第447話 ダンジョン再び

階段を降りた俺たち。そこにあったのは部屋の中心が青い光に包まれた狭い場所だった。それ以外には何も無い。扉も階段も何も無い。俺たちが降りて来た階段も消えている。奇妙な場所だ。

唯一何かが起こりそうな青い光に近づいてみようとした時、人影が2つ現れる。俺は少し身構えたが何のことはない。ブルドガングとクラウソラスだ。



『あれ?ここって…?』


「おっす。」


『タロウじゃん。おっす!』



ブルドガングはいつも通り好意的だ。親愛度こそ高くは無いが相性は結構良いと思う。


ーーアホの子だからじゃない?だってアンタが女なのに突っ込んで来ないじゃん。



「クラウソラスもおっす。」


『……何故女の子の姿をしているのですか?』



ーーこれが普通の反応でしょ。



『えっ?あ、ホントだ。タロウ、女になってんじゃん。』


「え!?知らなかったの!?それなのにブルドガングは普通の感じだったわけ!?」



ダメじゃん。ブルドガングって俺に関心無いだけじゃん。そうだよなぁ。こんな美少女が俺に関心あるわけないよなぁ。楓さんたちがおかしいだけだよなぁ。いや…やっぱさ、今って生死をかけた戦いをやってるから吊り橋効果的なアレでホレてるだけじゃね。オレヒスクリアしたら目が覚めてみんないなくなんじゃねーの。牡丹以外。根拠は無いけど牡丹は絶対いなくならないって言い切れる。何でだろう。


ーーもはや洗脳されてるね。



『前回の時、此奴はウンゲテュームとやらに黒い霧のようなものを受けただろう?その呪いの効果がコレという訳だ。』



ノートゥングが俺に代わって2人に説明する。それを聞いたクラウソラスは神妙な面持ちになるが、ブルドガングは手で口を抑えて笑いを堪えている。



『…厄介ですね。その呪いは当分解けそうにありませんよ。』


「えっ!?そうなの!?」



俺の激しい突っ込みにクラウソラスは無言で頷く。て事はほっといちゃダメなやつか。ノートゥングの言う通りダンジョンに来て正解だったんだな。



『だから呪いを解く為にここへまた来たのだ。貴様らも手を貸せ。』



やっぱりコイツ優しいなぁ。おっちゃんそんな優しくされたらホレてまうで。


ーーチョロいなぁ。



『わかりました。タロウの姿がそのままでは様々な問題を引き起こす、早急に解呪せねばなりませんね。』


『ふっふっふ、敵はアタシに任せなさいよ。アタシがバシバシ倒してあげるわ!』



なんかブルドガングがやたらドヤってるけどなんかあったのか?



「ゴキゲンだけどなんかあったのか?」


『この前のイベントでアタシはパワーアップしたのよ!!』


「そうなの?あんま変わった様子ないけど。」


『戦闘が始まればわかるわよ。見てなさい。』



そんだけドヤってるならよっぽど強くなったのか。楓さん何も言わなかったもんな。終始目が怖くて息が荒いだけだったから。



『阿呆。』


『え?』



ノートゥングがゴキゲンのブルドガングに対して蔑んだような哀れんだような目を向ける。



『ダンジョンではタロウとの親愛度によって妾たちの力が変化すると言われたばかりであろう。もう忘れたのか?』


『あ…そうだった…』


『お前がどれだけ強くなったかは知らんが、お前とタロウの親愛度は”憑依”程度であろう。それではたかが知れている。』


『そうだよね…誰かさんみたいに300%以上なら問題ないけど。』



ーーブルドガングがニヤニヤしながらノートゥングを見る。その視線にノートゥングは苦虫を噛み潰したような顔をしながら恨めしそうな目で睨む。小声でしゃべっている為慎太郎にはその声が聞こえない。



『おら!!さっさと行くぞ!!全員揃ったから階段が現れておる!!さっさと歩け!!』



ーーノートゥングは恥ずかしさを誤魔化す為大声で威張り散らす。それをブルドガングはニヤニヤと、クラウソラスはニコニコとして見ているが、慎太郎は『何でコイツは怒ってるんだ?』と、的外れな事を思っている鈍い男なのであった。



********************



「そんで地下2階に来たわけだが……なんも変わらんな。」



階段を降りると前と同じダンジョンが広がっている。地下1階となんら変わらない造りと広さ。まぁ、ゲームでもこんな感じだけどつまらないよね。もっとワクワク、ドキドキが欲しいよね。



『だね。なんかつまんないなぁ。もっとこうさ、ワクワク感が欲しくない?』


「おっ!ブルドガングもそう思う?」


『タロウも?』



ーー慎太郎とブルドガングがニヤニヤとしている。同志を見つけた事により嬉しいのだろう。コイツらの知能指数はホント同じだよね。



『フフフ、仲が宜しいのですね。』



ーーアホの子2人を見ながらクラウソラスは微笑ましく眺めている。



『阿呆なだけだろう。』


『そこが良いのです。あの楽しげな表情を見ていると私は幸せな気持ちになります。人間の良さが溢れている、そう思うのです。』


『聞いて良いか?』


『はい。』


『クラウソラス、貴様は本当に神なのか?正直言って、妾には神などという存在の怪しいモノがこの世にいるとは思えん。だからこそ神と称する貴様に問いたい。』



ーーノートゥングが目を細めてクラウソラスに問う。その目を受け、クラウソラスは少しの間瞼を閉じる。そして目を開くと、ノートゥングの問いに答える始める。



『私は神です。”今の私に許された範囲”で少し話をしましょうか。』

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