第367話 食卓での一幕
「どうですか?お口に合いますでしょうか?」
「最高に美味いんだけど。前から牡丹の煮物が美味いのわかってたけど更に美味くなってんじゃん。」
「ふふふ、愛情が日を追うごとに増えておりますので。」
良かった。日中の美波騒動でヤンデレモードになってるかと思ったけどご機嫌なようで安心した。美波に対する処罰も無かったし。牡丹も丸くなったな。うんうん。
ーーお前が魔封じの指輪をあげたからだよ。その反動が必ず来るからな。覚悟しとけよ。
「タロウさん!!私の作ったお稲荷さんはどうですか!?」
「めっちゃ美味い。枝豆を入れてあるのが最高なんだけど。てかよくこんな美味しい味付け出せるな。」
「牡丹お姉ちゃんに教えてもらったんです!!」
「アリスちゃんは覚えが良いのですぐに味付けを習得してしまいました。流石ですね。」
牡丹がアリスの頭を撫でている。凄く微笑ましい光景だな。本当の姉妹みたいだ。
ーーでもね慎太郎。牡丹は妹としてアリスを見てないよ。娘として見てるからね。微笑ましい光景に見えるけど実際は重いよ?
「ホンマに牡丹ちゃんの煮物は美味しいで。これはウチも頑張らなあかん…牡丹ちゃん!ウチにも味付け教えて!」
「ふふふ、良いですよ。好敵手と互いを高めあう、良いものですね。」
ま、確かに切磋琢磨するのは良い事だな。
ーーそうだね。お前が絡まなければ。
「…で、美波ちゃんはなんで正座してるのかしら?」
ーーまだ慎太郎に怒られている美波が正座をしている。
「そうですよっ!いつまでも正座なんて酷いですっ!」
「罰だから楓さんは気にしないでいいですよ。」
「酷いですっ!訴えますっ!」
「楓さんの個性を侵害するのやめような。」
「だってっ!洗濯物に触るの禁止期間が1週間延長されるのはまだ仕方がないと思って諦めますっ!!でもっ!!食事を作るのも3日禁止なんておかしいですっ!!」
「だってなんか入れそうなんだもん。」
「ひっ、酷いですっ!!」
ーー慎太郎の気持ちもわからんでもない。
「ま、もう正座するのはやめて夕飯食べようよ。」
「イヤですっ!!撤回してくれるまではこのまま正座してますっ!!」
ーー美波が頬を膨らませながら駄々をこねる。その姿はまさにぶりっ子だ。
「…はぁ。わかったよ。食事の件は撤回するよ。」
「洗濯物も撤回して下さいっ!!」
「…はぁ。わかったよ。もう撤回するよ。早く席に着いてご飯食べよう。」
「ふふっ、お腹空きましたっ!!」
ーー甘い男だ。このぶりっ子絶対反省してないならな。
「やれやれ。あ、そうだ。みんな、今日この後だけど、俺と楓さんは楓さんのシーンに挑んで来るよ。」
俺が楓さんに目配せすると楓さんがそれに反応する。
「ええ。朝にタロウさんから提案されたの。またいつイベントが始まるかわからないからね。シーンの順番を消化していかないとみんなの番がなかなか回って来なくなるもの。」
「そうですよねっ。オレヒスは本来歴史の改変をするのが目的のゲームなのにバトルがメインになってますもんねっ。」
ホントだよ。美波の言う通りだ。イベント終わったらシーン1回とかって改悪されてから全然シーンやれてねーもん。やろうと思っても強制参加イベントとか始まるし。ホントにクソゲーだよな。
「わかりました。ですが気をつけて下さいね。シーンにはスキルを1枚しか装備する事が出来ません。タロウさんと楓さんは当然バルムンクさんとブルドガングさんをお連れすると思いますが、深手を負ったり、トラップに嵌ると形勢は傾きます。」
「せやね。シーンにはボスがいる時もある。いくらタロチャンと楓チャンでも油断はダメだよ。」
「おう。牡丹とみくの言葉は忘れないよ。」
俺が楓さんを守れるなんて思ってない。俺のレベルはまだまだ楓さんや牡丹より下だ。特に楓さんは『グローリエ』とかいうスゲー”神具”ってのを手に入れたんだろ。俺との実力差はもっと広がったはずだ。俺には俺の出来る事をする。それでみんなの為になるようにするんだ。
「それじゃ、メシ食って風呂入ったらシーンに行って来る。あとは任せたよ。」
「はいっ!」
「はい!」
「お任せ下さい。旦那様の留守中、きちんと家を守ります。」
「りょーかい!」
「ぴっ!!」
なんか重い台詞が聞こえたけどそれはスルーしておこう。うん。
ーーこうして久しぶりのシーンへと繰り出す慎太郎。だが、主役は楓。まだまだ楓のターンは続くのであった。
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