第411話 親愛度

真っ暗な空間に俺とノートゥング、ブルドガング、クラウソラスがいる。この奇妙な状況はなんなんだ?何でクランメンバーの誰もいなくて召喚系アルティメットたちはいるんだ?そんでなんで俺のバルムンクさんはいないの?色々とおかしくね?そもそもさ、イベント今朝やったじゃん。またやんの?勘弁してくれよ。

それにね、結構この状況って気まずいんだよね。俺って基本的に女子苦手なんだよ。童貞だし、女友達いないしでさ。だから免疫ないわけよ。ノートゥングはいいよ?正直結構仲良いじゃん?だから2人っきりでもオーケーなわけさ。でもブルドガングとクラウソラスってほとんど絡みないからどう接していいかわかんないんだよね。ギリ、ブルドガングは良しとするよ、けどね、クラウソラスって話した事すらないんだよね。俺のスキルじゃこの女子たちとやっていけないっす。



『でもコレってオレヒスでしょ?カエデたちはどこよ?』


『さっきまで妾たちとおったのだがここへ来たのは妾とシンタロウだけだった。いつもとは相当に違う。用心しろ。』


『用心したいんだけど聖剣出せないんだよね。』


『何?』


『”具現”されてるのは明らかなのにラウムが開けないんだよね。アタシだけじゃなく剣神も。だから何で剣王が聖剣持ってるのか不思議。』


「なんだそりゃ?ノートゥングとブルドガングたちに違いがあんのか?俺と一緒にここに直接来た事しかなくない?」



考えているとノートゥングが剣をしまう。



『剣帝、聖剣を出してみろ。誰か1人しか使えないのかもしれん。』


『ん。』



ブルドガングがラウムを開くっぽい動作をするが何も変化は無い。



『ダメね。そういうルールじゃないみたい。』


『チッ、面倒だな。』



ノートゥングがイライラし始まっていると黙っていたクラウソラスが口を開く。



『何かの律があるのは確かですね。空間に術式がかけられているのではなく私たちに術式がかけられております。』


『わかるのか?』


『氣の流れを読んでおりましたら私たちの身体に術式があるのがわかりました。これを破るのは不可能ですね。ですが何らかの説明があると思いますよ。あくまでもこれが俺'sヒストリーだと言うのなら。』



『御名答デス。』



闇の中から声が聞こえると同時に気配が現れる。1人だ。俺は警戒を強める。そんな俺の空気を感じ取ったのかそのモノが俺を制止する為口を開く。



『タナベシンタロウサマ、ワタシは何も致しませン。どうかゼーゲンを収めて下さイ。』



そう言うとそのモノが姿を現わす。男だ。特にこれといって特徴のない普通の若い男だ。



『誰だ貴様は?』



ノートゥングが明らかに苛立っている声で男を威嚇する。



『剣王サマ、落ち着いて下さイ。ワタシは運営側のモノでス。ワタシに与えられた名は『ヌル』でス。』


『貴様の名などどうでもいい。妾たちだけをここに集めて何のつもりだ?ミナミたちはどうした?』


『御連れサマはアチラの世界におられますヨ。ここへはアナタ方のみを御迎えしておりマス。』


「何が目的だ?そもそも何でこのメンツなんだ?どう見たって色々おかしいだろ。」


『今回はミニイベントとなりマス。』


「ミニイベント…?あー、なんか最初の時にあったな。」


『概要を御説明致しまス。今回のイベントではクランリーダーのみが集めらレ、且ツ、クランメンバーに召喚系アルティメット所持者がいた場合のみに発生するモノとしておりマス。タナベサマの英傑である剣聖サマがここにおられないのはアナタの英傑だからデス。』


「ああん?なんだって?意味わかんねーんだけど。」


『タナベサマは当然剣聖サマを使えマス。』


「そらそーだわな。」


『ですが剣王サマたちを使う事は出来ませン。』


「何が言いたいんだかわかんねーんだけど。」


『今回のイベントに招集された方には”サイドスキル”を与えさせて頂きましタ。【 共有 】というサイドスキルでス。タナベサマにおいては0番目のサイドスキルになりマスネ。その効果はハ、【 クランメンバーの英傑を使う事が出来る 】というモノでス。』


「え、なにそれ。超お得じゃん。」



ヤバくない?俺無双じゃん。ノートゥングもブルドガングもクラウソラスも使えるとか最強じゃん。



『当然条件もありマス。』


「ですよねー。」


『英傑の能力はタナベサマのゼーゲン解放度が反映されマス。』


「まー、そりゃあね。楓さんたちの解放度で使えたらちょっとズルいもんな。」


『ここが一番大切な事でス。タナベサマの能力を100パーセント使う為には『親愛度』が重要になりマス。』


「なんじゃそりゃあ?」


『英傑がタナベサマを想う気持ちのバロメーターと考えて頂ければ宜しいカト。』



つまりがギャルゲーみたいな感じって事か。


ーーギャルゲーって。オッさん臭いぞ。



「それって男の召喚系アルティメットでも『親愛度』ってあんの?」


『同性は『親密度』となりマス。』



そらそーだわな。



『『親愛度』によって出来る事が増えまス。『親愛度』が低いと何も出来ないので御注意下さイ。』


「ふーん。で、その『親愛度』ってどうやってわかんの?」


『スマートフォンにアプリが入っておりますので開いて頂いて宜しいデショウカ?』



俺はヌルに言われるままスマホを取り出し立ち上げる。すると画面には見慣れないアプリが入っている事に気付く。俺はそのままアプリを開くとカメラ撮影の時のような画面になる。



「これってカメラみたいなもん?」


『左様で御座いマス。カメラ同様に使って対象者を撮って頂ければ撮った相手の『親愛度』が表示されマス。』


「へー。んじゃ試しに撮ってみるか。」


『ねーねー、シンタロウ。アタシから撮ってみてよ。なんか面白そう。』



ブルドガングを見るとウキウキしたような顔をしている。可愛い。



「おうおう。そんじゃブルドガングからいってみるか。んじゃ撮るよー?」


『いえーい!』



ーーパシャ



俺は撮った画面を見てみる。ブルドガングも俺に近づきスマホを覗き込むように見る。そこに写っているのはブルドガングと62%という数字だった。



「62…?なんか平均点みたいだな。コレってどうなの?」



俺はヌルに尋ねる。



『62でしたら仲の良い友達程度デスネ。詳しくは一覧表を参照下さイ。画面右下にある四角をタップして頂ければ表示されマス。』



俺はヌルのいう所をタップする。すると一覧表が表示される。



【 親愛度 目安 】



・ 0% 〜興味無し〜


・ 1%以上20%未満 〜顔見知り〜


・ 21%以上40%未満 〜知り合い〜


・ 41%以上60%未満 〜友達〜


・ 61%以上70%未満 〜親友〜


・ 71%以上80%未満 〜好き〜


・81%以上90%未満 〜大好き〜


・91%以上100%未満 〜愛してる〜


・ 100% 〜あなたがいないとダメなぐらい愛してる〜





「カテゴリー分けが割と細かいな。でもブルドガングが俺を親友だと思ってくれてるのは嬉しい。」


『そりゃあシンタロウとの付き合いは長いからね。親友だし戦友じゃない。』


「馬鹿…そんなこと言うとおっちゃん泣いちゃうだろ…」


『アハッ!』



ーーなんかホッコリしてる空気がイイね。こんな空気出たのいつ以来かな?いつもは殺伐としてるもんね。あれ?クランメンバーみんないない方が空気良いんじゃないかな?



「んじゃ次は…クラウソラスいってみる?」


『はい。構いませんよ。』



正直クラウソラスが一番気になるからな。全然絡みないんだから親愛度なんて高いわけないもんな。どう思われてるかめっちゃ気になる。



「そんじゃ撮るね。」


『はい。』



ーーパシャ



俺は撮った画面を見てみる。するとそこに書いてある数字は22%だった。



「低っ!?ギリギリ知り合いとして認識してくれてるレベルじゃん!?」


『しゃーなくない?だってシンタロウと剣神って絡みどころか喋った事すらなかったでしょ。』



そらそーやけどおっちゃん悲しいで。所持者の牡丹があんなに俺の事を好いてくれとるのにそのパートナーがコレって。



『今までがそうであったのですから仕方ありませんね。それではこれから共に絆を深めて参りましょう。タナベシンタロウ、私は貴方に感謝しております。』


「え?感謝?」


『はい。貴方と出会う前のボタンは本当に辛そうでした。救ってあげたかったけど私には何も出来なかった。でも…貴方はあの子を救った。救ってくれた。苦しみから解放してくれた。私は本当に感謝をしております。ありがとうございます、タナベシンタロウ。』


「礼なんて言われる事はないよ。俺は牡丹を助けたかったから助けただけ。俺が勝手にやってる事だから。だからクラウソラスが俺に感謝なんてする事ないよ。」


『フフフ、貴方は本当にそのままの人間ですね。』



ーー2人で微笑みあっている。やっぱりホッコリしてるね。うんうん。



『あ、忘れておりました。タナベシンタロウ。』


「ん?」



クラウソラスが俺に近づいて耳元で囁く。



『ボタンを悲しませたりしたら貴方に神罰を与えますので覚えておいて下さいね。 』



声色が変わったので俺は驚いてクラウソラスの顔を見る。クラウソラスがハイライトの無い目で俺を見ていた。


ーーごめん、やっぱりホッコリしなかった。英傑は所持者に似るんだわ。



「…ごほん。さて、ちょっとアクシデントはあったが最後にノートゥングいっちゃうか。」


『いや、妾はいい。』


「え?なんでだよ。」


『なんでもだ。』



ーーブルドガングがめっちゃニヤニヤしながらノートゥングの後ろへと移動を始める。



「親愛度っての確認しとかなきゃダメだろ。」


『妾と貴様に親愛など無い。測る必要も無い。以上だ。』



か…可愛くねぇ…それでも一応は調べなきゃダメだろ。イベントだってんならそれが大事になってくるわけだし。


ーー慎太郎が割と真面目に考えているとノートゥングの背後に回ったブルドガングがノートゥングを両手でガッチリと押さえつける。



『なっ!?』


『シンタロウ!!早く!!』



ーーノートゥングがめっちゃニヤニヤしながら慎太郎へと呼びかける。慎太郎はブルドガングの意図を汲み取り同じくニヤニヤしながら撮影をしようとする。



『剣帝!!貴様ッ!!離せッ!!』


『フフフ、剣王様は何パーセントなのかなぁ?』


『ーーッッッツ!!』



ーーブルドガングには慎太郎への気持ちバレてるもんね。



「そんじゃ撮るよー。」



ーー慎太郎がしれっした態度でノートゥングに対してスマホを構える。



『撮るなッ!!撮ったらどうなるかわかってるんだろうなッ!!!』



ーーノートゥングが慎太郎に対して凄むが慎太郎は全然気にしない。ブルドガングが拘束してくれてるから殴られないと思って調子に乗っているのだ。



「ノーたん怖いよぉ。そんな怖い顔してるとぼくビビってシャッター押しちゃうよぉ。」



ーーパシャ



「あ、押しちゃった(笑)ごっめーん(笑)」


『貴様ァ!!!みるな!!!見たら殺すッッ!!!』



ーー最高に調子に乗ってるね。



『どれどれ、シンタロウ、アタシにも見せてよ。』


「ういうい。一緒に見よーぜ。」


『みるな!!!』



ーー慎太郎がニヤニヤしながらニヤニヤしているブルドガングへと近づく。ノートゥングは暴れる。でもこの体勢ではブルドガングの拘束を解く事は出来ない。

そして慎太郎とブルドガングが撮った画面を見るとーー



「えっ?」

『ブフッ!!』










【 MAX 300% over これ以上は表示出来ません 】










ーーと、記載されていた。




「えっ?何これ?どういう事?」



ーー意味不明な慎太郎はヌルに問う。



ーーブルドガングは床に転がり腹を抱えながら大笑いをしている。



ーーノートゥングは膝から崩れ落ち四つん這いになっている。



ーークラウソラスは軽く微笑みながらその様を見ている。



ーーなんだこの光景。




『100%を超えられていたのデスネ。これは素晴らしイ。ですガ、300%までしか計測が出来ないのデス。申し訳御座いませン。』


「えっ?300%ってなんなの?」


『親愛度の目安の事ですカ?【あなたの為なら死ねる。生まれ変わってもあなたと一緒にいたい。何年、何十年、何百年、何億年経っても愛してる】といった具合カト。』


「えっ?」



ーー慎太郎はノートゥングを見る。それに気づいたノートゥングはフラフラと立ち上がる。



「あのさ…これっ『壊れてる。』」


「えっ?」



ーー慎太郎が喋っている途中で遮るようにノートゥングが声を被せる。



『その機械、壊れてる。』


「いや、そんなわーー痛ってぇ!?」



ーー慎太郎が喋っている途中にノートゥングがボディーブローをかます。



「な、何すんだよ!?そんーーブホッ!?」



ーーノートゥングが慎太郎にビンタをかます。そして殴る蹴るの暴行を加えまくる。最初は文句を言っていた慎太郎だったが次第にうずくまり、丸まってひたすら耐えるだけとなった。




『その機械壊れてる。そうだな?』


「…はい。」




ーーなんとも面白いイベントが幕を開けた。

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