第260話 窮地

【 美波・牡丹 組 2日目 PM 12:23 洞窟 】



「どうした姉ちゃん?かかって来いよ。」


男たちのニヤケ顔が止まらない。赤いオーラを纏いながら男たちは牡丹ちゃんを挑発する。解せない。メインスキルはSレアなのにどうしてそんなに余裕があるの?3人がかりだから?いや、そんな簡単な話ではない。時空系アルティメットという事を認識しているのだから知識はある。無知でも虚勢でもない確信が男たちにはあるんだ。牡丹ちゃんに勝てる、と。


「なんだ口だけかよ。しょーもな。」


「所詮は女たな。男の力には勝てねぇってか。グハハ!」


わざとらしいぐらいに煽っている。やっぱり何かあるんだ。牡丹ちゃんに攻撃させる事で発動するタイプのサブスキルを所持してるんだ。迂闊に攻撃しちゃダメだ。


「…ふぅ。お手本のような馬鹿さ加減ですね。知性の低さが伺えます。あなた方は人類の失敗作だと思いますよ。」


「おーおー!俺ら失敗作だってよ!」


「言うね!女にここまでナメられたのなんて初めてだわ。あ、チンポはナメさせまくっけど。」


「グハハ!オメェはフェラ好きだもんな。」


ーー男たちが卑猥な会話を繰り広げる事に牡丹、美波は不快感丸出しの雰囲気を醸し出す。


「言動の全てが不快以外に言葉はありませんね。」


ーー牡丹の言葉に呼応するように男たちの周囲に水の粒が発生する。そして次第にその水粒が花弁のような形へと形成されていく。


「待って牡丹ちゃん!罠だよっ!迂闊に攻撃しちゃダメっ!!」


私は咄嗟に声を出す。牡丹ちゃんはストレスによって冷静な判断ができていない。ここで止めておかないと大変な事になる。


「待ちは性に合いません。それにタロウさんからどんどん離れてしまいます。さっさと終わらせて追いつかないと。」


だ、ダメだ…完全に冷静な判断ができていない。どうしよう…


「へぇ、牡丹っていうのか。」


「イイ名前じゃん。めっちゃ唆るんだけど。」


「名前を呼ばないで貰えますか?虫唾が走ります。」


ーー顔にこそ出さないが不快なオーラを牡丹は更に放出する。牡丹は慎太郎以外の男に名前を呼ばれる事が気持ち悪くて仕方が無いのだ。それだけで殺意の対象になる程に。


「いやぁ、楽しみだわ。この態度をひっくり返させてやるのが調教だもんな。」


「そうそう。それがーー」

ーー男たちが喋っている最中、牡丹を包む金色のオーラが輝きを増す。


「しつこい。」


ーー牡丹の声がトリガーとなり水の花弁が男たちへと牙を剥く。


「ーー緋桜。」


ーー無数に点在する水の花弁が男たちへと降り注ぐ。薄暗い洞窟内へ僅かに届く光が花弁に反射し花吹雪を彷彿させるような幻想的な空間が形成される。

そしてその花弁が男たちの生き血を吸おうと襲い掛かるその時だった、


「ーーかかったな。」


ーー牡丹の眼前に黒い魔法陣が発生し、そこから発生した黒いエフェクトに牡丹は飲まれる。


「牡丹ちゃんっ!?」


ーー牡丹の危機に美波が反応する。腰に差すゼーゲンを引き抜き牡丹へ向かおうとしたその時、美波の前に透明の壁が出現する。


「何これ…!?」


ーー美波は瞬時にゼーゲンで壁を斬りつける。だが壁を壊すことはおろか、キズ一つつける事が出来ない。


「無駄無駄!それはサブスキル《遮断》だぜ!効果は《仕切られた空間内に干渉する事は出来ない。それは使用者が解除するか、戦闘不能にならない限りは効果は永続する。》ってヤツだ。」


「サブスキル…!?」


「そうだ。そんで牡丹が喰らったヤツは《反撃》ってサブスキルだ。効果は《相手から先制攻撃を仕掛けられたらその相手の身体能力を90%抑える事が出来る。それは戦闘が終了するまで継続する。》っていう凶悪なスキルだぜ。これでテメェらは完全に分断された!!俺たちが牡丹を犯しまくる様をそこで指咥えて見てやがれ!!」


「グヒヒ、安心しろよ。お前もちゃんとヤッてやるからな!!」


やっぱり罠だったんだ。攻撃しちゃダメだったんだ。私がなんとかしないと。なんとかしないとっ!!


「ノートゥング!!お願いっ!!」


私はノートゥングを”具現”しようとアルティメットを発動させる。しかし、


『…駄目だ。この呪符の効果は消せぬ。もはや妾たちと花の娘たちでは空間が違う。これを断ち切る事は出来ん。』


「そ…そんな…!?それじゃあ牡丹ちゃんは…」


ーー牡丹を包む黒いエフェクトが消えると、身に纏っている桃色の道着のような衣装が破れ、肌の露出が多くなる。露出された肌にはタトゥーのような奇妙な文様が描かれていた。


「へっへっへ、さて、楽しませてもらおうか牡丹。」

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