透過する希い

 たとえば、透明な硝子。また或いは、冬の夜。

 君は、そんなふうだった。ただそこにいて、それだけで充分だった。

 今でも憶えている。蝉の声、揺れる葉緑、雨上がり。

 軽い調子で、君は僕の五歩先を歩いた。

 不思議なことに、君の不在を悲しいと思わない。

 冬の夜や透明な硝子を見るから。

 もう二度と会えないね、僕らはきっと、透明だった。

 こんな恋文みたいなつまらない文章は、ちっとも僕らにそぐわないけれど、でもね、いまの僕には、こんなふうにしか、君を表現出来ない。

 さようなら。願わくは、君に空があらんことを。


 嗚呼。

 大人になれぬから、死んで了うのでございます。

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