第414話 探索
ーーガックリとうなだれる慎太郎を中心に一行はダンジョンの探索を進める。しばらく歩くとクラウソラスの言う通り三叉路が見えて来た。慎太郎たちは立ち止まりどの道へ行くかを議論する。
「右に敵がいるのは確定してるわけだがどうする?そこはスルーする?それともこのフロアは全部探索する?」
『アイテムがあるってんなら全部回った方がよくない?取り損ねたら損な気するけど。』
確かにそうだな。ブルドガングの言う事はもっともだ。俺はRPGやる時は必ず全部のマップを踏破して先へ進む。個人的にはその意見に大賛成だ。
『妾は全部を探索する必要は無いと思う。こんな上層でレアアイテムなどあるわけがない。それにこのダンジョンが何層まであるのかわからんのだぞ。あまり時間をかけていてはいつになったらクリア出来るかわかったものではない。』
ノートゥングの言う事も一理ある。オレヒス運営が最初から良いアイテムくれたりなんてするわけがない。ヘタすりゃ宝箱がモンスターに、なんて事も有り得る。
『ブルドガングとノートゥングが言う事はどちらも正しいです。上層だからといって”特殊装備”が無いとは言い切れませんし、かといってフロアの全てを回っていては体力面から考えても良くはない。難しい判断と言えるでしょう。』
結局はクラウソラスの言う事が全てなんだよな。ノートゥングもブルドガングも間違ってない。あとは個人の性格が最終的に決定打になるんじゃないかな。
『タロウ、主は貴方です。私たちは主の命に従います。決断を。』
『そうね。タロウが決めちゃって。アタシはそれに従う。』
『妾は従わない。そもそも主は妾だ。貴様は下僕。』
「なんか1人反抗的な人いない!?ノートゥングの意見に従わないとダメなんじゃね!?」
『大丈夫ですよ。ノートゥングは戯れが好きなのです。本心ではありませんよ。』
…そうかなぁ?コイツが気に食わねぇ采配を俺がしたらブン殴られて強制的に言う事聞かされそうなんだけど。
「少なくともこのフロアは全部回ろう。まだどういうダンジョンで、どういうシステムなのかも俺たちにはわからない。情報が圧倒的に不足している。情報は大事だ。それを知る為にもこのフロアは入念に調べて次の階層からはそれを元にもう一度検討しよう。」
『わかりました。』
『アタシは自分の考えを採用してもらったんだから文句ナシ。』
2人の反応は当然だ。問題はノートゥングだ。この女王様が納得しなきゃどうにもならん。……殴られたらどうしよう。
『なら敵のいる右から進むとするか。どのような敵でどのような力があるのか調べねばなるまい。』
「えっ?いいの?」
ーーノートゥングが何の不満も言わない事に慎太郎は素っ頓狂な声を出してしまう。
『良いも悪いも無いだろう。貴様がそう決めたのだ。』
「いや…あれだよ?別にノートゥングの意見を却下したわけじゃないよ?言ってる事はわかってるからさ。ただ情報をーー」
『ーーそんな事はわかっておる。』
「えっ?」
『お前の気持ちなど口に出さんでもわかっておる。ちゃんと妾とブルドガングの顔を立てている事ぐらいわからないはずがない。』
「……。」
…コイツさぁ、ズルいよね?俺の事殴りまくるけど本音は優しいんだよな。おっちゃんそう言われると泣きそうやで。
ーーノートゥングは素直じゃないからね。
『どれ、探索を始めるぞ。先ずはどこから行く?タロウ、道を示せ。』
「…おう。それじゃ敵をまずは蹴散らす。ノートゥング、頼めるか?」
『フッ、誰に物を言っている?』
『ツンデレ女王じゃない?』
『フフフ。』
『そこ!!黙っていろ!!』
********************
方針の決まった俺たちは敵がいるっていう右側の通路を進む。その間俺は周囲を観察しながら進むが特に何もない。何もないどころか通路の構造も何の変化もない。もしも1人でこんな所にいたらたまったもんじゃないな。
『…近いな。』
『…そうね。』
「えっ?なにが?」
阿吽の呼吸でノートゥングとブルドガングがシンクロしてるが俺には何の事かさっぱりわからない。
『敵の気配を感じる。クラウソラスの言う通り3体だ。』
「あ、ノートゥングのセンサーの範囲に入ったって事ね。あとどれぐらい?」
『1km無いだろうな。』
「近いな。そんじゃとりあえずエンカウントするか。オーダー確認な。クラウソラスは俺から絶対離れない。ブルドガングは周囲警戒プラス俺から基本離れない。ノートゥングはとにかくやっちまえ。」
『わかりました。』
『オッケー。』
『貴様に言われるまでもない。』
うん、ノートゥングは素直じゃないだけだから気にしないようにしよう。
ーー作戦が決まり慎太郎たちは敵がいると思われるテリトリーへと近づく。するとそこにいたのは3体のゾルダードだった。
『ゾルダードか。』
『赤オーラって事はS級ね。ウンゲテュームってのとは違うんだろうから属性はないのかな?』
「どうだろうな。無いとは思うけど。」
『無いと思いますよ。アレは通常のイベントで出て来るモノと同じ波動です。もし属性があるのならその波動も違いますので。』
『まあどうでもいい。属性があってもなくても妾には関係の無い話よ。邪魔立てするモノは殺す。それだけだ。では行くか。』
「気をつけてな。」
俺の呼びかけにノートゥングは軽く笑ってゾルダードへ向かって行く。
ノートゥングに気付いたゾルダードが剣を抜きノートゥングへ斬りかかろうとする。だがノートゥングが手を軽く払うとゾルダードたちの首が落ち、鎧から溢れていた赤いオーラが輝きを無くす。ノートゥング相手じゃゾルダードなんかじゃ相手にすらない。わかりきっていた結末通りで俺は一先ず安堵した。
『終わったぞ。』
「お疲れ。何事も無くて良かったよ。身体に何も影響ないよな?」
『特に無いな。普段のゾルダードと変わり無い。』
「そんならいつも見てるゾルダード、フェルトベーベル、ゲシュペンストみたいな奴らは属性は無しって考えていいな。ウンゲテュームとかいうダンジョンモンスターだけが特別と考えよう。」
『そうだな。それでは其奴らを探すか。先ずは一戦交えてみん事には何もわからぬ。』
「そうだな。そんじゃこのまま真っ直ぐ行ってみっか。」
俺たちはそのまま通路を進む。するとその先には鉄で出来た扉があった。
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