第441話 Another 2

私たちの前に現れた敵プレイヤーたち。その中の1人はトッププレイヤーである”闘神”序列第4位、坂本海斗らしい。纏っている魔力の大きさから考えても”それなり”にやる事は間違いない。



「”闘神”って7人いるんだよね?それの第4位って事はちょうど真ん中か。結構強いのかな?」


「そうでもないんじゃないかな。”闘神”内の序列は実力で決まるわけじゃなくて、対象イベントでの戦功が選出要項になってるの。簡単に言えば敵をたくさん倒したら”闘神”になれて、序列も上になるってだけだよ。実際”闘神”で強いのは蘇我夢幻、島村牡丹、芹澤楓、橘正宏だけだよ。」



私の問いに美穂は淡々と答える。いつもは優しい美穂だけど敵に対してはちょっと冷たいっていうか冷酷なんだよね。当然それを聞いた当の本人は苛立ちが顔に出ている。



「あ?俺の事バカにしてんのか?」



うん、怒ってるね。目が鋭くなってる。お笑い要素なんて皆無だね。そしてまた美穂がすました顔で坂本を見てるから余計とイライラするんだよね。



「この女…ナメてくれてんな…この前の会合からイラついてんのによ。」


「まあまあ、坂本さん、落ち着いて。あんなイイ女殺したりしないで下さいよ?」


「そうですよ。性奴隷にして調教してやりゃいいんですよ。」



くっだらない。オレヒスで数多くの男たちと戦いを繰り広げて来たけど男ってそればっかりだよね。本当に最低。



「ん…?もう1人の女って…もしかして…水口杏奈じゃね…?」


「あ?…うっわ!ガチのやつじゃん!!俺ライブの最前列で見たから間違いない。完璧水口杏奈だ。」



あー、また気づかれた。めんどくさいなぁ。やっぱ変装しないとダメなやつだよねコレ。



「わ〜!!ライブに来て下さったんですねぇ!!ありがとうございますぅ!!」



とりあえず私は得意の営業スマイルを振りまく。何かあったらとりあえずスマイルだ。もう身体に染み付いてしまってるのが悲しい。



「アンナちゃん、営業スマイルはいらないよ。どうせこの人たちはここで死んじゃうんだから。」


「あ、そっか。」



美穂に言われて私は気づいた。そうだよね、もう死んじゃうなら愛想振りまく必要なんてない。なんか損した気分だ。



「ハァ?さっきからこの女調子に乗りすぎじゃね。」


「…確かにそうですね。」


「こりゃ調教のしがいがありますね。この態度のヤツを屈服させるのってマジそそりますよ。」



また男たちがバカな話をしている。怒っていてもそんなバカな事を言ってられるんだから男ってものは理解出来ない。理解したくもないけど。さっさと終わらせて帰ろう。ドラマの台本覚えなきゃいけないしやる事たくさんなんだから。



「それじゃちゃっちゃとやっちゃおっか。」



私は『神具』グライヒハイトを使おうとする。だけど美穂が私の前に手を出し制止する。



「美穂?」


「アンナちゃんが坂本海斗を倒せば”闘神”の座が入れ替わってアンナちゃんが”闘神”になると思う。そうすると他の”闘神”にアンナちゃんの事がバレちゃう。アンナちゃんは有名だから居場所もバレるし、暗殺されやすくなる。だからアンナちゃんは目立っちゃダメ。アンナちゃんは見ていて。私があの人たちを倒すから。」



こうやって美穂はいつも私の事を考えてくれる。ううん、美穂だけじゃない。凱亜だって幻夜だって私の事を考えてくれる。だから私はこのクランが好き。このクランは私の家族。私の家族を守る為だったらなんだってする。他の人なんてどうだっていい。私は私の周りの人が幸せならそれでいい。



「私が男なら美穂に完璧惚れてるよね。」


「ふふ、ありがとう。」


「それじゃ美穂に任せますか。あの程度の魔力なら5人相手でも美穂に勝てるわけないし。」


「…コイツら、マジでアタマきたわ。」



私たちの物言いが男たちに火をつける。明らかな殺意を私たちへと向けている。美穂もそれを察知し、手にしている槍型のゼーゲンを両手で握り構えを見せる。それと同時に金色のエフェクトが弾け飛び、美穂の身体を覆う。強化系アルティメットだ。アラドヴァルは呼ばないのか。ま、そんな必要も無いけど長引くのは嫌だな。多分3分ぐらいかかる。アラドヴァル呼べば10秒なのに。美穂は無駄が嫌いだからなぁ。

そんな美穂を見て男たちもメインスキルを使い始める。へー、坂本っての以外はみんなSSだ。結構いいの持ってるじゃん。坂本も上空に魔法陣出してるから時空系だし。それに強化系のアルティメットも使ってる。思ったよりもずっと強そうだ。



「強化系かよ。」



男たちの口元が緩む。美穂が強化系アルティメットを発動させた事によりある程度の戦力値を把握したのだろう。でも考え甘いね。強化系アルティメットの力を理解してない。それに美穂の力も。本当に強い奴なら美穂の魔力が感じられるはずだけどね。


男たちは勢いづいて美穂を取り囲む。美穂は四方を囲まれるのを簡単に許した。だってその方が楽だもんね。頭の回らない男たちは勝った気になってるけどさ。相手の獲物見て見なよ。槍使ってんだよ?間合いってわからないのかな。

美穂の手元が動く。すると、坂本を除いた4人の男の首が地面にゴトリと落ちる。



「なっ…!?」


「一つお尋ねしたいのですが、調子に乗っているのはあなたたちじゃないですか?」



美穂を包む金色のオーラが輝きを強め、坂本と対峙する。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る