第310話 来たぜ大阪

「あー、やっと着いたかー。流石に遠いなー。」


「ふふっ、お疲れ様ですっ!」


みくの荷物の回収と転校手続きの為に俺たちは大阪へとやって来た。朝5時に家を出たのに現在の時刻午後1時過ぎ。めっちゃ時間かかった。車は高速使っても時間かかるな。流石に茨城から大阪はつらいわー。オッさんの俺には超絶ダルいわー。みくの荷物が無ければ新幹線使ったけど荷物持ってくならどう考えても車だもんな。


「…旅館で夜、マッサージしてあげますねっ!」


…美波が言うといかがわしいマッサージに感じてしまうのは俺だけだろうか。いちいちエロいんだよな美波はさ。まったくけしからん。


でも、生まれ育った場所をそんな簡単に離れてしまって良いのだろうか?昨日みくの状況というか半生について俺たちは聞いた。俺なんかが想像も出来ないぐらい壮絶なものであった。それでもそのおじいさんがいた土地を離れる事に抵抗は無いのかなって思ってしまう。無理に俺たちに合わせるならやめた方がいい。クラン預かりの支配下プレイヤーなら基本的に制限は無く、主人プレイヤーと殆ど変わらないのだからみくは大阪にいて、イベントの時だけ合流すればいい。やはりもう一度確認しよう。


「なあ、みく。本当に良いのか?無理に俺たちに合わせる必要は無いんだぞ?みくは大阪にいて、イベントの時に合流すればいいし。」


俺がそう言うとみくは少し不満そうな顔をする。


「いいの!ウチは茨城行くって決めたんやから!そもそもウチは地元嫌いや。良い思い出は無いもん。じいちゃんと過ごした道場ももう無いし、デッカいタワーマンションに変わってしもうてる。ウチの思い出はもう心の中だけや。確かにじいちゃんのお墓にはしょっちゅう来れなくなるのは寂しい…でもじいちゃんなら行って来い言うてくれると思う。それで頑張って過去を変えるんや!もう一度じいちゃんと暮らすんや!」


そう言うみくの目は力強かった。

そうだな。俺に出来る事はなんだってしよう。みくはもう俺たちの仲間だ。仲間なんだから。


「そうか。俺も協力するよ。みくのおじいちゃんの死を変えられるといいな。」


「うんっ!」


そうだ。俺もみくと同じ。俺はアスカの死を無かった事にしたくてこのゲームを始めたんだ。みくの気持ちは痛い程わかる。絶対変えよう。


「それにな…」


助手席に座るみくが俺の腕に身体を寄せてホールドして来る。


「ウチ、タロチャンと離れるのイヤや…タロチャンの事大好きやもん…」


みくが艶っぽい表情で俺を見ている。可愛い。超絶可愛い。こんな可愛い女子高生に大好きなんて言われたら良からぬ事を考えてムラムラっとーー痛い!?後部座席から俺の背中を牡丹がつねってる!?ミラー越しに牡丹がハイライトの無い目で俺を睨んでる!?しない!!ムラムラしない!!牡丹さんにしかムラムラしない!!!


「あはは、嬉しいぞー。てか、腹減ったよな。みんなも減ってるだろ?」


「そうですねっ。9時にサービスエリアで朝ごはん食べてから何も食べてませんもんねっ。」


「はい。お腹はぺこぺこです。我儘を言わせて頂けたら私はたこ焼きが食べたいです。」


「お!流石は牡丹。俺も思ってたんだよ。やっぱ大阪といったらたこ焼きだよな。」


「ならウチに任せてやー!ウチがイイ店知ってんでー!よっしゃ、タロチャン!この道真っ直ぐゴー!」


「ういうい。楓さんもアリスもそれでいいかな?」


俺はバックミラーで美波と牡丹の後ろの座席に座っている楓さんとアリスにも確認する。

だが2人を包む空気がどこかおかしい。異常とも取れる奇妙な空気が後部座席から放たれていた。


「あああッ…!!イライラするわね…!!このSASUKEってのに一回も勝てないなんておかしいわよ!!


楓さんがめっちゃイライラしている。ずっとアリスと2人でゲームやってるけど何やってんだ。


「楓さん、落ち着いて下さい。イライラすると相手の思う壺です。」


アリスが楓さんを落ち着かせている。どっちが大人かわからんなこりゃ。完全にダメープル化してんじゃん。


「それはそうだけど…わかってるけど腹立つわね…ビールでも飲もうかしら。」


何言ってんのこのダメープル。飲ますわけねーだろ。今からみくの学校に行くのわかってます?あなた弁護士として連れて来てんですからね?酒飲んだら禁酒にしますからね?わかってますね?


「わかりました。楓さん、私に任せて下さい。私が今からSASUKEと対戦します。」


そもそも誰だよそれ。


「そ、そんな…!?無茶よっ…!?”戦姫”の私が全く敵わない相手なのよ!?」


いや、何そのテンション。


「安心して下さい。私の階級は”滅姫”です。」


何を安心するんだよ。なんなのその階級って。凄いの?


「ば、馬鹿な!?いつの間にそこに…!?」


なんか全体的にキャラおかしいですよ楓さん。


「見ていて下さい。私が楓さんの仇を取ります。このアテネを極めた”滅姫”アリスが!!」


やばいどうしよう。アリスが残念な子になっちゃった。


ーー”滅姫”アリス VS ”神姫”SASUKEの熱き戦いが繰り広げられる。



「え、何?続くのコレ?」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る