第343話 激昂
【 美波・楓 組 1日目 PM 7:48 採掘場 】
偽物のタロウさんを倒した私たちは、牡丹ちゃんとアリスちゃんとの合流をする為捜索をしている。しかし残念ながらこの時間になってもそれは叶わない。
合流するのって難しいんだなぁ。この前の時はクンカーである牡丹ちゃんがタロウさんの匂いを辿るとかいうドン引きな異能のおかげですぐに合流出来たから簡単に合流できるもんだって思っちゃったなぁ。
ーーゴッド級のクンカーのくせによく言うわ。
それに今回のエリアは相当に広いんだと思う。あれから数時間歩いてるのに誰とも遭遇しないし、また別の施設に来ている。ここから考えても過去最大級の広さだと考えられるよねっ。それだとずっと分断されたままになっちゃうなぁ。私たちにしても、牡丹ちゃんたちにしても、簡単にやられたりはしないのはわかってるけどサブスキルにハマってしまったら危険なのは言うまでもない。やっぱり合流してみんなで戦うのがベストだよねっ!早く合流できるように美波がんばりますっ!
「灯りに誘われて来たけど採掘場かしら?」
「そうですよねっ?レアメタルでも探してるのかな?」
「ウフフ、ダイヤモンドでもあるのかもしれないわよ?」
「ダイヤモンドですかっ!?」
ダイヤモンドかぁ…タロウさんが私にくれる結婚指輪はダイヤモンドかなぁ…うへへぇ…
ーーまた女の子がしちゃいけない顔をしているぞ。
「今晩はここで身体を休めましょうか。建物があるから奇襲はされにくいだろうしね。」
「そうですねっ。早く牡丹ちゃんとアリスちゃんを探したいですけど夜は危ないですもんねっ。」
「ま、邪魔なのを排除してからになるけどね。」
そう言う楓さんの身体から剣気が放たれる。仲間の私でもピリピリとした威圧感を感じる程だ。
そしてそれにアテられたからだろうか、採掘場の建物に隠れていた者たちが姿を現わす。
「俺たちの存在に気づくとはやるな。」
現れたのは4人の男たち。見た目は初期の頃に出会った甲斐って人たちに似ているような風貌。暴力団だよね。
「木嶋さん、どっちも上玉ですね。」
手下と思われる男が私たちを見定めている。嫌な感じだ。
「オウ。コイツら風呂に沈めりゃァ相当なシノギになんだろ。そうすりゃ俺も上に行ける。テメェら、絶対コイツら逃がすんじゃねェぞ。」
「わかってますよ。木嶋さんは女を風呂に沈めンの得意ですからね。」
「それだけじゃねぇよ。アニキはマジモンのレイプビデオを裏で捌いてんだろ。女に対しちゃ鬼畜だぜ。」
「フン。レイプモノはニーズが多いんだよ。男はレイプをしてみたいもンなんだ。それを俺が叶えてやってンだろ。演技じゃないマジモンをな。オラ!!無駄口叩いてねェでさっさとやっちまえや!!」
ーー木嶋の命令に男たちは大きな声で返事をする。そして間髪を入れずにスキルを発動させる。木嶋からはオーラは出ないが、他の男たちからは銀色のエフェクトが発動される。
「SSね。その程度の力で随分と大きな口を叩くじゃない。」
ーー楓が鼻で笑いながら男たちを見る。だが楓は非常に苛立っている。男たちの会話の内容に。レイプという単語に。
腰に差すゼーゲンを鞘から引き抜き戦闘態勢へと移行する。だが楓からはブルドガングを召喚する気配は無い。スキルアップカードを使っていないので《爆破の種》は今日の使用は出来ない。楓が使えるメインスキルはブルドガングとSレア《身体能力強化》だけだ。楓はその何方も使用する気配は無い。当然ながらサブスキルもエンゲルも。楓は男たちをナメていた。
「フン、気の強え女だな。俺は気の強え女は嫌いじゃねェがナメた態度の女は許さねェ。女は男より下だって事をしっかりわからせてやる。」
「ウフフ。時代を理解出来ているのかしら?男尊女卑の時代なんて終わってるのよ。そんなだから日本は遅れているのよ。」
「黙れ。女は男より下だ。そうやってどの国でも何千年とやってきたンだろ。生温ィ事言ってっから女がツケ上がってこの国は駄目ンなったんだ。」
「くだらない。人間は進歩する生き物よ。あなたたちのように進歩が出来ない者は世界に不要。」
ーー楓と木嶋が睨み合う。
少し冷静さが欠けているように見える楓に美波が声をかける。
「…楓さん、落ち着いてくださいっ。」
「大丈夫よ。私は冷静だから。」
ーーだがその楓の言葉とは裏腹に冷静さは明らかに欠けている。楓は女を馬鹿にしたような態度の男を見ると沸点が上がる傾向がある。それに男たちの会話の内容。レイプという単語にだ。それは恐らく彼女の過去、親友の死が関係しているのだと思われる。冷静な時の楓は知的で策略家なのだが、今この場においては怒りで周りが見えなくなっている。非常に危険な状態だ。
「冷静じゃないですっ!!」
ーーそんな楓に美波が声を荒げる。大きな声など滅多に出さない美波が声を荒げる事で楓は驚き美波を見る。
「楓さんはサブリーダーなんですよっ!!ううん、タロウさんがいないんですから今はリーダーですっ!!そのリーダーが自分を見失っていてどうするんですかっ!!」
ーー大きな目を見開いて激昂している美波を見る楓。
「あの連中は私たちより前にここにいたんですっ!!サブスキルを仕掛けてあるに決まってるじゃないですかっ!!それなのに何の警戒もしないで戦うつもりなんですかっ!?」
ーー美波の問いに楓は答える事が出来ない。
「…楓さんは下がっていてください。あいつらは私が倒しますっ。」
「美波ちゃん…」
「…少し頭を冷やしてください。いくわよっ、ノートゥング!!」
ーー美波の身体から金色のエフェクトが弾け飛び、剣王ノートゥングが姿を現わす。
「さあ、かかって来なさい。私が相手をするわ。」
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