第448話 神の存在
ーークラウソラスの言葉にノートゥングは腕を組み、少し頭を左後ろに傾け、鋭い目で見つめる。相手を探るようなそんな目だ。その2人の空気を察してか、ふざけていた慎太郎とブルドガングが目を見合わせ喋るのを止める。
『私は”神”と呼ばれる存在。光と剣を司る神です。』
「えっ、なに?急になんの『黙っていろ。』」
ーークラウソラスの言葉に口を挟む慎太郎をノートゥングが黙らせる。慎太郎は空気を読んでお口チャックの様相を見せる。
『私たちが生まれたのは遥か昔、こことは違う遠い世界。けれどもこの世界や他の世界に干渉する事が出来る。そんな存在でした。』
『『存在でした』って何よ?今は違うみたいじゃない。』
『今は違います。私たち”神”はその権利を剥奪された。”オルガニ”によって。』
ノートゥングとブルドガングの表情が険しくなる。ずっと気になっていた事だ。その”オルガニ”ってのはなんなんだ。このゲームの主催者だってのはわかる。だがそれだけだ。実態が何も明らかになっていない。”リッター”だか”ヴェヒター”だか言う奴らの事は何となくわかる。でも、”オルガニ”ってのはまだ何もわかっていない。とうとうそれを知る時が来たのかもしれないな。
「その”オルガニ”ってのは何なんだ?お前らはわかってるみたいだが俺たちにはさっぱりだ。知ってる事があれば教えてくれ。」
ーー慎太郎の問いに3人は間を置く。伏し目がちに考えているようだ。そしていち早くノートゥングが慎太郎に答える。
『…教えてやりたいのは山々なのだが妾にもよくわからんのだ。』
「わからない…?いや、それはないだろ。仕組みはわからないが、スキルカードにお前らは封じられてるわけだろ?それを俺たちプレイヤーは使う。でもお前らは明らかに生きてる。プログラムなんかじゃない。て事は何らかの方法で囚われてるんじゃないのか?」
『これは妾の仮説に過ぎん。それをしかと念頭に置いて聞け。』
「わかった。」
『妾たちは記憶の操作をされている。断片的に覚えていたり思い出す事はあるが、大半の事は覚えていない。きっかけによって記憶を取り戻すが今はわからない事だらけだ。自分の生い立ちや今まで何をして来たのかもな。』
「……マジか。剣王ってのも何で呼ばれてるかわかんないわけ?」
『そうだな。ただ漠然と剣王と呼ばれていたという事しか記憶に無い。』
「ブルドガングも同じなわけ?」
『…だね。ノートゥングが言ってるのと完璧同じ。』
じゃあノートゥングもブルドガングも実際は自分が何なのかわからないってことかよ。俺らと同じ人間じゃないかもしれないのか。いやま、こんなに可愛いんだから別に何でもいいんだけどなんか辛いわな。
『ただ…妾が”オルガニ”の連中とした契約は覚えている。暗い…暗い闇のような所に妾はいた。そこに奴等は現れた。”聖符”に入れば妾に今一度剣を握らせると。確か…名前はアインス…』
「アインスだって!?」
『ああ。確か…そう名乗っていた。』
『あ!!アタシもそうだった!!アインスよ、アインス!!』
「2人は最近アインスと接触したって事?」
『いやー?相当昔なんじゃない?”聖符”に入れられてからも気が遠くなるぐらい長い時間を待たされたような気がするから。』
どう言うことだ?仮面を外したアインスの見た目はどう見たって二十代だった。ノートゥングたちに接触したのが遥か昔だってんなら辻褄が合わない。アインスってのは世襲制の名なのか?
『ノートゥングの言う通りです。貴女たちは記憶の操作をされています。”オルガニ”によって。貴方たちは記憶を奪われた。そして私たち”神”も奪われた。神々の創世を司る『崩核』を。』
「何じゃそれは?」
『『崩核』は全ての創世が可能な神々の秘宝です。あらゆるものを創り出す事も出来ます。例えば死者を蘇らせる事も。』
「え、なにそれ。やばくない?自分たちの好きなルールとかも作れるわけだよね?」
『はい。当然そのような事も可能です。例えばタロウが『崩核』を手に入れ、私を意のままに操り、『ウヘヘ、このピンク髪堪んねぇな。種付けしてやんぜ』と言いながら孕ませる事すら容易い事となります。』
「後半部分いらなくない!?操るだけでよかったよね!?俺の事なんだと思ってんの!?俺との親愛度が低い理由わかったよ!?」
『冗談は置いて、その話が確かなら笑えんぞ。事実、この俺'sヒストリーにおいてクラウソラスが言った『崩核』とやらの用途は合致している。妾たちの記憶の操作や、俺'sヒストリーのスキルの作成等をみても納得する内容だ。』
『てかさ、そのルールならアタシら消す事も出来るよね?意にそぐわない奴はみーんな殺す、ってなったらどうにもならないじゃん。もはや力とかの問題じゃないでしょそれ。』
マジでそうだぞ。ブルドガングが言う通りだ。存在そのものを消されちまう事だったあるんだ。そうなったらどうしようもない。強さなんて何の役にも立たなくなる。
『いえ。それは不可能です。』
俺たちが深刻な雰囲気を醸し出しているとクラウソラスが完全否定する。
『”神”でないモノが『崩核』を使うには”贄”が必要になります。』
「また謎のワードが出て来た。」
『”贄”とはその言葉の通りの意味を成します。つまり代償ですね。その望みの大きさにより”贄”の必要量が変わります。』
『命、ということか?』
『それだけではありません。全ての命は等しく平等という訳ではありません。容姿や技量によって格が付きます。実現不可能な望み程上物の”贄”が必要となるのです。』
「つまりがその『崩核』盗られたからクラウソラスは逆らえないって事?」
『そうなります。』
「そもそもさ、”オルガニ”の目的って何?俺らの醜態みて喜んでるだけってわけじゃないだろ?なんか明確な理由ってのがあるはずだ。大体からして”オルガニ”ってなんなの?秘密結社的なやつか?」
『彼らはこの世界を神話の時代より統治して来たモノです。』
「神話の時代…?紀元前からって事?ちょっとわけがわからんぞ。こういっちゃなんだが神話ってのは創作だろ?昔話的なやつだ。」
『各地に伝わる神話は事実を散りばめたモノです。本当の真実を隠す為のモノ。隠された真実は実話となる。彼らが所有している『聖書』には真実が記されている。神話、そして各地に点在する昔話は真実が隠されています。』
なんか急にスケールがデカイ話になって来たんだけど。そんじゃ何か?鬼とか龍とかもいんの?それはないだろ。一応聞いてみる?聞いちゃう?
「鬼とか龍もいんの?」
俺はクラウソラスに冗談半分で聞いてみる。
『おります。』
「いるんだ!?」
え、ホントに言ってんのこの桃髪女神。それって色んな意味でやばくない?それなら霊だってガチでいんじゃね?杉沢村もあんじゃね?どうしよう、牡丹とめっちゃ話したい。このワクワク共有したい。
『そして彼ら”オルガニ”の目的は遥か昔に死んだ彼らの『王』を蘇らせる事です。』
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