第413話 俺の現実
俺たちは階段を下り光のさす方へと向かう。すると、そこにあったのはいかにもダンジョンと言わんばかりの空間だった。
土で出来た床、白色のレンガが敷き詰められた壁、一定の間隔で設置されたランタン、完璧ダンジョンだ。
『ふむ、いかにもな造りだな。』
「だな。」
『あー、カエデが見てるマンガとかアニメにこんな感じの場所が出て来てたなぁ。』
俺たちはそれぞれに周りを調べる。別段変わった所はない。普通のダンジョンだ。いや、ダンジョンって事はトラップがあるのだろうか。ダンジョンにトラップってのも定番だ。ヌルの野郎に聞いとけばよかったな。あー、アイツらが喋るわけねーか。
『タナベシンタロウ。』
俺がキョロキョロしているとほとんどゼロ距離にいるクラウソラスが話しかけてくる。俺が側にいろって言ったんだからいるのは当然なのだが超美人に近くにいられると緊張する。まずピンク髪ってのがヤバい。現実的な髪色じゃないから余計とクるものがある。それにクラウソラスは他の人とは違うっていうか纏ってるオーラみたいなもんが違うんだよね。上手く説明出来ないけど神聖さがあるっていうか。つまりが神のように可愛いって事だ。ま、みんなそうだけどな。ノートゥングたちも含めてウチの女性陣はほんとレベル高い。
「どうした?」
『この通路の先が三叉路のようになっております。右側の通路には敵と思われるモノが3体ほどおりますので注意して下さい。距離に換算して5kmほどかと。』
「えっ、なんでわかんの?まさかこのダンジョン経験済み?」
『実は私はこのダンジョンの攻略者』みたいな展開なら結構胸熱なんだけど。
『いえ。氣の流れを読んだだけです。あまり広範囲の事はわかりませんし、生体反応しかわからないので罠やアイテムなどの有る無しは見極められません。あまり役に立てる能力ではありませんが多少は皆の為になれると嬉しく思います。』
「えっ、なにそれ。そんなレーダー機能ってノートゥングもブルドガングも付いてんの?」
『敵意がある奴が近くに来ればわかるけど5kmなんかムリかな。』
『妾も同じだ。精々1kmといった所だろう。』
「それでも十分普通じゃねぇけどな。クラウソラスって凄いね。索敵能力はこの手のゲームにはかなり大事だよ。」
『皆の為になれるのなら嬉しい限りです。戦闘能力こそ現状では皆無ですが、それ以外の事で貢献出来るのよう努めます。』
「そんな気張らなくていいよ。普通にしよう。さっきも言ったけどクラウソラスは俺から離れない。ブルドガングも基本的には俺から離れないで無理をしない。戦闘はノートゥングに頼る。俺が2人の護衛。これがベストだよ。親愛度が上がるまではクラウソラスはおとなしくしてな。」
『わかりました。タナベシンタロウ、今は貴方が私の主です。主の命に従いましょう。』
…うーん、やっぱりクラウソラスとの心理的距離は遠いな。
ーーそうだね。今までのチョロ子たちはアンタにそんな風に言われたら胸をキュンキュンさせてベタ惚れになってたもんね。
少しずつ距離を縮めるしかないか。焦ってもしゃーない。
「てかさ、そのフルネーム呼びやめない?牡丹たちと同じようにタロウでいいよ。親しい奴はみんなそう呼ぶし。ノートゥングもブルドガングもそうしてくれると嬉しいな。」
『アタシはなんでもいいけどシンタロウ…じゃなくてタロウがそうして欲しいならそうするね。改めて、タロウよろしくー!』
「おうおう。」
ふむ。ブルドガングとは上手くやれんだよな。なんか他人とは思えん。
ーーお前と知能指数が同じだからじゃない?アホの子って感じだもん。
『わかった。ではタロウと呼んでやろう。』
「おう。」
『これを期に妾の呼び方も変えるがいい。今からノートゥング様だ。わかったな?』
「わかるわけねぇだろ!?」
コイツって俺の事なんだと思ってんだ。あの車の中での出来事はなんだったんだよ。熱中症で頭がおかしくなってただけか?そうだよな。いくらなんでもノートゥングが俺にホレるわけないもんな。
ーーと、こうやってノートゥングの想いは慎太郎に気付かれる事がなくなっていくのであった。
『ではタロウとお呼びします。ブルドガング、ノートゥング。私たちも名前で呼び合いませんか?友になったブルドガングの事を私は名前で呼んでおりますがブルドガングは呼んでくれておりません。私はそれが悲しいです。』
『あー…ごめん…ついクセで。そんじゃクラウソラスって呼ぶよ。』
『本当ですか!ありがとうございます!嬉しいです!』
クラウソラスが嬉しそうな顔してる。めっちゃ可愛い。
『ノートゥングもそうして頂けませんか?いえ、私と友になってくれませんか?私は同じ仲間である貴女たちと仲良くなりたいのです。』
ーーここでノートゥングに稲妻が落ちる。
友達が少ないノートゥングにとってその申し出はめちゃくちゃ嬉しかった。それが顔に出ないように必死で堪えている。舌を噛んでキリッとした顔を必死で維持しているのであった。
『ま、まぁ別に構わぬぞ…?』
『本当ですか?嬉しい!宜しくお願いしますね、ノートゥング。』
『う、うむ…よろしくな、クラウソラス。』
ーーノートゥングは太ももをつねって小躍りしたいのを必死に抑えていた。
…なんかクラウソラスって俺の事眼中になくね?ノートゥングとブルドガングにはテンション上がるけど俺にはいたってフツーなんですけど。
ーー確かにそうだねぇ。
最近ちょっと調子に乗ってたな。美波たちが俺にホレてるもんだから俺ってモテモテなんじゃね?とか思っちゃったけど現実を思い出したよ。これが俺なんだよな。俺なんかがモテるわけねぇんだよなぁ。
ーーと、キャピキャピしてるクラウソラスたちを見ながら慎太郎はいつものネガティヴモードに入っていくのであった。
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