第262話 私はポンコツじゃありませんっ!
【 美波・牡丹 組 2日目 PM 1:05 洞窟 】
ーー戦いを終え、牡丹が美波の元へと戻って来る。
「牡丹ちゃんっ!!」
私は急いで牡丹ちゃんの元へ駆け寄り、抱き締める。良かった。本当に良かった。牡丹ちゃんが無事で本当に良かった。
「心配したよぉ…」
私は牡丹ちゃんを力一杯抱き締める。牡丹ちゃんの温もりを身体に感じる事でやっと安心する事ができた。
「無茶するのは禁止だからね…」
「……。」
「約束だからねっ…」
「……。」
「牡丹ちゃん…?」
牡丹ちゃんから何の返事も返って来ないので、私は抱き締める手を緩め、牡丹ちゃんの顔を覗き込む。するとハイライトが無いだけではなく、生気が抜けたような表情を牡丹ちゃんはしていた。
「牡丹ちゃん!?どうしたの!?」
私は牡丹ちゃんの肩を掴み、手を揺する。すると、
「…あれ?私は一体…?美波さん…?」
「牡丹ちゃん!!大丈夫!?」
牡丹ちゃんの瞳にはハイライトが戻り、いつもの優しげな顔を私に見せていた。
「はい…大丈夫です…あの男たちは美波さんが倒されたのですか?」
「えっ?お、覚えてないのっ!?」
「もしかして私がやったのでしょうか?すみません…二ヶ月前から度々記憶が抜けてしまう事がありまして…」
「へ、へぇ…そ、そーなんだ…」
ーー美波は全てを理解した。
慎太郎が絡んでヤンデレモードに入ってる間の牡丹の記憶は無いのだ。
「やはり何かの病気なのでしょうか…あの男たちがタロウさんを愚弄した時に腹の底から怒りが湧き上がってきて…それからの記憶が無いのです…」
うわぁ…やっぱり私がタロウさんのお嫁さんになったら牡丹ちゃんに刺されるパターンじゃない…これからは牡丹ちゃんの治療についても考えないといけないわね…
「だ、大丈夫だよっ!それは病気ではないと思うからっ!」
「そうなのですか?」
「う、うんっ!だからとりあえずそれは忘れよっ!ねっ!?」
今は刺激しないようにしないと。この件は私一人では対処できない。楓さんに何とかしてもらおう。うん。
「わかりました。美波さんがそう仰るのでしたら気にしないようにします。」
「それが一番だよっ!それよりも、牡丹ちゃんは流石だねっ!全部計算していたの?」
「計算…?あ。あの男たちの件でしょうか?はい、彼らがどのようなスキルを持っていようとクラウソラスを使えば負ける事は無いと思っていましたので芝居をしてみました。出来るだけ情報を得たかったので。」
「でも危ないよっ!本当に心配したんだからっ!」
「敵を騙すには先ず味方から、と言いますのでやってみたのですが美波さんを不安にさせてしまいましたね。本当に申し訳ございません。」
「もう危険な事はしないでねっ?」
「わかりました。」
「ふふっ、よろしい!でも牡丹ちゃんのおかげで情報を知れたのは確かよね。まさか相手の攻撃が発動条件のサブスキルがあるとはね…」
「はい。迂闊に攻撃は出来ません。ですが、タロウさんと楓さんのサブスキルなら効果を掻消せると思いますので攻略は可能かと思います。」
「あ、そっか。さっき見たタロウさんのサブスキルは当然だけど楓さんの《帳消し》でも消せるもんねっ!」
「私たちのクランは非常にバランスが取れていると思います。ですが、サブスキルを増やす為の資金力はありません。資金力のある人間ならガチャを回せます。そうすれば旧制度の上位層を引き摺り下ろす事も可能だと私は考えます。私たちの最大の弱点はそこです。」
「確かに…サブスキルをアルティメットで固めたプレイヤーだって今後出てくるかもしれないもんね…」
そうなったら相当にマズい事はわかる。いくら私たちでも敗北してしまう可能性が極大だ。
「ですので2位以上に絶対に入り、報酬を手に入れましょう。私たちに出来る事はそれしかありません。」
「そっか…そういえば報酬があったんだった。2位までになればクラン全員がサブスキルガチャを引けるんだもんね。うん、そうだねっ。それで全員が良いサブスキルを手に入れれば盤石だもんねっ!」
「はい!」
「よしっ!まずはタロウさんたちに追いつこうっ!ずいぶんと離れちゃったしっ!」
「はい!」
「それでさっきの続きをしないとねっ!」
「はい!……はい?」
「美波・牡丹成分を除去するまであと一息よ。頑張りましょう。」
「あの…話の流れからしてみれば、合流するのではないのですか…?」
「成分が除去できたらねっ。」
「私は合流した方が良いと思うのですが…?寧ろ、私たちの行動は間違っているような…?」
「牡丹ちゃん。何度も言うけど、私たちは別働隊。敵から一網打尽にされない為の戦略なのよっ!そして私たちの裏任務はタロウさんから美波・牡丹成分を抜き取って私たちに依存させることっ!!」
「それは裏任務では無いと思います。」
「じゃあ牡丹ちゃんは合流してもいいよっ。私だけタロウさんと淫らな事するねっ。」
「そ、それは…!?」
「どうする?」
「…すみませんでした師匠。」
「おかえり。じゃあいくよっ!!」
「はい!」
ーーポンコツ同盟のポンコツ道中はまだまだ続く。
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