第401話 本隊到着

【 慎太郎・美波・牡丹 組 3日目 AM 5:40 自軍砦内西棟通路 】



ーー美波の指揮の元、態勢を立て直し始める慎太郎軍。それでも凄まじいまでの数の差があるが美波がそれを補い、みるみるうちに敵軍の数が減る。


ーーこれならいける。

慎太郎軍のプレイヤーたちがそう思い始めた頃、またしても事態は急転する。



「チッ!!まだ遊んでやがんのか!!」


「みっともねーな。オラ、どいてろ!!」



ーー敵軍の本隊が西棟へと集結する。

幹部級とみられる男たちのオーラに美波は目を鋭くする。


ーー強大なオーラを放つのは4人。

そして中でも1人別格な者がいる。男の手にする斧が纏う青白いオーラや紋様から察するに2段階解放のゼーゲンだ。他の3人も1段階解放済み。これらを同時に相手にするのは相当厳しい。それは美波の”特殊装備”であるプロフェートを使用しても同様であろう。



「ヒュー!!おいおい、半端ねぇイイ女がいんぞ!!」


「こりゃ堪んねえわ。」



ーー幹部級の男たちが美波を見て盛り上がりを見せる。それを見て美波はいつもの嫌悪感を覚えると同時に苛立ちも覚え、激しく闘志を燃やす。



「黙りなさいっ!!」


「ヘッヘッヘ、黙りなさいだってよ。その生意気な口黙らせてやろうか?ん?」


「つーかコイツら挟んでねーじゃん。馬場の野郎まだ来てねぇのか?」


「裏門に誰かいんのかもしれねーな。」


「使えねー奴。ま、さっさとコイツら制圧してこの女でイロイロ楽しもうぜ。」


「そうだな。さてさて、そんじゃ始めますか。」



ーー幹部級の男たちが戦闘態勢へと移行しようとするが2段階解放ゼーゲンの持ち主である葛城が男たちを止める。



「まぁ待てや。無駄に戦う事もねぇだろ。オイ、ネーチャンよ。大人しく投降しろ。そんなら命は取らねぇ。まぁ、性奴隷としてお務めはしなきゃならねぇが死ぬよかマシだろ?」


「あなたたちなんかに降る理由はないわっ。」


「顔に似合わず気が強えな。援軍でも期待してんのか知らねぇがそんなモンは来ねぇよ。オイ、アレ持って来いや。」



ーー葛城の命令で後ろから下っ端の連中が何かを持ってくる。それを葛城へ手渡すと葛城が美波の足元へ何かを投げ飛ばす。投げ飛ばされたモノは頭だ。『虚空』のリーダーであるタカヒロの頭がそこに転がっていた。



「ここ以外の場所は全部制圧した。男はみんな殺し女は犯してから殺した。もうテメェら以外は残ってねぇよ。アァ、外か裏門にまだいんのか。それでもそんな数はいねぇだろ。タカヒロの野郎が『王』だと思ったがイベントは終わらねぇし、『紋』はねぇ。ネーチャン、お前が『王』だろ?郡司の野郎を軽くヤるぐれぇだからな。でも諦めろ。お前が仮に俺より強かったとしてもこの数には勝てねぇ。」


「…くっ!」



ーー戦力差はかなり大きい。美波たち約50に対して葛城たちは約600。葛城たち幹部がいなかったとしてもその数の前には美波1人では余りにも多勢に無勢すぎる。そして何より美波1人では幹部級を抑えられない。


ーー美波1人では。



「イカツイ野郎どもが女相手に何イキってんの?最高にダセーんだけど。」



ーー美波軍後方から男が現れる。実はちょっと前からここにたどり着いてはいたが美波のカリスマ性に心が折れていた情けない男がちょっとカッコつけて現れる。



「あ?誰だテメェ。」


「調子こいてんじゃねぇぞオラァ!!」



ーー敵軍の男たちが苛立つ。慎太郎のナメた態度にもだが、主に顔を見て苛立っている。まさに醜男の嫉みだ。



「タロウさんっ!!」



ーー美波はめっちゃ嬉しそうな顔で慎太郎を見る。ピンチに駆けつけてくれる慎太郎を見て胸をキュンキュンさせている。おめでたい女だ。



「遅くなってごめん。よくこの人数で踏ん張ってくれた。ありがとう美波。」


「ふふっ。絶対来てくれるって信じてましたからっ。」



ーーイチャイチャしてんじゃねーよ。集中しろ。



「さて、俺が加わってもそんなに状況が好転しないのが悲しいトコだがあとちょっとだけ粘ろう。じきに牡丹が来る。牡丹が来ればフリーデンで一気に蹴散らしてそれで終わりだ。」


「はいっ!あれ…?でもタロウさんは”具現”できるようになったんですよねっ?それならフライハイトを使えば今終わらせられるんじゃ…?」


「…ごめん。フライハイトは使えないんだ。さっき試しに使ってみたんだが以前と同じように錆びるだけだった。」


「えっ…?”具現”ができるのに使えないって事ですか…?」


「どうやらそうらしい。他に条件でもあるんだかどうかわからないけどとにかくフライハイトは使えない。すまん。」


「謝らないでくださいっ。あと少し踏ん張ればいいだけですっ!牡丹ちゃんならすぐに来ますっ!がんばりましようっ!」


「ああ!!」



ーー慎太郎が鞘からゼーゲンを引き抜き戦闘態勢へと移行する。



「みんなっ!!私とタロウさんが幹部級を相手にしますっ!!みんなにはそれ以外をお願いしますっ!!あと少しですからっ!!あと少し堪えれば援軍が来ますっ!!だからっ…みんなの力を貸してくださいっ!!」



ーー美波が自軍のプレイヤーに呼びかける。その心に呼びかける。絶望的なまでの数の差に屈してしまいそうなその心に呼びかける。



「…へっ。女がそこまで頑張るのに男の俺たちが頑張らねぇわけにはいかねぇよ!!数の差がなんだ!!1人で10人でも20人でも相手にしてやるぜ!!みんな!!女神様に続け!!」



「オオ!!」




ーー美波の声に自軍のプレイヤーたちは奮い立ち総攻撃をかける。



ーー慎太郎たちの側の戦いは最終局面を迎える。

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