第439話 第二次バディイベントリザルト

『さァ、リザルトを始めますヨ。』



ツヴァイに促されリザルトが始まる。とりあえず蘇我のクソの事は考えるのやめよう。大丈夫だ。アリスはあんなクソに好意を抱くわけない。助けてもらったから恩義を感じてるだけなんだよ。ちょっと助けられたぐらいで惚れたりなんかしないよな普通。


ーーなんかブーメラン飛んで来てない?



『今回のユウキアリスサマの件は申し訳御座いませんデシタ。エラーの原因はそちらにいるスズメが原因ですガ、何故エリアに転送されたのかはわかりまセン。原因がわからない以上今後はユウキアリスサマの装備として扱われる事となりマス。』


「じゃあちび助も俺'sヒストリーのプレイヤーみたいになっちゃうんですね。ちび助大丈夫かな…」



アリスが不安そうな顔をする。まあ…難しい問題だな。当然オレヒスのイベントに参加するなら危険がついてくる。ちび助の命が危うくなる状況だって起こるかもしれない。しかし考えようによってはいつでも一緒にいられる事になる。俺たちはちび助も含めて仲間であり家族なんだからみんなで助け合い、支え合うのが本来の形なのかもしれない。



「アリス、大丈夫だよ。きっとちび助だって俺たちと一緒にいつでもいたいはずだし、力になりたいって思ってるよ。な、ちび助。」


「ぴっ!!」



ちび助は俺の問いかけに力強く答える。ちび助は人の言葉を理解している。それは俺の勘違いでも親馬鹿的なやつでもない。そんなちび助だからこそ力強く答えたんだろう。



「ふふふっ、ちゃんと私がちび助を守るからね!」



俺も必ずちび助を守るよ。美波の事も、楓さんの事も、アリスの事も、牡丹の事も、みくの事も、必ず守る。俺の命を犠牲にしたって必ずみんなを守ってみせる。



『御納得頂けたようでなによりデス。報酬のスキルアップカードはマイページに入れておきまス。申し訳御座いませんガ、何も無ければこれで終了とさせて頂きマス。それでは御機嫌ヨウ。』




闇に包まれ俺の意識が消えていく。

俺も甘いな。それでもなんか後味悪いからやっぱり言うだけは言っておこう。完全に意識が無くなる前に俺は声を出す。



「…ちょっと待ってくれ。」



俺の声に反応してか意識が消える感覚が止まる。周りにはツヴァイ以外は誰もいない。みんなの転送は終わったようだ。ここには俺とツヴァイしかいない。好都合だ。



『どうしましタ?』


「……。」



俺は言葉を出せずにいる。言うって決めたが納得いかない自分もいる。でもここで言わなきゃなんか後悔するからな。



『…何も無いなら転送しますヨ。』


「…あるよ。」



ツヴァイが俺を見る。仮面越しでも確かな視線を感じる。



「俺はお前が気に入らねぇ。でも…お前が俺の事を助けてくれてる事があるのも事実だ。”闘神”の会合の時だって三間坂から助けてくれたろ?そのちょっと前にあれだけ悪態ついてた俺に対してさ。」


『……。』


「色々とお前を許せない理由はある。でもよ…心の底からお前を嫌いにはなれねぇ。」


『……。』


「この前は…あんな言い方してごめんな。あと…助けてくれてありがとう。葵とサーシャにも酷い事言っちまったから謝っといてくれ。それだけだ。じゃーな。」


『あ…タローー』



ーーツヴァイが声をかける前に慎太郎が転送される。








「うわぁ…ニヤニヤして顔赤くしてる…キモ…」



ーー葵がツヴァイの仮面を剥ぎ取り開口一番ツヴァイを煽る。



『うっさい!!勝手に仮面取るな!!』


「嬉しそうな顔しちゃって。ホントわかりやすいよね。」


『…うっさい。』


「いや〜ん!!顔赤くしてるツヴァイちゃんカワイイ〜!!」



ーー慎太郎たちが消えた場合からリリが現れる。



「可愛いよねー!!背景にお花畑が見える感じだもんねー!!」



ーー葵とリリでまだ顔の赤いツヴァイをからかう。



「はいはい、もうやめてあげなさい。もう茹で上がりそうなぐらい真っ赤なんだから。」



ーー続いてサーシャも現れる。



「はーい!!」

「は〜い!!」


『アンタら2人揃うと厄介だよね!!』


「あはは、でもたーくんやっぱ優しいね。アインスになんか言われてんだろうけど、それでも私たちに言ったこと気にして謝るなんてさ。」


『…うん。』


「そうね。律儀に”私”と”葵”にまで謝るなんてね。」


『…うん。』


「やっぱさ、もう正体言っちゃったら?絶対その方がいいと思うよ。」


『いや…やっぱそれは…まだ…』


「私もその方が良いと思うわ。」


「お、サーシャまで推してくるとは。」


「悪ふざけで言ってる訳じゃないわ。雷帝ブルドガングが”神”を殺したから言っているのよ。これを成した事で計画を全て変えなきゃいけない。田辺慎太郎に全てを話して協力を得る。そしてオルガニ、ヴェヒター、リッターオルデンらを全て滅ぼすしかないわ。」


「”彼の方”の復活を阻止するパターンで行くって事?」


「そうね。”剣”が無くなった事で”彼の方”を復活させれば力の制御が出来なくなる。”彼の方”の復活に乗じて『崩核』を破壊し、呪いを断つのが私たちの計画だったけどそれはもう無理。」


「じゃあ”贄”は私たちに必要ないじゃん。楓ちゃんや牡丹ちゃんが生きるって事だよね?」


「そうね。だから◯◯、貴女は田辺慎太郎を彼女らと共有するか選ばないといけない。だけど、芹澤や島村たちを始末すれば田辺慎太郎に殺意を向けられるわよ。いくら◯◯でも田辺慎太郎は許さないと思うわ。」


『…牡丹ちゃんなら別に構わないけど。楓ちゃんとみくちゃんも嫌いじゃないし。』



ーーツヴァイが口ごもっていると葵が何かに気づいたような顔をする。



「ん?アリスちゃんは?フレイヤ神に渡す約束だよね?」


「破棄するしか無いわね。それも田辺慎太郎が許す訳ない。それにフレイヤ神も結城じゃなくても構わないはずよ。」


「”例のあの女”?」


「ええ。フレイヤ神は結城とは別にもう1人接触していた。喰えない女ね。」


「そんじゃアリスちゃんも渡さなくていいわけか。ならたーくんに打ち明けて協力してもらった方がよくない?戦力はかなりあるよ。”今の”私とサーシャとリリちゃんでもヴェヒターたちと戦えるだろうし、楓ちゃんと牡丹ちゃんは”神”の所持者、それに『神具』持ってるからリッターオルデン任せられる。たーくんとみくちゃんたちでオルガニ潰すって感じならいけるでしょ?」


「ザックリ言えばそんな感じね。」



ーー葵とサーシャが今後の計画に対しての見直しを図る。だが当のツヴァイは、



『でも…あのぶりっ子はイヤ。』


「そんな美波ちゃんムカつくかなぁ?」


『ムカつく。タロウにベタベタしてんのがムカつく。タロウに色目を使ってんのがムカつく。タロウと同じ空間にいるのがムカつく。タロウと一緒に寝てるのがムカつく。タロウとキスしてるのがムカつく。タロウに抱き締められてるのがムカつく。何より…タロウに優しくされてるのがムカつく。奴隷堕ちするようなレベルの分際で。タロウに与えた”巻戻し”を奪っておいて。あのまま澤野の奴隷になってればよかったのに。ムカつく。ムカつく。ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくーーそうだ。やっぱりみんな殺そう。タロウの周りにいる女はみんな死ねばいい。芹澤楓も島村牡丹も結城アリスも綿谷みくもみんな殺す。』


「はい、そこまでにしなさい。」



ーー様子がおかしくなるツヴァイをサーシャが制する。



「葵、刺激しては駄目でしょ。」


「あー…ごめん。ごめんね、◯◯。」


『…大丈夫だよ。ちょっと頭に血が上っただけ。』



ーーツヴァイが冷静さを取り戻す。



「貴女の気持ちはわかったわ。相葉は始末してもいいわ。作戦時のどさくさで私が始末する。入り乱れてるだろうから誰が殺したかなんてわからない。失意に沈む田辺慎太郎を貴女が介抱すれば貴女の株も上がるし怪しまれないで済む。それでいいでしょ。」


『…うん。ありがとサーシャ。』


「どういたしまして。それじゃいつ言うの?」


『それはもうちょっと待って。この後に開かれる”総会”の流れにもよるからさ。』


「やっぱ開かれるの?」


『うん、このリザルトが終わったらヴェヒター並びにリッターオルデンは宮殿に集結せよってさ。実際ブルドガングはどうだったの?』


「多分だけどフラガラッハに匹敵するかも。カルディナが言ってたから。私にはそうは思えないけどね。フラガラッハの凄さは生で見て来たわけだし。本当に凄いのは楓ちゃんかな。あの子、戦い慣れしてきた。まだまだ経験不足なのは確かだけどウコンバサラ倒せたのは間違いなく楓ちゃんがいたからだよ。」


『そっか。楓ちゃんにはもっと強くなってもらわないと、牡丹ちゃんにも。”選別ノ刻”は近いから。』



ーーツヴァイ、サーシャ、葵が今後を考える中リリは別の事を考えていた。ツヴァイが慎太郎に正体を明かす前に自分の行動について伝えなくてはいけない。ただ、機を逃したのは確かだ。明らかな嘘をリリはツヴァイたちに吐いている。それについて弁明する事が出来ない。何より、リリの中にある”自分でもわからないナニカ”がリリに告白させるのを躊躇わせていた。



『時間かな。この話はまた後にして宮殿に行こう。』


「わかった。」

「はーい。」

「うん。」



ーー3人が先に離脱しサーシャが1人リザルト部屋に残る。サーシャは呟いた。



「どうしてみんな気付かないのかしらね。田辺慎太郎は”私”と”葵”にしか謝っていない。どうしてリリには謝らないのかしら?これで疑惑は確信へと変わった。◯◯を傷つけるつもりならリリ、貴女であっても私は容赦しないわ。」

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