第405話 みくside終了
【 楓・アリス・みく 組 4日目 AM 1:45 自軍砦内東棟 】
「ヘッヘッへ!これでテメェも終わりだ夏目!」
ーー敵軍の2段階解放ゼーゲンを持つ男たちが勝ち誇った顔で参戦を表明する。夏目と相対していた7人の男たちもニヤけ面で夏目を見ている。彼らは勝ちを確信しているのだろう。なんとも滑稽だ。勝負は最後までわからないというのに。
「随分と楽しそうな状況じゃない。手を貸してあげましょうか?」
ーー背後から声がする事により敵軍の男たちが一斉に後ろを振り向く。それは夏目たちも同じだ。声のする方へ場にいる者たちが皆目を向ける。
「せ、芹澤楓…!?」
「そ、それだけじゃねぇ…!?綿谷みくまでいやがるじゃねぇか!?」
ーーみくと楓の登場に先程まで完全に勝ち誇っていた男たちの顔に焦りが見える。
「あァァ!?助けなんざいるかよ!!俺様1人でコイツらブッ殺すんだ!!邪魔すんじゃねぇ!!」
ーー夏目は楓の言葉を激しく拒絶する。夏目はプライドが高いのが基本ではあるが根っこの部分は戦闘狂だ。純粋に敵軍との戦闘を楽しみたいのだろう。仮に己の命を落としたとしても。夏目という男はそういう人間なのだ。そんな男に対して楓は失望したような目を向ける。
「愚かね。」
「あァァ!?何て言ったテメェ!?」
「愚かだって言ったのよ。後ろの人たちを守りながら勝てるっていうの?勝てるわけないでしょ。あなたがどういうつもりでその人たちを守ってるのかしらないけどこの人数相手にそんな事していれば時間の問題でやられるだけよ。」
ーー噛みつくような態度だった夏目が無言になる。目線も楓から逸らし合わせる事が出来ない。
「ま、別に私はあなたの事を助けるつもりなんてさらさらないわ。みくちゃんが加勢したいっていうから来ただけ。」
「ちょっ、楓チャン!?その言い方やと変な誤解される気するんやけど!?」
加勢したいって思ったのは事実やけどタロチャンに100パーセントラブなウチが夏目に特別な感情なんて全くないので変な誤解はされたくない。絶対楓チャンはウチの事をからかっとるんや。
「だから私は一緒にソイツらを倒してあげる気は一切無い。でも手は貸してあげる。後ろの人たちは私が見てるからさっさと始末しなさい。」
楓チャンのその言葉に夏目は目線を合わせる。結局助けてあげるんやん。楓チャンは素直やないなぁ。
「…チッ。そんじゃテメェにコイツら任せたぞ。」
「さっさと終わらせてね。もう何日もお風呂に入ってないからさっさと帰りたいの。」
楓チャンがエンゲルを発動させウチを連れて夏目側に移動し女の子たちの所へ行く。それを確認すると夏目が一歩前へ出て敵軍と対峙する姿勢を見せる。そんなウチらの態度を見て敵軍側の男たちが苛立ちを露わにする。
「この野郎…黙って聞いてりゃナメた態度とりやがって。」
「この数が見えねぇのか?”闘神”だが”五帝”だか知らねぇが勝てるわけねぇだろ。」
うん、相当怒っとるね。完全に空気にしとったもんね。そらムカつくわね。
でもそんなのこの2人は全然気にしとらん。
「オイ、ブツブツ言ってねぇでかかって来い。俺様が全員相手にしてやるよ。足枷も無くなったしなァ。オラ、ビビってねぇでさっさとしろや。」
夏目が半笑いで勝ち誇った顔をする。さっきと立場が逆転しとるやん。相手もっと怒っとるで。血管切れそうになっとるで。
「上等だオラァ!!!」
ブチキレた敵軍が全員でかかって来る。ゼーゲン持ちもゼーゲン無しも関係ない。文字通り全員や。それを夏目が楽しそうな顔で迎え討つ。
でも、それも一瞬の事やった。
夏目の槍型のゼーゲンで2段階解放の奴が1人殺されると一気に総崩れとなった。
槍の一振りで未開放ゼーゲン持ちの命が狩り取られ、逃げ出す1段階解放持ちを引き摺り回し、最後に残った『王』の胴体を串刺しにして幕を閉じた。
久我サンの言う通り夏目は基本的に1人で皆殺しに出来る実力を持っていた。この男を助けたのは失敗だったのかもしれない。ウチらに脅威が及ぶかもしれんもん。でもその時はウチが責任取って始末するしかない。
「さて、終わったわね。みくちゃん、行くわよ。」
「あ、うん。」
楓チャンがめっちゃクールな感じで広間から出て行こうとする。すると夏目が声をかけて来る。
「オイ。」
「何?」
「カリは返す。」
「礼のつもり?それならみくちゃんに言いなさい。」
ウチに振らんでええって。
「綿谷、カリは返す。」
「んなもんいらん。ウチは多対一ってのが嫌いなだけや。」
「それじゃ俺の気がすまねぇ。必ず返す。」
こういうタイプは一度言い出したら聞かんからな。もうほっとこう。関わりたくない。
「…なんでもええわ。ほんじゃそういう事で。」
「カリを返したらお前を俺の妻にしてやる。」
「…は?」
ーーみくがすっごい嫌そうな顔をする。女の子がしちゃいけない顔してるよ。
「俺様はお前が気に入った。本気でホレたぜ。妻にしてやる。」
…神様、ウチってなんかしたん?前世で悪い事でもしましたか?なんで変な男にばっかり言い寄られるんですか?
「ウフフ、みくちゃん、プロポーズされちゃったわね。」
「ちょっと楓チャン…ほんまに笑えないって…」
そんな事をしていると周囲が暗くなり闇に包まれ始める。
「それじゃあまたな、みく。」
「いや…下の名前で呼ばんといて…ほんまに…」
「ウフフ。」
楓チャンがお腹を抱えて笑っているのをウチは乾いた目で見ながらイベントは終了していくのであった。
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