第438話 第二次バディイベント終了
リザルト部屋へと転送される俺と美波とみく。心臓の鼓動が早くなる。楓さんと牡丹の事も心配だが2人の強さから考えれば負けるはずはない。アリス。アリスがいなかったら俺はどうすればいいんだ。
「タロウさん!!美波さん!!みくさん!!」
俺は背後からの声にいち早く反応する。
「アリス!!!」
「アリスちゃんっ!!」
「アリスちゃん!!」
かけ足で向かって来るアリス。俺はアリスを受け止めギュッと抱き締める。
「よかった…無事だったんだな…めっちゃ心配したよ…」
「はい…心配させてごめんなさい…」
「なんでアリスが謝るんだよ。」
俺たちはアリスの無事を喜び合う。本当によかった。アリスの無事を確認したら気が抜けちゃったよ。俺はその場にへたり込んで心から安堵した。
「ふふふ、皆さん御無事で良かったですね。」
耳元で声がするので俺はビクッとする。横を向くと牡丹がいる。安定の牡丹だ。でもあんまり驚かせるのはやめてくれ。身体を急に捻ったから背中の筋を少し痛めちゃったから。
ーーおっさん臭いなぁ。
「牡丹も無事で良かったよ。」
「ふふふ、タロウさんの許可無く散る事は出来ませんので。」
「俺の許可があっても散る事は禁止な。無茶しちゃダメだよ?」
「わかりました。」
「本当に心配したから牡丹もアリスも無事でホッとしたわ。」
「あら?私の心配はしてくれないんですか?」
牡丹より遥かに遅れて楓さんが現れる。
「そんなわけないじゃないですか。楓さんの事だって心配してますよ。」
「ふぅーん。」
「なんですかその目は。」
楓さんがなんとも言えない目で俺を見てる。クッソ可愛い。ムラムラして……来ない。あれー?なんか最近全然ムラムラしないんだけど。なんでだ?
ーーだからアンタは今は女だからでしょ。出すものがあるからムラムラするんであって出すものがない今はムラムラしないんだよ。寧ろその方が平和でいいんじゃない?
まぁ…いっか。歳だからムラムラが少なくなったりもすんだろ。多分。そんな事よりみんながアリスの無事を祝ってるこの光景は微笑ましいな。みんなの笑顔が見れておっちゃん幸せやで。
「でもちび助がなんでここにおるんやろ。」
「ぴっ?」
俺の頭にちび助が乗っている。こののほほんとした空気はいいけどちび助いるなんておかしいよね。
「私の服の中にいたんです。だからエラーが出たんだと思います。」
「ホントなんでもありやなこのゲーム。」
「なんでもありって言うか適当なんでしょ。」
「でも本当にアリスちゃんが無事でよかったよねっ!アリスちゃんが1人で敵プレイヤーを倒したの?」
「いえ、違うんです。私は1人も倒してないっていうか戦ってもいないんです。私のバディは蘇我夢幻さんだったんです。」
…なん…だと…?
「蘇我って…あの”闘神”の蘇我よね?」
「はい!夢幻さんが助けてくれたんです。凄く優しくしてくれました。」
なんかアリスの口からそんな台詞聴きたくないんだけど。吐き気がしてきた。優しくしてくれたってナニをだよ。あの野郎…やっぱりロリコンだったんだな。俺のアリスにナニしやがったんだよ。
「へぇ…あんな無愛想な男が助けてくれるなんて意外。逆にバディも倒しそうなイメージだったわ。」
「同感です。私も蘇我さんに対する印象は楓さんと同じでした。」
そうそう。そうだよな、楓さんと牡丹はよく分かってる。あの変態ロリコン野郎はそういう奴だよ。
ーーお前はイケメンが気に入らないだけだよね?
「うーん、ウチも蘇我クンは冷たそうに見えたなぁ。意外と女の子に優しいんかなぁ?」
「私は会ったことないからわからないけど優しそうな人には見えなかったなぁ。」
よしよし、みくも美波もわかってるな。あのクソ野郎はとんでもない奴に決まってんだ。女の子を取っ替え引っ替えして遊びまくって来たに決まってんだ。ちくしょう。
ーーうわぁ、情けない。こんなタロウは見たくないなぁ。
「そんな事ないですよ!夢幻さんは優しいです!私を守ってくれたんですから!」
えっ、なんでこんなにアリスはあいつの肩を持つの。惚れたんか?惚れたのか?えっ?まさか将来こんな感じになんのかーー
ーー
ーー
【 慎太郎's妄想ストーリー 】
「タロウさん、会って欲しい人がいるんです。リビングに来てもらえますか?」
ーー慎太郎の部屋にアリス(18歳JK)がやって来る。
「…おう。」
ーー慎太郎がリビングへ移動するとそこに蘇我夢幻がいる。
「ちーっす!邪魔してまーす!」
ーー夢幻がキャラぶっ壊したようなチャラい感じで慎太郎に挨拶する。慎太郎はぶっ殺してやろうかコイツ、と思い、拳を握り締めるが、必死でそれを堪えてテーブルに座る。
「はい、タロウさんお茶ですよ。それを飲んで落ち着いて下さいね。」
ーーなぜか牡丹が慎太郎にお茶を持って来る。
「…ありがとうな牡丹。えっ、牡丹?なんでいるの?」
「それはあなたの妻だからですよぉ。」
「えっ、そうなの!?」
「そぉですよぉ。そんな事より今はアリスちゃんと蘇我さんに集中しましょうねぇ。」
「あ、ああ…そうだな。ゴホン。んで?何の用?」
ーー慎太郎がアリスと夢幻に問う。ちゃっかり隣同士で座ってる2人を見て慎太郎はイライラする。
「私、夢幻さんと結婚します。」
「ぐはっ…」
ーー慎太郎がテーブルに倒れこむ。
「夢幻さんを愛してるんです。もうラブなんです。大好き好き好きなんです。」
「俺もだぜハニー。マジでラブだぜ。」
ーー2人の世界に入り出すアリスと夢幻。それを見て慎太郎の怒りのボルテージは上がっていく。
「…蘇我君はさ、仕事何してんの?」
「俺すか?バンドやってます。」
「いや、そーじゃなくてさ。趣味じゃなくて何でお金を稼いでるか聞いてんだよね。」
「あー、それな。なんもやってないっす。」
ーー夢幻の口の利き方に慎太郎は心の底から怒りの波動を感じる。本気でブン殴ろうと思案し始める。
「いやいや、稼がないと生活出来ないよね?結婚出来ないよね?どうすんの?」
「でも俺、バンドでメジャーデビューしてガンガン稼いでくんで大丈夫っすよ。」
「…あのさ、百歩譲って君がメジャーデビュー出来たとしてもそれまでの間はどうすんの?」
「なんとかなんじゃないっすか?」
「いや、ならないよね。お金がないと物は買えないの。わかる?」
「アリスの父ちゃんめんどくせーwww」
ーー慎太郎は席から立ち上がってブン殴ろうとするが必死でそれを抑える。舌を噛んで必死に堪える。
「ふーっ…それにさ、どこに住むの?そもそも君はどうやって家賃とか払ってんの?」
「あ、親っす。」
「…は?君さ、いくつだっけ?」
「俺すか?30っす。」
「いやいや、30にもなって親のスネかじりっておかしくない?」
「アリスの父ちゃんさっきから『いやいや』うるせえんだけどwww」
ーーここで慎太郎の限界が訪れる。
「おいコラてめぇ、さっきから大人しくしてりゃいい気なりやがって。てめぇみてぇなカスにアリスをやれっか。てめぇみてぇなゴミ野郎はな、ボランティアでもやって心入れ替えて来いや。」
ーーブチ切れの慎太郎が怒鳴り散らす。当然空気が一変する。
「タロウさん酷い!!!夢幻さんを悪く言うなんて最低!!!もういい!!!出て行くから!!!」
「えっ!?ちょ、待てよアリス!!!」
「うるさい童貞!!!」
「アリスの父ちゃん童貞www」
ーーアリスの言葉に慎太郎は崩れ落ちる。アリスと夢幻が家から出て行く。失意に沈む慎太郎をヤンデレクイーンが優しく抱き締める。
「大丈夫ですよぉ。私はずっとあなたの側にいますからねぇ。ずっと。ずうっと。ふふふふふふふふふふ。」
ーー
ーー
ーー
ーーこんな感じになっちゃったらどないしよ。てかなんか俺の妄想に牡丹いなかった?
ーー怖いねぇ。妄想の中にまで現れるんだねぇ。
『…何をしてるのですカ?』
ーー妄想ストーリーによって心の折れた慎太郎が四つん這いになっている。そしてそれを牡丹が慰め、4人は困惑して見ている。そんな一団をツヴァイはなんともいえない気持ちで見ていた。
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