第449話 オークですやん

「王…?王って王様の事?」


『はい。』


「なんか妙じゃない?さっきまでのクラウソラスの話の通りなら『崩核』ってのがあれば死者を蘇らせる事が出来んだろ?さっさと復活させればいいじゃん。」


『だよね。アタシもそう思う。アタシらを”聖符”に入れたりオレヒスやったりする意味が全然わかんない。』



ブルドガングが俺の意見に同意を示す。当然だ。オルガニの目的が王様の復活ならいつでも復活させられる。こんな回りくどい事をする必要性が全く無い。



『その”王”の復活には非常に多くの代償が必要なのです。そしてその過程は『聖書』に記されている。彼らは『聖書』に書かれている通りに行動しなくてはならないのです。』


「予言の書じゃんそれ。なんか昔にそんなテレビ番組やってたなぁ。」


『で?その王とやらはどうすれば生き返る?妾たちの役割はなんなのだ?』


『それは言えません。私にそれを話す許可は得られていない。』



クラウソラスの言葉にノートゥングが目を細める。大丈夫かな。コイツ暴れたりしないだろうな。暴れられたら俺では止められん。ブルドガングになんとかしてもらわないと。



『…だろうな。そのような確信めいたものを簡単に答えるなどとは思ってはおらん。』


「え?暴れないの?」


『なんで妾が暴れねばはらん?』


「いや…クラウソラスが答えないからムカついて暴れるのかなー…って。」


『此奴の事情はわかっておる。言いたくても言えないもどかしさは良くわかる。それに妾がそのような傍若無人な振る舞いをするわけなかろう。』



そうかなぁ…お前っていつも傍若無人じゃん。いや…よく考えたらさ…コイツがワガママ放題するのって他人は置いといて俺にだけじゃね?美波とか相手にはやりたい放題してなくね?もしかして俺ってナメられてる?


ーーうん、ナメられてるね。ま、ノートゥングにおいてはそれだけじゃないけど。



『理解して下さってありがとうございます。ノートゥング、貴女の問いに対して満足な回答が出来たでしょうか?』


『ある程度はな。お前が”神”だという事を完全には受け入れ難いがそれが事実なら仕方あるまい。』


「てか色々と衝撃の事実じゃない?みんなにも話さなきゃいけないような内容だろコレ。牡丹は知ってんの?その事について。」


『いえ、ボタンは知りません。何も聞かれなかったもので。』



…何も聞かれなかったって。聞かれなきゃ何も答えないのかよ。少なくともクラウソラスは牡丹のアルティメットなんだろ。信頼も築いて来たはずだ。それなのにそんな大事な話をしないわけ?契約だかなんだかがあるから?ノートゥングたちみたいに記憶が無いから話さないとは訳が違う情報量だろ。ちょっとクラウソラスの事がわかんなくなったな。100%俺らに協力してくれてるとは思えない。言えるけどあえて俺らに話さない事もあるんじゃないだろうか。



『とりあえずこの話題は終わりにしない?これを話すならカエデたちもいないとダメでしょ?それに今回はタロウを男に戻すのが目的な訳だし。』


『そうだな。話している間に敵も移動して来ておるみたいだしな。』


「えっ、そうなの?」


『ああ。変な氣を放っておるモノが3つ、此方へ向かって来ておる。』



変な氣って…それってちょっと強い奴なんじゃないですかねぇ…こっちは戦力ったら俺とノートゥングだけだぞ。武器があればブルドガングもいけるだろうが”憑依”相当なら敵のレベルによっちゃ美味くない。

いや…ちょっと待てよ…気にしなかったけどここってスキル使えんのか…?使えるなら俺の愛しのバルムンクさん呼べるわけだよね…?なんか使えない匂いがプンプンするんだけど。それは置いといてバルムンクと全然会ってないなぁ。俺の癒しなんだよなぁ。そもそも俺のアルティメットであるバルムンクよりもノートゥングの方が絡み多いって色々とおかしくね。いや、ノートゥングの事はぶっちゃけ好きだよ?可愛いし。でもさ、やっぱりバルムンクとだって会いたいよなぁ。


ーーお前って浮気者だよね。なんかイライラするわ。



『そろそろここへたどり着くだろう。タロウ、どうする?妾が葬るか?』


『それでいいんじゃない?タロウに行かせてなんかあったら困るし。』


『私もそれが宜しいかと思います。』



なんだろう。急にクラウソラスが胡散臭く見えて来たな。オルガニのスパイのように思えてしまう。いやダメだ。俺の勝手な考えで決めつけちゃいかんよな。仲間をそんな目でみちゃいかんぞ。



「そんじゃノートゥングに任せていい?」


『ああ。貴様らは下がっておれ。』



ノートゥングに言われるまま俺たちは後方へと陣取る。しばしの間を置いてT字路になっている通路の先から嫌な気配が近づいている。なんとも言えないイヤーな感じだぞコレ。こういう時ってロクな事がないんだよな。


そう思ってT字路を見ていると足音が聞こえ始める。距離が近い。一歩一歩に重量感がある。デカい系の奴だ。それが3体って事はノートゥング1人じゃマズイかもしれん。この通路はそんなに広くはない。デカいの3体が塞いでしまったらノートゥングが機動力を駆使して戦う事が出来ない。それはマイナスなんじゃないだろうか。


ーーそうかな?ノートゥングって機動力使って戦うタイプだっけ?火力でガンガン押し切るスタイルだよね?機動力封じられても大丈夫じゃない?



T字路の先に影が見える。そこからヌッと大きなモノが現れる。俺はソレを見た事がある。よく漫画で出て来るやつだ。緑色っぽい肌の色。人間より一回り大きい体躯、醜悪な容姿、そう、オークだ。



「オークですやん。」

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