第455話 温泉卓球バトル
……なんでこんな朝っぱらから卓球やらなあかんねん。9時半だよ?青森だよ?旅行だよ?普通は観光行くよね?弘前城行きたいんだけど。十二湖行きたいんだけど。
それにどいつもこいつも目が血走ってんじゃん。温泉卓球の娯楽感なんか全くないよね。ガチのアスリートやん。唯一美波がドヤってる所がいつもの光景に見えるけど他の5人は殺意の波動纏ってんじゃん。もう終わりだなこのクラン。
「さて、それじゃ初めましょうか。ペアに分かれてそれぞれ作戦は立てたわね?」
みんなが無言で頷く。
じゃんけんでペア決めをして3組のダブルス戦を行うらしい。
1組目は楓さんとみくペア。天才と赤点娘というなんとも凸凹コンビ感が溢れている面白ペアだ。
ーーお前も結構しつこいよね?まだ赤点娘言うか。
2組目はノートゥングとアリスペア。クソニートとセンスナシ子というダメダメコンビ感が溢れているダメダメペアだ。
ーーお前それノートゥングにブン殴られるよ?
3組目は美波と牡丹ペア。変態クンカーとヤンデレクイーンという犯罪コンビ感が溢れている絶望ペアだ。
ーー自称正妻のぶりっ子は窃盗もしてるから警察に突き出した方が良くない?
『無論。ククク、妾とペアを組まなかった事が貴様らの運の尽きだな。アリス、勝ちに行くぞ。』
「はい!!ノートゥングと一緒なら負ける気がしません!!それにちび助もいますし!!ね、ちび助!!」
「ぴっ!!」
ちび助はお助けキャラみたいなもんか。でも球が当たったらダメージ受けそうだから始まったら俺の頭の上に乗せて置こう。でも確かにノートゥングがいたら負けなそうな気するわ。
「ちょいちょい。ウチと楓チャンのゴールデンペアには勝てへんで!!ね、楓チャン!!」
「ええ。悪いけど私たちの圧勝よ。」
まあ、運動神経は2人とも抜群だからな。それに楓さんが負ける姿は想像できん。でも赤点娘がいるからドジやって楓さんの足引っ張りそうだなぁ。
ーーお前、みくちゃんになんか恨みでもあんの?
「ふふふ、残念ですが私たちの勝ち以外に結末はありません。」
「フッ、そうね。」
牡丹ほど敗北が想像出来ないキャラもいないよな。まだ無敗じゃない?あー、でもヤンデレモードじゃなくなってるからわからんな。
つーかなんで美波はドヤってんの?
ーーさあ?頭おかしいんじゃない?
「それじゃ始める前にルール説明よ。タロウさんは審判として点数カウントなどをやってもらうとして、肝心のルールは私たちのオリジナルにしましょう。10点先取の1セットマッチ。サーブ権は点を入れた方が永続的に持つものとする。ツーバウントはアウト。ラリーはペアのどちらが返してもいいものとする。こんなトコかなって思うけどどうかしら?」
「それでええんちゃう?卓球のルールはよくわからんし。」
「私もそれで良いかと思います。」
『ああ、それで良い。』
「そうですね。」
「フッ、そうですね。」
もうなんでもいいから早く終わらせて観光行きてぇ。
「次に試合順よ。さっきクジで決めた通り第1試合は私たちと美波ちゃん、牡丹ちゃんのペア。その勝者とノートゥング、アリスちゃんのペア。そこでノートゥングたちが勝ったら第1試合の敗者とって感じね。2連勝するまでは試合は終わらない形式よ。」
最悪じゃん。ずっと勝ち負けをやり続けたら1日ががりになる。なんで青森まで来て1日を卓球で潰さなあかんの。
「ではそろそろ始めるわ。行くわよ、みくちゃん。」
「しゃー!!やったるで!!」
ーーストレッチを済ませ、やる気満々の楓とみく。髪も縛り超本気な様子が伺える。
「参りましょうか美波さん。」
「フッ、そうね。」
ーーこちらも髪をアップにし、やる気満々のように見える2人。だが実際は慎太郎がアップにしているからお揃いにしたいだけという浅ましさ全開であった。
てかなんで美波はさっきからずっとドヤってんの?まさかまた俺のタンクトップ盗んだんじゃないだろうな。いや…さっきまで俺が着てたボロボロに破れた服をジップロックしたんじゃないだろうな。
ーー慎太郎は着替えも済ませ、顔も洗ってるからもうえろっちくなくなってます。
「俺になんもメリットないけど。とりあえず始めますよ。サーブ権はじゃんけんで決めましょう。代表者でじゃんけんして下さい。」
「みくちゃんに任せるわ。頼んだわよ。」
「りょーかい!!」
「フッ、牡丹ちゃん、任せたわ。」
「わかりました。」
代表者2名が俺の前に集まる。
「そんじゃ最初はグーでね。」
「おっけ。」
「はい。」
ーー2人からなんともいえない浅ましいオーラが溢れ出す。ホントに困った子たちだよ。ま、参加できるなら私も参加したいけど。
「残念やけど牡丹チャンたちはここで脱落や。ウチはタロちゃんに抱かれながら寝るけど、牡丹チャンは涙を流しながら枕を抱いて寝るんやで。」
「その言葉そっくりそのままお返し致します。私はタロウさんに抱かれながら天国へと参りますので。」
「いや、抱かないからな。そもそも俺の身体は女だし。」
「さーて。サーブ権頂いてサクっと1勝目頂くで。」
「ふふふ、みくちゃん、ここは夢の中ではありませんのでそんな夢のような話は起こらないですよ。」
「……。」
「……。」
「ケンカはやめような。こんなくだらないことでクランの士気が下がるのって最悪だからな。」
ーーこのクランはダメだね。うん。もう修復は難しいわ。
「さい!しょは!!」
「グー!!」
「みくはともかく、そのノリさ、牡丹のキャラじゃないよ。」
「じゃん!!」
「けん!!」
「「ぽい!!!」」
ーーパーとグー。
うん、牡丹ちゃんの勝ちだね。
「よしっ!!!」
「ぐはぁ…!!!」
牡丹が腹のあたりで力強いガッツポーズをしている。可愛いけどこんなキャラじゃなかったよね。みくはキャラ通り、負けて四つん這いになってる。赤点取った時もあんな感じなんだろうな。うんうん。
ーーお前みくちゃん嫌いだろ。
「うぅ…楓チャン…ごめん…」
「大丈夫よ。サーブ権がなくたって私たちならやれるわ。顔を上げなさい、みくちゃん。」
「楓チャン……うん!!」
流石は楓さんだな。みくの気力を戻しやがった。あの雰囲気と声だけで安心感があるもんな。流石は真のリーダー。俺とは違うなぁ。
ーーアンタだって結構リーダー適正あると思うよ。
「美波さん、勝ちました。」
「フッ、流石は私の弟子ね。サーブ権が無くても勝ったけど、これでもっと楽になったわ。」
だからなんで美波はさっきからドヤってんの?意味わかんねーんだけど。
ーーとうとう頭イカレたんじゃない?どうでもいいよそんなの。ほっとこ。
「そんじゃ始めます。試合開始ね。」
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