、だ。……いいか、な・ゆ・た」
「……“なゆた”?」
「あぁ、そうだ。三人の中では一番、穏やかでマイペースな性格らしい。その点では、桃彦に一番近いタイプかもしれんな」
たしかに。名前からして弱そうなところも含めて。
「前回、おじじの時の那由多は……、鴉だ」
え……、カラス!?
全然穏やかそうじゃない。むしろ怖いんですけど。
案の定、桃彦も顔を歪めている。カラスどころか、鳩やスズメでさえ恐れている男なのだ。自分における桃だと思えば、なるほど同情に値する。
「その鋭いくちばしで、鬼の目玉を両方ともくり抜いてくれたらしい。おかげで、トドメを刺すのは楽勝だったそうだ」
な、那由多……。
穏やかでマイペースなあなたが、どうしてそんな……。
「ちなみに、吾作さんの時はトンビらしいから、那由多には鳥系の縁があるのかもしれん。さかのぼれば、それこそキジの時があったのかもな」
目玉のくり抜きがあまりにも強烈すぎて、他が頭に入ってこない。
が、ともかくこれで、過去二回のパーティーは掴めた。
前回のおじじの時は、柴犬と山猫とカラス。
前々回の吾作さんの時は、野良犬と猪とトンビ。
たしかに、若干の桃太郎っぽさは感じられる。
「――持ってきたよ、両方とも」
昌おじちゃんの両手には、それぞれ木刀が握られている。
「それと、あと二十分くらいでお迎えが来るって」
縁起でもない言い回しだが、どうやら病院の車らしい。
意外にも元気で安心したが、銀じいちゃんはまた病室暮らしに戻されてしまう。そう思うと、桃子の胸は苦しくなる。おそらく桃彦も同じだろう。
「あぁ。分かった」
銀じいちゃんは桃彦と目を合わせた。
「今から少しだけ、動いてもらっても大丈夫か?」
「うん、もちろん」
やけにカッコよさげに、桃彦が鼻の穴からティッシュを抜いた。
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