第410話 調教
「とりあえずここで昼食べるか。」
「そうですねっ!」
ーーガチャ
サービスエリアに車を停め、俺たちは昼メシを食べる事にする。
俺たちは前から予定を立てていた旅行に来ている。青森へ4泊5日のスケジュールだ。楽しみではあるけど長時間の運転が結構しんどい。完全に歳かもしれんな。
「お盆休みに入っているから凄い人ですね。」
楓さんの言う通りサービスエリアの駐車場はほぼ満車だ。運良く停められたからいいけど停められないと地獄だよな。おかげで渋滞してるからまだ宮城だよ。青森入るの夜になるんじゃねぇかな。
「ウチ、サービスエリアなんて初めて入ったなぁ。いろんなのぼりが立っとる。あ!ソフトクリームあるで!」
「美味しそうですね。食後のデザートに食べたいです。」
「ああいうのぼりを見ると食べたくなっちゃうんだよねっ。」
「ウフフ、わかるわ。ああいうのぼりを見ると飲みたくなっちゃうわよね。」
「ビールなんか買いませんからね。車内が酒臭くなるからやめてくださいよ。」
「冗談ですよ♪じょ♪う♪だ♪ん♪」
…くっそ。ダメープルのくせに可愛い。
ーーバタン
「でもこの車の量だと座って食べるのは無理っぽいよな。持ち帰りで買って車で食べるしかないか。そもそも俺は車動かして距離詰めないといかんし。」
「ふふふ。では私が食べさせて差し上げますね。」
助手席に座る牡丹が上機嫌でいる。こっちに戻ってからもヤンデレモードが解除されないからいつもより強めに抱き締めてキスしたら戻ったんだよな。指輪の効力が弱まってんのかな。どうすんべ。
ーーどうもしなくていいんじゃない?指輪の効力が弱まってるんじゃなくて激しい怒りによりヤンデレモードになっただけだから大した事じゃないよ。だからいつものヤンデレモードとは違って自称正妻の誰かさんと共有出来てたでしょ?
「とりあえずトイレ行ったりしますか。トイレ行くのも相当時間かかりそうだけど。」
「そうですね。特に女子トイレは凄い事になってそう。」
「じゃあ俺が食事買いに行きますよ。トイレ行く前にみんなに欲しいもの選んでもらえばいいし。」
「効率は良いけど1人じゃ持てなくない?せめてあと1人はおらんと。」
『それなら妾が行こう。トイレはもう済んだしな。』
「えっ?いつの間に行って来たの?」
『着いてからすぐに行った。タイミングが良くて誰も並んでなかったから待たなくて済んだ。』
「流石はノートゥングですね!」
…そういえばドアの開け閉めの音が聞こえてたよな。てかさ、もうコイツの徘徊って当たり前になってるよね。ちゃっかりクランメンバーみたいになってんじゃん。もはやその事に誰もツッこまないしさ。
「それじゃ買い出しはタロウさんとノートゥングに任せましょうか。」
「せやね。ノーチャンよろしくね!」
『任せておけ。さっきついでに『限定プリンぱふぇ』なる物があったので注文しておいた。』
「お前何やってんの。金はどうしたんだよ。」
『後で妾の下僕が払いに来ると言っておいた。』
「下僕って俺の事かよ!?」
『ん?貴様…また妾の事を『お前』と呼んだな…?』
「いや…違うでごぜーます…女王様の聞き間違いでごぜーます…」
『妾はどうやら貴様を甘やかしすぎたらしい。今からたっぷり調教してやろう。』
「ひいっ…!?」
ーー嫌な予感がするので慎太郎は車から降りようとする。でも人間焦ると冷静な判断が出来ないもんだよね。
「あっ、開かねぇ!?ドアが開かねぇ!?あ!逆だった!うわぁ…!?」
ーー慎太郎がモタついてる間にノートゥングが運転席側の外にSっ気たっぷりの顔で立っている。
それに気付いた慎太郎は急いで開けたドアを閉める。だがロックをし忘れているので当たり前のようにノートゥングが運転席のドアを開ける。
「ひいっ…!?」
『ククク、唆る顔をするではないか。どれ、明日から妾に会ったら妾の足を舐めたくなるぐらいに調教してやろう。』
「たっ、助けーー」
ーー慎太郎が後ろを向き、車内にいるみんなに助けを求めようとするが首根っこをノートゥングに掴まれ車外へ引きずり出される。
後はお察しの通りだ。
「…美波ちゃん、止めなくていいの?」
「いいんですっ!あの2人はいつもイチャイチャしてるだけなんですからっ!」
「ふふふふふ…やはりタロウさんは嬲られるのがお好き…私も鞭や蝋燭の使い方を学ばなければ…」
「いや、それは違うと思います。」
「いや、それは違うと思うで。」
「ぴぴっ。」
********************
「超痛てぇ…」
ーーノートゥングに調教された慎太郎は顔を少し腫らせながらフードコートの列に並んでいる。
「てかなかなか進まないな。もう20分待ってるけどまだ注文すら出来ねーんだけど。」
『男のくせにごちゃごちゃと言うな。それにしても…暑いな。この格好でも暑くてかなわん。』
俺はチラリとノートゥングの服装を見る。
上は肩紐が無いブラみたいなやつをつけてスケスケの網みたいなのを巻いてるだけ。
下はパンツ見えんじゃないの?ってぐらい短いスカートにハイヒールみたいなサンダルを履いてる。
……セクシーじゃなくてエロだよね。正直堪んねえ。またさ、金髪サイドテールってのがイイんだよね。これで性格が凶暴じゃなかったらなぁ。
ーー慎太郎が色々な想いでノートゥングを見ているとその視線に気付いたノートゥングが目を鋭くする。
『何を見ておるのだこの変態が。』
「べ、別に見てねーよ!?」
ーー見てるのがバレた慎太郎はめっちゃ焦ったように答える。
『ふん。貴様も男だからな。妾の色香にコロりとやられてしまったのか。仕方のない奴だ。』
「べ、別にやられてねーし!!」
ーーこんな慎太郎であるが実はノートゥングをオカズにした事がある。隠し撮りした画像で。しかも何回も。暴行を受けた日には妄想の中でノートゥングにオシオキをして鬱憤を晴らしているスケベな男なのだ。その為図星を突かれた慎太郎は超焦っていた。
ーーそんなピンチな慎太郎に助け船ともいえるイベントが発生する。
「どっ、どうも姐さん!!ちわっす!!」
ーー見た目がチンピラみたいな感じの男3人がなぜかノートゥングに挨拶をしている。
誰だコイツら?ノートゥングの知り合いなの?え、なんで?接点なくない?てかあるわけなくない?
『む?なんださっきの奴等か。』
「え?さっきって?」
『トイレに行った時に此奴らに口説かれたのだ。』
「え、なにそれ。」
まー、わからなくもないか。このレベルの女の子がこんな格好でウロついてたらナンパしたくもなるわな。
「でもナンパされたぐらいで何でこの人ら舎弟みたいな空気出してんの?」
『妾にぶっ飛ばされたからではないか?』
「モメ事起こしてんじゃねえよ!?警察来たらどうすんだよ!!」
『シンタロウよ、それは貴様が悪いのではないか?』
「は?なんで?」
『本当に馬鹿だな貴様は。妾はこの世界のルールをこの3ヶ月である程度は理解したぞ。女を1人で出歩かせたら他の男にちょっかい出される。それを食い止めるのが貴様の役目であろう。』
なにその中途半端な知識。それって彼氏が彼女を、って時のルールじゃね?それとお前が暴行を働いたのと何の関連性があんの?
『つまりは妾は正当防衛をしただけだ。悪いのは貴様だ。』
「なんじゃそりゃあ。横暴じゃねぇか。」
そもそも勝手にトイレ行ったのお前だろ。
『これに懲りたら妾の護衛をしっかりせよ。良いな?』
「はいはい。わかりましたよ。」
ーー慎太郎はめんどくさくなったのと、逆らってこれ以上ノートゥングに殴られたくないので適当な返事をする。
『で?貴様らは何の用だ?』
「いや、姐さんが並んでらっしゃるのみたんで声かけたんです。もしかしてメシ買うのに並んでるんすか?」
『それと限定プリンぱふぇをな。』
「もしアレでしたらここのオーナーと俺知り合いなんすけど注文取って来ましょうか?」
『なら行って来い。おい、シンタロウ。』
ノートゥングが手を出して来る。なんだ?手でも繋ぎたいのか?しょうがないやつだなホント。モテる男はつらいぜ。
ーー慎太郎はノートゥングに差し出された手を取り手を繋ぐ。数秒の間を置きノートゥングのビンタが慎太郎に飛んで来る。バチィーンという良い音がサービスエリアに鳴り響く。
「痛ってぇ!?な、何すんだよイキナリ!?」
『この馬鹿タレが!誰が手を繋げと言った!美波たちの希望メニューを書いた紙を寄越せと言っておるのだ!』
だったらそう言えや!!手繋いで欲しいのかと思っただろ!!
ーーいや、それはお前が馬鹿なんだと思う。
俺はビンタされた頬をさすりながらメモ紙をノートゥングに渡す。ホントこいつ可愛くねぇ。顔は可愛いけど凶暴すぎ。でもなぁ、デレた時の破壊力はヤバいんだよなぁ。
『ほら、これが妾たちが欲しい物だ。それと限定プリンぱふぇは忘れるな。もう注文してあるからな。10個。』
「はぁ!?10個ってなんだよ!?それいくらすんの!?」
「あ、限定プリンパフェは1480円っす。」
ノートゥングが答えるより先にチンピラみたいな兄ちゃんが俺の問いに答える。
「高っ!?え、お前のパフェに俺は14800円も払わないといけないの!?」
『それはデザートの話だ。それ以外に『ろおりんぐぽてと』と『ぎゅうたん』それに『やきそば』とやらを妾は食べたい。10個ずつ。』
「はあぁぁぁぁぁ!?お前それいくらになると思ってんの!?」
「あ、全部で3万くらいっす。」
ーー慎太郎の問いにチンピラがまた答える。コイツ気が利くな。
「なんでサービスエリアで3万も使わないといけないの!?それもお前の食い物だけでだよ!?」
『…貴様、また『お前』と言ったな?』
「……いや、違うでごぜーます。」
『主従関係をしっかりと教え込んでやろう。』
「ひいっ…!?」
ーー逃げようとする慎太郎。だがノートゥングはすぐに追いつき慎太郎を捕まえ華麗な大外刈りを決める。
「痛い!!もう痛いって!!コンクリだから受け身もクソもねーよ!!」
『痛いですご主人様だろ。』
「嫌だァァァ!!俺はそんな趣味ねぇもん!!痛いのヤダァァァァ!!」
ーー人目もはばからずイチャイチャしまくる2人。だがそんな2人の視界が突如として真っ暗になる。
「『えっ?』」
ーー2人はイチャイチャを止める。日食が起きたとかではない。人も建物も無くなり完全なる闇に包まれているのだ。
「え?何これ?この感じってオレヒスか?ゼーゲンあるし。でも美波たちはいないぞ?そもそもなぜにノートゥングがいるの?」
『わからん。だがここがお前たちの世界でない事は確かだ。』
ーー怪奇な状況により慎太郎に戦慄が走る。
そして、
『シンタロウ、気をつけろ。誰かいるぞ。2人だ。』
「ああ、わかってる。」
俺は腰に差す鞘からゼーゲンを引き抜く。ノートゥングもラウムから剣を取り出す。
闇から現れるモノたちの素顔が見えーー
「えっ?」
『んんっ!?何でシンタロウがいんの?剣王までいんじゃん。』
現れたのはブルドガングだった。それにクラウソラスもいる。
『何で貴様らがおる?』
『アタシらもわかんない。気づいたらここに剣神といたってカンジ。』
「一体どうなってんだ…」
ーー今までに無い奇怪な状況。慎太郎の新たなイベントが幕を開ける。
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