第393話 ポンコツ同盟再び
【 慎太郎・美波・牡丹 組 2日目 PM 11:35 砦内通路隅 】
2日目が終わろうとしているが敵軍が攻めて来る気配は全く無しだ。だが自軍の砦内では変化が起こった。『大蛇』部隊に振り分けられたプレイヤーは初日から1度も食糧をもらえていない。飢えに耐えきれなくなる奴が出て来たんだ。6人のプレイヤーが反旗を翻したが連中のリーダー格の男、葛西により鎮圧された。葛西はゼーゲンを所持している。手甲型の装備の神聖さから考えても解放型なのはほぼ間違いない。殺しこそしなかったが6人は地下にある独房へと入れられる事となった。それを見たプレイヤーの女たち数人が悟ったのだろう。自分の身体を使って食糧を得る行動に移し出した。生きる為には自分の持つものを差し出そうとでも考えたんだろうが。
俺たちは食糧に困ってはいないから隠れて食事をし状態は保っている。もちろん衛生面も問題は無い。ボディタオルで身体は清潔にしているし、歯磨きもきちんと行なっている。俺は汗をめっちゃかいてるからちゃんとボディタオル使わないと美波と牡丹に迷惑がかかるからな。
「それじゃタロウさんが先に寝て下さいっ。」
「いや、俺は見張ってるから2人が先に寝ていいよ。」
「それはなりません。タロウさんは朝から晩まで働かれているのです。しっかりと休まなければ御身体を壊します。」
美波と牡丹は優しいな。俺の癒しだよ。2人がいるから俺はがんばれるんやで。あー、この2人嫁にしてぇなぁ。どっちも嫁ってダメかなぁ?
ーーダメに決まってんだろクズ。
「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな。」
「ふふふ、ゆっくりとお休みになって下さい。」
「少ししたら牡丹ちゃんにも休んでもらいますからっ。その後に私がタロウさんと交代ということでっ。」
「わかった。ありがとうね、美波、牡丹。」
俺は2人の頭を撫でる。あー、俺の安らぎの時間。
ーーそんな事を思いながら慎太郎は眠りにつくのであった。
ーー
ーー
ーー
「タロウさんは頑張って下さっておりますね。」
「本当だねっ。タロウさんはいつだって私たちの為にがんばってくれてるもん。」
「はい。あのような屈辱的な扱いを受けても耐えているのは私たちの事を思って下さっているからです。あそこでタロウさんが激昂してしまえば自軍の人員が減る事や士気が減る事が想定されます。そうなると勝敗にも大きく影響してしまうし、私たちの誰かが欠ける事だって考えられる。だからこそタロウさんは耐えて下さっているのです。」
「うん、あんな扱いされるぐらいだったら私たちだけでやればいいって思っちゃう。でもタロウさんが耐えてくれているのにそんな事は言えない。」
「美波さんの仰る通りです。私も何度奴らを皆殺しにしてしまおうとゼーゲンに手をかけたかわかりません。ですが私がそれをやってしまえばタロウさんの頑張りを無にしてしまう。そんな事は出来ません。」
ーーやっぱり皆殺しにしようと思ってたのか。コレ、別に慎太郎はそれを考えて耐えてるわけじゃないよ?ぶっちゃけ慎太郎はこういうタクティカルなゲームは得意だから3対1000でも勝てる策はあると思うよ?初日の時にとりあえず耐えようってなった事と、美波と牡丹の目が『頑張って耐えて!』って言ってるように見えてるから我慢してるだけだよ?やっぱり気持ちを口に出すって大事だよね。
「現実世界に戻ったらいっぱいタロウさんにお礼しなくちゃねっ!」
「ふふふ、そうですね。全身全霊で。」
ーーなんかいかがわしいお礼に聞こえてしまうけどね。
「さてと。」
「……?」
ーー美波が慎太郎の口元に手を当てる。
「よしっ。もう寝てるね。」
「どうされたのですか?」
「いや、タロウ分を補給しなきゃと思って。」
「はい…?」
ーーまた始まった。
「昨日タロウさんの身体を拭いたボディタオルの匂いを嗅いでみたんだけどボディタオル自体の匂いが強すぎて全然タロウさんの匂いが感じられなかったんだよね。だからもうコレは直嗅ぎするしかないかなって思って。」
ーー牡丹が『うわぁ…もうこの人ダメだな。』みたいな顔をしている。
「あの、美波さん。今はそのような事をしている場合ではないのではないでしょうか?きちんと見張りをしてここの連中に対する警戒や、敵軍からの襲撃に備えるのが私たちの役目かと思います。」
「牡丹ちゃん。そのパフォーマンスの向上に必要なのがタロウ分の補給なのよ。タロウさんの匂いを嗅ぐ、私はやる気が出る。まさにwin-winじゃない。」
「タロウさんがwinしている所は無いのでは?」
ーー牡丹は『もうこの人本当にダメだな。』と思っていた。
「じゃ、直嗅ぎしよっか。牡丹ちゃんもするでしょ?」
「いえ、私は結構です。」
「えっ!?やらないの!?」
「寧ろ何故やるのが当たり前みたいに話されているのか理解出来ません。」
「だってっ!!私たちはタロウさんの匂いを嗅ぐのが趣味の仲間じゃないっ!!」
「趣味と言った覚えが私には無いのですが。」
「じゃあ牡丹ちゃんは本当に嗅がないのね?嗅ぎたくないのね?」
「…嗅ぎたいのは嗅ぎたいですがタロウさんの信頼を2度と裏切らないと誓いましたので。」
ーー結局お前も嗅ぎたいんかい。
「牡丹ちゃん、それは違うわ。あの時タロウさんに怒られたのは欲に駆られて隠れていたのが問題だったのよ。本当はみんなに合流して安心させなければいけなかった。それなのに私たちは美波・牡丹成分を減らす事だけに躍起になっていた。それがイケナイ事だったのよっ。でも今回は見張りの途中にちょっと1嗅ぎするだけ。それは決して悪い事じゃないわ。」
「そうでしょうか…?そんな事をしていたらまたタロウさんに怒られてしまうような…」
「じゃあ牡丹ちゃんはやらないんだねっ。せっかくお風呂に入ってない状態のタロウさんなのに。きっと脳天を貫くような快感を与えてくれるのに残念だねっ。」
「そ、それは…!?」
「どうする?」
「私が間違っておりました師匠。」
「ふふっ、おかえり。」
ーーこうしてポンコツ同盟が再び誕生した。
だが美波と牡丹で慎太郎の匂いをクンスカしまくっているとその鼻息の荒さによって慎太郎が目覚め、またこっ酷く怒られた。
それでも懲りない美波は『今度こそバレないようにしよう』とするのであった。
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