「二人目の従者の名前は……、“阿僧祇”」


「……“あそうぎ”?」

「あぁ、そうだ。“あそうぎ”だ」

 別にダジャレを放ったわけでもなさそうだが、なぜか銀じいちゃんは照れている。

「恒河沙とは違って、こちらはずいぶんとクールな性格らしい。頭も良くて、いつも冷静かつ堅実に動いてくれたそうだ……」

 頼もしいかもしれないが、桃子には苦手なタイプかもしれない。

「楽天的なおじじからすると、やや否定的、悲観的すぎる感はあったそうだが……、まぁ、一人くらいは、そんな存在がいないとな」

「で、おじじの時のあそうぎさんは、何に入ってたの?」

「おぉ、まだ言ってなかったか……」


「おじじの時の阿僧祇は……、山猫だ」


「……って、ピンと来ないんだけど。猫? もうちょい獣寄り?」

「俺には分からん。おじじはヤマネコと言い続けていたが、図鑑で見るヤマネコとはどうやら違う。おそらく、ただの野生の猫だろうな。まぁ、山の中で見つけたらしいから、そう呼んでも罰は当たらんだろ」

 たしかに、ふつうに猫と呼ぶよりは、山猫のほうが強そうだ。

 実際に強かったのか訊いてみたいが、恒河沙の例もある。銀じいちゃんに任せることにしよう。

「ちなみに、吾作さんの時の阿僧祇は、猪だ。やっぱり山の中で出くわしたらしいから、そういう巡り合わせなのかもしれんな」

 クールな猪!?

 がむしゃらに突進していくのが猪だろう。せっかくの長所を封じてしまっている気がする。

「猪の時も、山猫の時も、阿僧祇がうまく鬼を撹乱してくれたおかげで、無事に退治できたそうだ」

 よかった!

 さすがは阿僧祇、頼りになるね。


 この感じなら、三人目にも期待できそうだ。

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