第254話 サブスキル

【 慎太郎・楓・アリス 組 1日目 PM 10:15 洞窟 】




「…あの連中消し炭にしてもいいですか?」


「…落ち着きなさいアリスちゃん。あんな連中如きに魔法を使うなんて勿体無いわ。それにタロウさんのサブスキルを試さないとね。」


ーー慎太郎たちから距離を取り、楓とアリスは闇に紛れて気配を消している。当然慎太郎に万一の事があれば2人は即行動に移すつもりだが、慎太郎が負けるとは微塵も思っていない。あくまで慎太郎のサブスキルを使う為の実験。そうとしか彼女たちも思っていないのであった。


「サブスキルのアルティメット…一体どれぐらい凄いんでしょうか?」


「説明に書かれている通りなら凄まじいと思うわ。スキル自体の存在価値が消去されてしまうもの。」


「そうですよね。現実世界で殺し合いをするような感じにされてしまう訳ですもんね。」


「そうなるとゼーゲンや”特殊装備”を持っているものが有利になるわ。これからの戦いは”そこ”が重要になるのかもしれないわね。」


「じゃあ私たちのクランはやはり有利なんでしょうか?楓さんと美波さんはゼーゲンを2段階解放、牡丹さんは1段階、タロウさんもゼーゲンを所持していますし、加えて”特殊装備”は私以外のみんなが所持しています。明らかに頭一つ抜けているような…」


「確かにそうかもしれない。でも慢心はダメよ。サブスキルにゼーゲンや”特殊装備”を封じるものがあるかもしれない。当然それはアリスちゃんの魔法に関しても同じ。余裕は持たないようにしましょう。」


「わかりました。」


「ウフフ、でも今だけはタロウさんのカッコ良い所を堪能しよっか。」




ーー




ーー




ーー





「コイツ調子に乗ってんじゃね?」


「よーし、オレヒスの厳しさ教えてやっか!」


ーー男たちがメインスキルを発動させ黄色のエフェクトが身体を包む。


「レアだからって甘くみんなよ?ここからサブスキルが乗るのがアップデート後の真骨頂なんだよ!!」


ーー男がサブスキルを発動させる。白い魔方陣が自身の真下に発生し、男の身体を包む。


「これで俺の能力が30%上昇だ!!だがまだまだ終わらねーぜ!!」


ーー他の男たちも同様にサブスキルを発動させる。先程30%上昇させた男に対して重ねがけをしていく事で男の圧が飛躍的に上昇する。


「どうだ?アルティメットなんか遥かに凌駕する程の圧だろ?」


「ブッヒッヒ!勇介の圧力に心折れちまってるだろ。」


「さっさと殺しちゃいましょ。土下座したって許さねーからな。」


ーー男たちがマウンティングをする中、慎太郎は冷静にサブスキルを発動させる。男たち3人の足元に黒い魔方陣が現れ、黒いエフェクトが男たちを包む。

そして男たちが纏っていた黄色のエフェクトが搔き消える。


「あ…?なんで…?」


「だっ、駄目だ!?メインスキルが出ねぇ!?」


「えっ!?えっ!?えっ!?」


ーー男たちはパニックに陥る。先程までマウントを取っていた姿のカケラも残ってはいなかった。


「俺のサブスキルだ。お前らはもうスキルは使えねーよ。」


「な…!?」


「そ…そんな…」


ーー男たちの戦意が喪失していく。

だが、


「ビビんな!!スキルが使えなくたって俺らは3人なんだ!!それなら負けはしねぇ!!」


ーーリーダー格の男の一声で落ち着きを見せようとした時だった、


「悪いな。減らさないとイベントが終わらない以上は仕留めさせてもらう。」


ーー慎太郎が男たちへと距離を一気に詰め、手にしているゼーゲンを三度振り、男たちを沈黙させた。慎太郎の完勝であった。


「流石はアルティメットだな、クッソ強えんだけど。」


使う方ならいいけど使われる方ならたまったもんじゃないな。牡丹と美波が使われたりしてないだろうな。めっちゃ心配だな。でも動かない方が合流早いだろうしなぁ。


「タロウさん。」

「タロウさん!」


俺が牡丹と美波の心配をしていると楓さんとアリスが出て来る。


「お疲れ様です。凄い威力でしたね。」


「お疲れ様です。本当ですね。実際使ってみてどれだけのものかわかりました。スキル封じられたらただの人ですもんね。恐ろしいサブスキルですよ。」


「でもそれをタロウさんが持ってるなんて心強いです!タロウさんの運の良さが引き起こしてくれたんですよ!」


「あはは、ありがとうアリス。これでやっとみんなの為に戦えるよ。俺だけみんなの足を引っ張ってたからな。」


「そ、そんな事ないです!!タロウさんはいつも私たちの為に色々な事をしてくれています!!」


「そうですよ。タロウさんはいつでも私たちの為に戦ってくれています。そんな事言わないで下さい。」


「楓さん…アリス…うん、ありがとう。」


ーー楓が慎太郎に耳打ちする。


「…そんな事言うとオシオキ…しちゃいますよ?」


ーー慎太郎は楓の言葉を聞き背中がゾクゾクする。


「…もう言いません。」


「ウフフ♪よろしい♪じゃあ行きましょうか♪」


ーー慎太郎は思った。


『…ぶっちゃけオシオキされてえんだけど。』


と。

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