第402話 乱戦
【 楓・アリス・みく 組 4日目 AM 1:13 自軍砦 】
久我サンとのお茶会を終えたウチらは急いで砦へと戻る。楓チャンのエンゲルを使えばあっという間に戻れるが目立ってしまうからなぁ。ひっそりと行って戦況を見なきゃあかん。敵は当然やけど夏目に見つかってもウチらに襲いかかって来るかもしれん。慎重にいかな。
「死臭がするわね。結構な人数が死んでるわ。」
砦に近づくにつれ生臭いような鉄臭いようななんとも気持ちの悪い臭いが漂ってくる。イヤな感じや。
「せやね。アリスチャン、向こうに着いたらウチから絶対離れんでね。」
ウチは背中におぶっているアリスチャンに声をかける。アリスチャンはゼーゲンを持っていないので身体能力は普通の小学生でしかない。連れてってあげな砦に戻る事すら容易やない。
「はい!わかりました!」
どんな状況でも楓チャンと立てた作戦に変更はない。ウチがアリスチャンを守り、楓チャンが前で戦う。敵が密集したらアリスチャンの魔法でドカン。それがウチらの作戦や。
程なくして砦へ到着する。そこに広がっているのは死体の山だ。両軍合わせて数百人の死体が転がり死臭を撒き散らしている。
「どれだけいつも良心的だったかわかるわね。死んだらすぐに処理して欲しいわ。」
そう楓チャンが呟く。楓チャンはいつも冷静やけど凄いなぁ。ウチだってそれなりに死線は潜り抜けて来たけどこの光景を見て冷静ではいられない。流石はこのクランのサブリーダーや。
「アリスチャン、あんまり見ん方がええよ。ボディタオルで口と鼻抑えとき。」
「すみません…ありがとうございます…」
アリスチャンが吐き戻しそうな顔をしている。そらこんな光景見せられたらそうなるよ。現代に生きててこんな光景目にする事なんて普通あらへんもん。
「外での攻防戦は終わってるみたいね。中に戦場が移っているのなら私たちの軍が負けているって事よ。カルディナは夏目を評価していたけど相手側にも強者がいるのかもしれないわね。気を引き締めて行きましょう。」
「りょーかい!」
「はい!」
ウチたちは砦の中に入る為正門へ向かう。すると金属がぶつかり合う音や怒号が聞こえてくる。中で戦闘が起こってるんや。
「中に攻め込まれてるわね。もう一度確認よ。私が前に出て蹴散らす。みくちゃんはアリスちゃんの護衛。アリスちゃんはヤバくなったら魔法を使う。良いわね?」
ウチとアリスチャンは無言で頷く。それを合図とし楓チャンがゼーゲンを携え砦内へと斬り込む。
正面入口には100名程のプレイヤーが攻防戦を繰り広げている。あれ?ウチ大変な事に気づいたんやけど。コレ、どっちがどっちの軍かわからんくない?これじゃ楓チャンだって攻撃できないんじゃーーなんて考えていると楓チャンが手当たり次第にプレイヤーたちを斬り裂く。何の躊躇いもなく斬りまくっている。
「えええぇぇ…敵も味方も関係なしやん…」
「楓さんは基本的に私たち以外に対して関心がないといいますか…興味がないといいますか…つまりどうでもいいんだと思います。」
「そらウチだってそうやけど一応は同じ軍なのに心痛まんのかな。」
ウチが若干引き気味に楓チャンを見ていると更に容赦無くプレイヤーたちを斬り裂く。あっという間に半分以下になってもうた。
「あ…あいつ…!!芹澤だ!!芹澤楓だ!!」
「”五帝”の芹澤!?そんな大物がこのエリアにいんのか!?」
「どっちの軍だ!?敵も味方も関係なしに殺しまくってるじゃねぇか!?」
「とんでもねぇ女だ…死神の化身じゃねぇのか…」
「『死神』の芹澤…ううっ…怖え…」
なんか通り名みたいなのまで付けられてるやん。ウチ、楓チャンってもっと知的で思慮深いヒトかと思っとった。
ーー楓ちゃんは結構ムチャクチャだからねぇ。牡丹ちゃんと良い勝負だよ。
てか楓チャンだってバレとるのあんま良くないよね?ウチらって顔バレしとるから命狙われやすいわけなんだから顔を隠しとくべきだったんやないかな。
ーー慎太郎は楓ならなんとかするって期待してたけど楓の性格的に隠れたりはしないよね。次回があったら慎太郎が指示しとくしかないね。
「ここの砦を拠点とするプレイヤーは手を挙げなさい。手を挙げてれば私は仲間だから斬らないわ。挙げなければ全員斬って先に進む。」
楓チャンの言葉を聞くや否やウチらの軍のプレイヤーは凄い勢いで手を挙げる。それを確認すると楓チャンは手を挙げていないプレイヤーに対し、光速の速さで斬り殺す。100人いたプレイヤーが一瞬で20人ぐらいにまで減ってしもうた。絶対味方も結構殺しとるで。
「敵軍の大将クラスの奴は何処に行ったの?夏目は?」
楓チャンが間髪入れずに残ったプレイヤーを問いただす。
「西棟と東棟に分かれて行きました!!夏目は東棟にいるはずです!自軍のほとんどの女を連れてったので戦力はそんなにいないはずです!!」
「敵軍にゼーゲン持ってた奴がどれぐらいいるかわかるかしら?」
「えっと…10人ぐらいはいたと思います。」
ゼーゲン持ちが10人か。ずいぶんと多いんちゃう?最初のイベント説明ん時に周りを観察しとったけどこっちでゼーゲン持ってんのはウチと楓チャンと夏目、それに夏目に殺された連中の2人だけやで。魔法を使えるアリスチャンを勘定に入れてもずいぶんな差がある。他にも魔法使えるのがおるんやろか。
「私たちは東棟へ行くわ。あなたたちは西棟に行って救援しなさい。」
「わ、わかりました!!」
なんか女王様みたいやな。前から思っとったけど楓チャンって絶対ドSだよね。
「夏目って人を助けに行くなんて以外ですね?」
アリスチャンが不思議そうな顔をして楓チャンに聞く。
「別に助けるわけじゃないわよ。カルディナが言うように私たち抜きでも敵軍を倒す力が本当にあるのか見極めたいの。もしも本当にそれだけの力を持つならいずれ私たちの脅威になるかもしれない。夏目の観察が目的よ。場合によっては始末するかもしれないし。」
「あ、それにウチも賛成やね。久我サンの言うように1つのクランしかクリアできひんのなら強そうなのを倒せるチャンスがあるなら倒しとくべきや。」
「そうですね。タロウさんに害を為すような輩なら早めにその芽を摘み取っておくべきです。」
ーーなんかアリスの台詞も若干牡丹入ってきたな。
「道中の敵は倒すけど夏目を見つけたら仮に瀕死でも助けには入らないわ。動きを見極めて判断しましょう。」
「らじゃー!」
「はい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます