第261話 罪の清算

【 美波・牡丹 組 2日目 PM 12:39 洞窟 】



背中に汗が伝うのがはっきりとわかる。牡丹ちゃんの窮地なのにも関わらず私はここから何もする事ができない。

どうする?今から急いでタロウさんたちを呼びに行く?ダメ…間に合わない。その間に牡丹ちゃんはコイツらに酷い事をされてしまう。

ダメ元でノートゥングに”具現”をしてもらって奥義で薙ぎ払う?でも…ノートゥングは無理だって言ってた…どうすれば…考えてる暇も無い!!動かないと!!




ーー




ーー




ーー





「へっへっへ。大人しくなったな。」


ーー力の大半を奪われた牡丹は立ち上がる事すら出来ずに男たちの前に跪く。こうべが垂れている事により髪が顔にかかって表情が読み取る事が出来ない。だが力無く跪く様は勝敗が決したものにしか見えなかった。


「早くヤッちまおーぜ。もう我慢できねーよ。」


「じゃあ恨みっこ無しのジャンケン大会でも始めますか。」


ーー男たちは勝利を確信し、牡丹を輪姦する為の順番を決めようとする。


「…聞かせてもらってもよろしいですか?」


ーー牡丹が力無く口を開く。


「あ?これからお前がどうなるかをか?ハハッ!」


「俺らが飽きるまで今から犯しまくってやんだよ!俺のはデカいから覚悟しとけよ?グヒヒ!」


「あの女の助けなんて期待すんなよ?あの壁は2時間は消えねぇからな。」


「…そうではありません。あなた方が使われたサブスキルのレアリティをです。」


「Sレアだ、Sレア!スゲェ威力だったろ?アルティメットなんて眼中にねーよ。」


「そうそう。これからはサブスキルの時代だよ。」


「…先程仰っていた効果以外に何かあったりしないのですか?」


「ねーよ。さっきので全てだ。んな事よりさっさとお楽しみをーー」

「そうですか。ありがとうございます。ならばもうあなた方に用はありません。」


「あ…?」


ーー牡丹がゼーゲンを杖代わりにして立ち上がる。だが足元がおぼつかないのかフラフラとしているのが伺える。とても戦える状態では無い。


「オイオイ、まだやるつもりか?そんな体で俺たちに勝てるとでも思ってんのか?9割の力が封じられてるって事は高熱ン時より体が動かねぇんだぞ?諦めろって。態度次第じゃ優しくしてやっからよ。」


「あ?俺は多少は殴らせてもらうぜ?もうクセになっちまってるからよ。グハハ!」


「ブハハ!達也マジでクソじゃん!性犯罪者だろそれ!」


「もうその台詞は結構です。何度もしつこい。」


ーー牡丹の態度にヘラヘラとしていた男たちの顔つきが変わる。


「…流石に調子乗りすぎじゃね?」


「これは躾必要だわ。」


「コイツ、自分の立場わかってねぇだろ。ガンガンヤッてやろーぜ。」


「オイ、牡丹!!そんな体じゃアルティメットなんて使っても扱いきれねぇんだぞ!!やれるもんならやってみろや!!」


「本当に救いようの無い程の屑ですね。女を何だと思っているのだか。いえ、道具としてしか見ていないのでしょうね。自分たちよりも下等な生物、そう思って馬鹿にしているのでしょう。」


「へっへっへ、そりゃそーだろ。女なんて男の性欲発散させる為のモンだろ?オナホだオナホ。」


「お前の男だってそーだぜ。お前の事を好きとか言っててもヤる事しか考えてねぇからな。性欲発散の肉便器としか見てねぇんだよ!!」


ーーあ、地雷踏んだ。


「は?あなたタロウさんを愚弄しましたね?」


ーー牡丹の眼からハイライトが消え、危険なオーラが出始める。


「本当はクラウソラスにお願いするつもりでしたけど気が変わりましたねぇ。私の手で始末しないと気が済まなくなりましたぁ。」


「なんだコイツ。オイ、牡丹。精神が病んじまってんのか?9割の力が封じられてるって言ってんだろ?諦めろよ!!」


「ふふふふふふふ。名前を呼ぶなと言っているのに理解出来ないんですかぁ?馬鹿なんですねぇ。そもそもそれがどうしたんですかぁ?あなた方程度を葬るのに10%の力があれば十分ですよぉ。あ!1%で十分の間違いですねぇ。ふふふふふふふ。」


「もういいわ。男の厳しさ教え込んでやろうぜ。とっととーー」

ーーここで男たちは気づく。先程と同様に周囲を無数の水花弁に取り囲まれている事を。否、水では無く氷の花弁に取り囲まれている事を。


「な…!?何でアルティメットを使えんだよ…!?」


「スキル効果が切れる訳がねぇ!?ありえねぇだろ!?」


ーー男たちに初めて焦りが生まれる。だがもう遅い。彼らは一番言ってはならない台詞を吐いたのだから。


「ーー氷華・緋桜。」


ーー男たちの断末魔の声が洞窟内に響き渡る。それとは裏腹に男たちの生き血を吸った氷の花弁は緋色に輝き美しき桜吹雪を洞窟内に再現していた。それを壁の外から眺める美波とノートゥングは心が奪われていた。

だがそれもほんの僅かの事。あっという間に桜は散り、そこに残ったのは肉が千切れた男たちの残骸だけであった。


「あ…うぅ…が…」


「いぎ…ぎ…」


「あぁ…あ…」


ーー男たちは辛うじている。否、辛うじて生かされている。

牡丹は初めから男たちを殺してやるつもりは無かった。否、簡単に殺してやるつもりは無かった。


「ふふふふふふふ。苦しいですかぁ?」


「殺してくれ…頼む…」


ーー男たちの殆どの四肢は千切れ、臓物も大部分は外へ飛び出ている。中には眼球が飛び出している者もいた。


ーー生き地獄。まさにこの言葉が当てはまるであろう状況がここには形成されていた。


「嫌ですねぇ。まさかタロウさんを愚弄した罪がこの程度で赦されるとでも思っているんですかぁ?それにあなた方が今まで陵辱の限りを尽くした女性たちも懇願したんじゃないですかぁ?それをあなた方は汚い笑みを浮かべて女性の尊厳を蹂躙した。八つ裂きにしてもまだ足りませんねぇ。」


「反省しています…だから…殺して…」


「それは無理ですねぇ。私は一人の男性のお願いしか聞かない事にしているんです。でも安心して下さい。私も鬼ではありません。あと2時間ぐらいで死ねるように調整しましたのでもう少しで死ねますよぉ。」


「そんな…2時間もこの苦しみが続くのか…」


「お願いします…スキルは解除しましたから…だから殺して…」


「頼みます…頼みますから…」


ーー男たちは動かない身体で必死に懇願する。だが牡丹は変わらず冷たい目で言い放つ。


「お断りします。さようなら。」


ーー男たちの叫び声がこだまする中、牡丹はその場を後にする。

サブスキルの脅威を見せ付けられながらも圧倒的なまでの力を見せつけ牡丹は勝利を収めた。

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